カンボジアに進出する日系企業のための
B2Bガイドブック WEB版

カンボジア進出ガイド

進出ガイド一覧

  • 112 カンボジアの金融&保険①(2016年5月発刊 ISSUE04より)
  • 111 カンボジアの法律・税務・会計②から続き  カンボジア国内では米ドルとカンボジア通貨のリエルが流通しているが、経済取引の大半がドル決済である。カンボジア経済は1990年代初め国連暫定当局の到着後にドル化し、1993年には経済取引の約36%を占め、2003年に70%に跳ね上がると、現在ドル取引はカンボジアの総金融取引の約83%を占めている。その要因は外国為替に関する規制がほとんどないことが考えられる。  世界で10数行しかないAA格付けを持つ国際的金融機関、ANZロイヤル銀行のレオニー・レスブリッジ氏は、「中央銀行にとっては、現地通貨の普及は安定した経済を保つ為の金融手段になります。安定した経済を実現していく上で、貨幣量と対外投資などの資本収支のコントロールがポイントになります。しかしドル化経済では、政府が経済をコントロールする力が十分に発揮されません。ですので今後、自国通貨のリエルをどう位置付けていくかを考える必要が出てくるでしょう。ただしリエルを基軸通貨とした場合、経済活動がどのような姿になるか理解しなくてはなりませんし、また投資家や市場からの理解と協力が不可欠です。」と語った。  カンボジア最大の銀行としてマーケットリーダーの地位を維持しているアクレダ銀行のソー・フォナリ―氏は、「リエルはここ5年間、ほぼ1ドル4000リエルを保っており、国際貨幣に比べても安定しています。ドル使用の制限がないため、リエル紙幣の循環はまだ低いですが、人々はここ数年でリエルを使う機会が多くなっていると思います。政府はドル使用の制限こそしていませんが、税金や水道料金の支払いをリエルでするなどリエル使用の動機付けをしています」と語る。また、完全にリエル化に移行した金融機関も現れ始めた。政府主導の自国通貨の利用促進により、リエル使用率の上昇が予想される。
  • 113 カンボジアの金融&保険②(2016年5月発刊 ISSUE04より)
  • 112 カンボジアの金融&保険②から続き  カンボジア中央銀行のチェア・チャント総裁のリーダーシップにより、近年のカンボジア銀行業界は急速に発展している。カンボジア中央銀行の統計によれば、2014年末時点において商業銀行のライセンスを所有している銀行は35社で、特別銀行のライセンスを所有しているのは9社。総資産額は、前年度比29.6%増の162億ドルで、また、2014年の預金総額は97億ドルで、前年度比31.5%増だった。  商業銀行35行のうち総資産額上位4行(アクレダ銀行、カナディア銀行、カンボジア・パブリック銀行、ANZロイヤル銀行)で市場シェアの4割を占めており、ANZロイヤル銀行のレスブリッジ氏は、「カンボジア経済はとても急速に成長しており、多くの金融機関が設立され、信用度が急激に上昇しています。金融サービスやシステムもより高度になり、顧客満足につながっています。今後は、中央銀行が増加する金融機関をどう規制して適切に進めて行くか、また保険によるサポートの充実など、必要になる役割が増えると思います」と語っている。  一方銀行を選ぶポイントについて、マレーシアに親会社を持ち、カンボジアの外資銀行で最大の資本規模であるカンボジア・パブリック銀行のパン・イン・トン氏は、「所得比率の上昇、高学歴者の増加で顧客の見識も高まっており、要求も細かくなっているため、銀行の選択にも厳しくなっているように思います。銀行を選ぶ時はその銀行の資本力と実績や顧客サービスの評価、さらに革新的な金融商品の有無が基準にされています」と語っている。また、本来は融資業務を主とするマイクロファイナンス機関が預金業務にも力を入れてきたことから、競争が激化することが伺える。
  • 114 カンボジアの金融&保険③(2016年5月発刊 ISSUE04より)
  • 113 カンボジアの金融&保険②から続き  日本では当たり前となっているインターネットバンキングサービス。労働人口(15歳~65歳)の94%が携帯電話を所有しているカンボジアでも、ここ数年携帯電話を使ったサービス展開が目覚ましい。  アクレダ銀行のソー氏は、「好評なのは、モバイルバンキングですね。祝日等で支店が閉まっていても、携帯電話から請求書の支払いや口座間の資金移動ができます。携帯で金融サービスがオンタイムで受けられ、より便利になりました」と話しており、携帯電話を使って公共料金や各種税金を含めた支払いや携帯電話チャージなどのサービスを提供している。  銀行サービスのデジタル化について、カンボジア・パブリック銀行のパン氏は、「2015年6月末現在、インターネットバンキングの利用者が対前年同期比で23%増加しています。普通預金、貯蓄預金、定期預金の管理において2014年4月に本人認証サービス・ワンタイムパスワーを導入しました。携帯電話情報を登録し、インターネットバンキング利用時に携帯電話に送信されるワンタイムパスワードを利用し取引を進めることでセキュリティが向上します」と語った。
  • 115 カンボジアの金融&保険④(2016年5月発刊 ISSUE04より)
  • 114 カンボジアの金融&保険③から続き  カンボジアのマイクロファイナンスは2015年、貸付金額と預金額において前年度比40%を超え、爆発的な成長をしている。カンボジアマイクロファイナンス協会(CMA)の統計によれば、2015年末時点においてライセンスを所有しているマイクロファイナンス機関は41社で、融資業務を行っているNGOを含めると債権者数200万人、貸付残高は29億ドルに達しており、預金が可能なマイクロファイナンス機関は8社で、預金者総数約141万人、預金総額億13ドルに達しており全てにおいて拡大している。  マイクロファイナンスの人気増大の要因について、業界第3位のシェアを誇るアムレット・マイクロファイナンスのチア・パラリン氏は、「商業銀行だと融資額10万ドル以上という制限があったりしますが、マイクロファイナンスでは年間100ドルや200ドルでも借りることが出来ます。旅行に行きたい、買い物をしたいなど、国民のリッチになりたい願望が増えているのを感じますね」と語る。  また商業銀行と比べて高い金利については、「そのような人々が国中にいるため、我々のスタッフも地方に散らばり、日々飛び回っているので、オペレーションコストが高くなります。ですので、商業銀行と比べるとどうしても金利が高くなってしまう。しかし現在、政府が市場競争を推進しており、金利に関してはここ1、2年で下がるでしょうね。3年前は36%だったのが、30%、25%と徐々に下がり、今は年利23%程度です」と話しており、国の成長に伴うビジネス需要増加も相まって、今後もマイクロファイナンスの人気は拡大するだろう。   しかし、早すぎる成長にはリスクも伴う。全体的に見れば不良債権率は0.123%と低いが、それでも以前の2倍に増え、FI(アクレダ銀行を除く)による不良債権は2014年の140万ドルから390万ドルに増加した。
  • 116 カンボジアの金融&保険⑤(2016年5月発刊 ISSUE04より)
  • 115 カンボジアの金融&保険②から続き  カンボジアの保険業は著しく成長している。カンボジア保険協会(IAC)が発表した報告書によると、2015年のカンボジアの保険料収入は総額6,100万ドルと、2014年に比べ26.7%増加しており、保険市場は2009年から毎年2桁の成長しを見せている。2015年、保険金の支払い請求で業界が負担した総額は1,310万ドルである。  株式会社損保ジャパン日本興亜とパートナシップを結ぶ大手損害保険会社のインフィニティ損害保険のマイケル・グリーン氏は、「カンボジアの保険業界はまだ成長初期ですね。2015年はたった6つの保険会社で、非生命保険を除くと5,300万ドルの利益がありました」と話す。  今後の見通しについて同氏は、「2009年から2014年からの5年間、保険業界は平均して毎年21%の成長を続け、2014年から昨年かけては26.7%と記録的な増加となりました。国の経済成長と共に外国からの投資も伸びていき、保険市場も他のアジアよりはるかに高い速度での成長が期待されます。外資系企業によるカンボジアへの関心の高まりが予想されますね」と話す。毎年著しく成長する保険業界には保険ブローカーの参入が今後も盛んになるだろう。  また、交通ルールの概念が日本に比べて薄いプノンペンでは、ルールを守らない現地人との接触事故を起こす可能性がある。特に車両と自動二輪車の接触の場合、車両の分が悪く修理費や治療費の他、警察が介入した場合彼らへのコミッションを請求される場合もある。中でも夜間の事故は被害が甚大となる可能性があるため、自動車保険は絶対に加入しておくべきだろう。それについて同氏は、「自動車事故に遭遇した場合、もちろん外傷を負う可能性もありますし、言語の問題から現場での補償交渉は難しいでしょう。事故が起こった時に、すぐに事故現場に駆けつけ、警察を含めた全ての人と条件や補償等について交渉が出来る、24時間体制サポートの保険に加入するのが良いでしょう」と語っている。
  • 073 カンボジアの金融&保険①(2015年10月発刊 ISSUE03より)
  • 074 カンボジアの金融&保険②(2015年10月発刊 ISSUE03より)
  • 073 カンボジアの金融&保険①から続き  カンボジア人の着実な核家族化の進行を背景とした住宅需要の増加に伴い住宅ローンの利用者が増加しているが、銀行間の競争により住宅ローンの金利は以前より低下している。住宅ローンを利用するには、土地権利証(ハードタイトル)や定期預金などの担保が必要だが、一部の銀行は不動産開発業者との提携や、ソフトタイトルを担保として認証するなど、銀行間のサービス競争が利用者にとって良い環境をもたらしている。  ANZロイヤル銀行の山口紗世氏は、同行が多くの日系企業に選ばれている理由として三つのポイントを挙げた 。「一つ目は、国際的信用がある金融機関であること。二つ目は、親会社や統括オフィスなど国外に幅広いネットワークを持ち、カンボジア国内でも現地のマーケットに関して深い知識をもつローカルパートナーを持っていると。そして三つ目は、法人用インターネットバンキングの利用が可能なことです」。同行のオンラインプラットフォーム(法人用インターネットバンキング)はセキュリティレベルが高く機能も多様なため、法人の顧客から支持されていると語る。  また、カンボジア・パブリック銀行のパン氏は、「当行では上質な顧客サービスの提供に重点を置いています。特に支店窓口での迅速なサービス提供は折り紙付きで、原則5分以内の待ち時間にてご案内するよう心がけており、本店担当部署からも細かくチェックしています。2014年実績は85%のお客様を5分以内にご案内することができました。更に一部支店に苦情対応も行うサービスアンバセダーを設置し、経験のあるサービスクラークがお客様の細かなニーズをくみ取り、ご案内しています。顧客サービスだけではなく銀行業務にも満足していただけるよう、銀行業務のマネジメントリスク計画も制定し、社内で定期的に見直し、各部署で共有して毎日の銀行業務に活かしています」と語った。  カンボジアに進出する企業が銀行を選ぶポイントは、その企業の事業内容や経営方針により異なるが、国際標準の金融基準を適用しているか、現地でのビジネスに精通しているか、十分な資金を持っているかなどを踏まえ、安心して気持よく利用できる金融機関を選ぶべきだろう。
  • 075 カンボジアの金融&保険③(2015年10月発刊 ISSUE03より)
  • 074 カンボジアの金融&保険②から続き  カンボジア・パブリック銀行のパン氏は、「技術の発達により、銀行業界はシステム処理面においてさらに激変すると思います。決済処理やATMなどもより便利になるでしょう。インターネット・モバイルバンキングも今後数年でさらに拡大するものと思われます。カンボジアは現金主義の歴史が根強く、主要貨幣もドルです。しかし今後、より多くのカンボジア人が銀行に口座を持ち、小切手や送金機能を使うようになることも全体の底上げになると考えています」と述べ、カンボジア人の銀行の利用が増加することを予測した。また、同氏は、「2015年末のASEAN経済統合を控え、国内35の商業銀行は更なる変化に向け競争力を高めています。今後も革新的な商品やサービスの投入が続くでしょうし、それにより顧客は長期的に見ても利益を得るでしょう。例えば商業銀行各行の近年の融資金利も年々下がっていますし、競争率の高まりから各行はより魅力的な融資サービスの提供と、より多様な経済セクターへの売り込みが必要となってくるかと思います」と、今後もますます競争が激しくなると語った。  アクレダ銀行のイン氏は、「今後はすべてのシステムにおいて自動化を進めていきます。どうしても窓口の待ち時間が課題になるので、電子指紋認証の導入などで本人確認を省略し、サービス提供の時間を短縮できればと考えています。電子指紋認証は既に一部で試験導入しており、今後は本格導入を目指しています。時間短縮もですがペーパーレス化もできます。当行は口座数が多いので顧客の数も多く待ち時間も長いですが、その分利便性への投資ができます」と述べている。
  • 076 カンボジアの金融&保険④(2015年10月発刊 ISSUE03より)
  • 075 カンボジアの金融&保険③から続き  カンボジアの保険業は著しく成長している。カンボジア保険協会(IAC)が発表した報告書によると、2015年上半期の保険料総収入は対前年同期比で20%増を記録し、2015年は6,000万ドルが見込まれるとしている。2014年のカンボジアの保険料収入も総額5,300万ドルと、2013年に比べ26.7%増加しており、保険市場は2009年から毎年2桁成長している。保険金の支払い請求で業界が負担した総額は1,830万ドルで、2013年売上高の34.6%に匹敵する。そのうち火災保険料は1,800万ドルと大部分を占めた。機械、健康、自動車などの保険料収入は、前年に比べて12~21%の成長。貨物海上保険の保険料収入は290万ドルと316%も増加し、収入の13%を占めた。  大手損害保険会社のインフィニティ損害保険のマイケル・グリーン氏は、「現在のように契約者数が順調に伸びてきている中、比較的利益も出しやすい状態です。今後も外資の関心も増すのではないかと予測されています」と述べるとともに、「2014年は3社の新しい保険ブローカーが参入し、2015年は1社の新しい保険会社が認可を受けました。」と付け加えた。毎年著しく成長する保険業界には保険ブローカーの参入が今後も盛んになるだろう。  シェア45%、業界最大手のフォルテ保険のチャールズ・チェオ氏は、「カンボジアにおいて保険の浸透率は、近隣諸国と比べても低いと言えます。だからこそ今後も大きな成長産業になるのではと期待しています。現在企業向けのプランが保険の重要なセクターとなっております。しかし今後の法整備や個人所得上昇、保険に対する意識の向上に伴い、個人向け保険プランもより活発になり、さらに重要な部門になるもと期待しています」と述べており、「損害保険会社として多彩な保険商品を用意しております。顧客は個人から国際企業までさまざまです。商品は小型保険から石油・ガス産業向けの様な物まで幅広くあります。弊社が成長してきたのも多種多様な保険商品を提供してきたからです。12年以上も市場の要求に応え、トップ企業で有り続けたのは良きパートナーと優れた人材のお陰と思います」と続けた。  また、インフィニティ損害保険のグリーン氏は、「自動車保険も非常に重要です。自動車の修理にかかる費用は労働賃金の低さから非常に安価です。しかし先進国から来た外国人にとって、第三者へのコミッションの慣例は先進国にはないもので、おかしく思うでしょう。自動車事故に遭遇した場合、もちろん外傷を負う可能性がありますし、それとは別に、特に言語の問題から現場での第三者との補償の交渉は難しいでしょう。この為、事故が起こった時に、事故現場に行き、警察を含めた全ての人と交渉でき、その条件や補償等について交渉ができ、24時間体制でサポートできる評判のいい保険に加入するのが良いでしょう」と語っている。  交通渋滞が深刻なプノンペンでは、交通ルールを守らない現地人との接触事故を起こす可能性がある。日中は互いに速度が遅い分だけ被害が小さく済むかもしれないが、夜間の事故は被害が甚大となる可能性がある。自動車保険は絶対に加入しておくべきだろう。
  • 303 カンボジアの不動産①(2020年1月発刊 ISSUE11より)
  •  国土整備・都市化・建設省の報告によると、2019年の建設プロジェクトの合計は4446件と前年比で55%増加し、投資額は93億米ドルと前年比で78%増加した。このうち半数近くが外資からによるもので、中国を筆頭に、韓国や日本、タイ、ベトナム、シンガポール、マレーシア、仏国、米国、英国、豪州、カナダ、独国などと続く。  同省のチア・ソパーラー大臣は2019年12月、「プレアシアヌーク州への投資の大部分は中国からで、建設部門の増加は経済の大幅な成長と政治的安定性に起因している」と、建設部門の健全な経済成長を評価した。  また、カンボジア国立銀行(NBC)は、2019年の建設機械、鉄鋼、セメントを含む建材の輸入総額が15億ドルと推定しており、前年比で50%増加した。2020年の建築材料の輸入総額は約24億ドルになると予測している。  CBREカンボジアのダイレクター、ジェームズ・ホッジ氏によると、地価は、2012年から2019年まで年々上昇していたが、2020年は上昇せず安定すると予測している。  建設会社、サプライヤー、不動産会社など60社以上が加入するカンボジア建設協会(CCA)が支援する建築業界専門誌、コンストラクション&プロパティ(C&P)のミース・プロックサー氏は、「首都プノンペンの不動産の状況を見ると、中高所得者が集まる場所であるため、依然として健全です。投資の大部分は、中国企業により、マンションや商業ビル、オフィスに焦点が当てられ開発が推進されています」と語る。
  • 117 カンボジアの不動産①(2016年5月発刊 ISSUE04より)
  • 116 カンボジアの金融&保険③から続き  2009年、世界同時不況がカンボジア全体の地価に影響を与え、ゴールドタワー42に代表されるいくつかのプロジェクトの建設が停滞または遅延した。2012年初頭から徐々に回復し、現在ではプノンペンの主要なエリアで世界同時不況前の地価を超えている。1993年創業の国際的な不動産会社、CBREのレポートによると、プノンペンの地価が2015年は対前年比で8.4%上昇したとしている。  不動産業界で10年近くの経歴を持ち、カンボジア不動産協会の副会長でもある、センチュリー21・メコンのチレク・ソクニム氏は、「プノンペンでは今後、郊外4つのエリアが発展していくと思います。1つはトゥールコーク区北部からセンソック区のクラントノン地区、そして国道5号線までのエリア、北部郊外にあるリーヨンパット橋付近までのところは近い将来とても良いエリアになると思います。現在イオン2号店もこのエリアに建設が予定されています。2つ目は、国道5号線と6号線の間のエリア。カンボジア日本友好橋から国道5号線と6号線を通ってリーヨンパット橋付近までのところです。OCICとリーヨンパットグループによって開発され、ヨンパットエリアと呼ばれます。3つ目はフンセンルートと呼ばれるエリアです。4つ目は国道1号線南側のエリアです。地価はどんどん高くなっています」と語る。
  • 118 カンボジアの不動産②(2016年5月発刊 ISSUE04より)
  • 117 カンボジアの不動産①から続き  住居として外国人に人気の高いエリアは、チャムカモーン区のボンケンコン1地区(BKK1)。プノンペンの富裕層エリアといわれており、カフェ激戦区となっている。しかし、家賃が高いため、いろんなエリアに少しずつ分散が進み、その周辺のボントラバエク地区(BT)、トゥールトンポン地区(TTP)、ボンケンコン1、2地区(BKK2、3)、トンレバサック地区(TB)、プノンペンタワー裏の人気も高い。ボントラバエク地区やトンレバサック地区南部は新興住宅地で比較的新しい建物が多く、日本人が増えているエリアだ。また、ここに日本食屋などが並ぶ「絆ストリート」もあり注目のエリアである。立地的にPPSEZに勤務している方が多く住むトゥールコーク区のボンコック1、2地区(BK1、2)も高級住宅街として知られているが、設備の割に価格が抑えられた物件が多い。  また、ロシアンマーケットの辺りも人気が上昇しており、比較的家賃が安価であることから欧米人を中心に外国人からの注目が集まっているエリアだ。このような居住エリアは生活のしやすさという点が重要であり、家賃の安さもさることながら、美味しいレストランやショップの存在は大きい。  カンボジアの住居形態は、サービスアパート、コンドミニアム、ヴィラ、フラットなどがある。ライフ・デザイン・パートナーズの青山英明氏は、「プノンペンは非常に小さい町ですので、移動手段さえ確保できて渋滞にさえ気を付ければ、よほど職場から遠くない限り場所はそれほど問題にならないです。問題になるとすれば治安ですが、外国人でセキュリティを重視するのであれば月額350ドル~400ドルは最低必要になります。これが今人気のBKK1地区ですと最低でも500ドルからになります」と、特別なサービスが付かないアパートの場合の相場について語る。  また、「高級物件ですとプール、ジム付きなど豪華な設備が付きますが、日本で同じ金額では絶対に借りられない条件の物件が安く借りられるのはカンボジアの魅力の一つですね」と同氏が語るとおり、サービスアパートは24時間警備のほか、プールやジム、部屋の掃除や洗濯など、ハード面だけでなく、ソフト面も充実している分、当然のことながら家賃は上がる。しかし、日本と勝手の違う環境のなか、少しでも快適に過ごす住居形態として駐在員を中心にサービスアパートのニーズは高い。  忙しいビジネスマンのために買い物サービスもあり、日本人常駐のサービスアパートを提供するTAMAホームの上田武範氏は、「立地が良く、広くて家具もきれいというサービスアパートが人気ですが、1人であれば1,000~1,500ドルは最低かかります。ファミリータイプは2,000ドル以上するでしょう。クリーニングサービスには掃除や洗い物、リネン交換なども含まれていますが、お洗濯は付いていない所が多いようです。駐在員などのお客様には赴任期間が限定されているからこそ、心のゆとりや、ここで頑張って欲しいと言う意味も込めて、家に帰りたくなるような住まいを提供できたらと思っています」と語った。  また、ホテルをサービスアパートとして提供しているヒマワリホテルのアンドリュー・テイ氏は、「私たちが提供しているのは単なるサービスではないということです。ホテルで時間を過ごすことそのものに、どれだけの価値を感じて貰うかということを大事にしています」と語った。仕事に集中するためにも住環境の整備は大切であることから、賃貸物件の選択には十分留意したい。  1997年創業のローカル系不動産会社CPLのケイン氏は、「私たちはお客様にサービスを提供するときは3つの事項を詳しくヒアリングします。まず①お客様は何を求めているか、②場所はどこがいいのか、③なぜ物件を探しているのか、の三点。これらは時に個人的な内容を含みますが、嫌がらず出来るだけしっかりと答えて頂きたいなと思います。まずお客様がこの三点を曖昧にされていると、おそらく自身に合った物件を決めることが出来ないし、また私たちもご提案出来なくなってしまいます。お客様に100%のサービスを提供するために、この三点の確認作業は重要なものなのです」と住居探しのアドバイスをする。セキュリティや治安、住み心地など、重視する点を考慮し、現地をしっかりと見たうえで検討したい。
  • 077 カンボジアの不動産①(2015年10月発刊 ISSUE03より)
  • 076 カンボジアの金融&保険④から続き  2009年、世界同時不況がカンボジア全体の地価に影響を与え、ゴールドタワー42に代表されるいくつかのプロジェクトの建設が停滞または遅延した。2010年から再びカンボジアのGDPは増加したものの、地価は依然として下落傾向にあったが、2012年初頭から徐々に回復している。ボナリアルティの調査によれば、2012年の第3、4四半期には、プノンペンの住宅地で10~15%、商業エリアで10~16%増加し、2013年の第1四半期は、前年同期比で10~20%増加した。韓国、中国などの外国人投資家の投資行動がプノンペンはもちろん、カンボジアの不動産価格に対して重大な影響力を有しており、2014年にはプノンペンの主要なエリアで世界同時不況前の地価を超えるまでにいたっている。ローカル系不動産会社Vトラストのクイ・ヴァット氏は、「不動産業界は全体的に回復の兆候が見られます。都市部と地方の両方でアパートやオフィススペースの価格は15%~20%上昇しています。世界金融危機の間に下落した地価は、2010年初頭から都市部を中心として外資に牽引される形で回復し始めました」と語った。  プノンペン市内では、チャムカーモーン区のトゥールトンポン(TTP)とプサーダムコー(PDR)の地価が値上がりしている。この地域は、カラオケクラブやビアガーデンのような騒々しい娯楽施設があるにも関わらず、インフラ整備や新しいマンションやアパート建設の伸びにより、最大で30%高くなる現状も起きている。Vトラストのクイ氏は、「ボンケンコンの地価高騰がトゥールトンポンやプサーダムコーへの逃避に繋がっています。トゥールコークより中央に近く、より手頃な価格なのが魅力です」と述べた。  1997年創業のローカル系不動産会社CPLのチェイン・ケイン氏は、「ドーンペン区やトゥールトンポン(TTP)、トゥールコーク区、トゥーススバイプレイ(TSP) といった場所も直ぐにボンケンコンに追いつくでしょう」と将来の地価を予測した。
  • 263 カンボジアの建設・内装①(2018年11月発刊 ISSUE09より)
  •  カンボジアは外国資本が大量に参入し、建設ブームの真っ只中だ。プノンペン、シハヌークビル、シェムリアップなどの都市は、住居施設、商業施設などの開発に満ちている。  2018年10月に発表された国土整備・都市化・建設省の報告書によると、2018年1月~9月までの間、建設投資額48億ドルに相当する2541件のプロジェクトを同省は承認したが、昨年同期の56億ドルを14.47%下回った。  また、9ヶ月間でプノンペンでは5階建て以上建物が92棟建設され、2005年から現在までは累計で1084棟が建設されており、建設会社も1028社が登録されている。また、沿岸部の開発が目まぐるしいプレアシアヌーク州では、同州土地管理部門のデータによると、2005年から2016年にかけて、5~35階建ての建物が46棟増加している。  国際通貨基金(IMF)は、カンボジアの不動産部門の成長が今後5年間で減速すると予測しているが、現地不動産CPLカンボジアプロパティーズのチェイン・ケインCEOは、「カンボジアの不動産と建設部門は現在、3~4の州で強力な勢いを見せている。他の州でも引き続きポテンシャルを持ち続けると思う。カンボジアの不動産部門は長期的に成長を続けるだろう」と楽観的だ。大型建設プロジェクトの急激な急増により、市場は今後5年間で飽和するだろうが、中国人が引き続き投資すれば、良好になるだろう。  韓国系建設会社による建設が2008年に停止していた42階建ての高層ビル「ゴールドタワー42」は、中国企業の手によって再開され、カンボジア政府からの強い要請を受け、2019年末までの竣工を約束している。また、台湾や中国で多くの実績を持つ台湾系不動産開発会社、和新建設のジョージ・シエ氏は、「カンボジアの不動産需要は今後も高まり続けると予想しています。アジアを見てみれば、台湾や中国、マレーシア人など、多くの華僑がよりよい生活を求め海外へ留学、駐在、もしくは移住をしています。そしてこれはどんどん増えます」と語っており、アジア諸国に点在する華僑の投資動向は注視に値する。
  • 210 カンボジアの建設・内装②(2017年11月発刊 ISSUE07より)
  •  カンボジアの不動産・建設セクターが20万人以上のカンボジア人を雇用するなど、雇用機会創出の牽引役となっている。地方からの出稼ぎ労働者が多く雇用されており、収穫期でない時期には高報酬を求めて地方から首都へ大量流入し、収穫期になれば地方へ農業をしに戻るという。  C&Pのミース氏は、「建設労働者のほとんどが、市内でのプロジェクトが無い時期には、農作業にほとんどの時間を費やすため、季節に左右されます。昨年からコメをはじめとする多くの農産物の販売価格が下がったことから、労働者たちは、利益を上げられない農作業に従事せず、通年で建設現場において働く方が良いと思っています」と話す。  一方で、より高い賃金を求め労働者がタイなどへ流出するため建設業で労働力が不足している面もある。昨年8月、カンボジア内務省により発表された報告書によれば、今年始まって以降、1万人以上の不法労働者(90%がベトナム人)が国外追放処分となっており、その多くが建設業に従事していた。  建設労働者の技術力について、SCEのエン氏は、「カンボジアでは、熟練技術者も非熟練労働者も、特に学校で学ぶ慣習はなく、師匠が弟子に教えるような形で、技術を学ぶんです。そのため技術レベルに一貫性がなく、基準がありません。これは大きな問題ですね。そのため、今求められているのは、スキルを向上させる職業訓練学校です。しかし、政府の動きが進んでいるとは思えず、民間企業や投資家に依存している状態です」と語る。同氏によると、カンボジア人作業員の70%は非熟練労働者だという。  SOMAのチア氏は、「カンボジアには熟練技術者がほとんどいません。例えば5~6年かかるような大掛かりのプロジェクトだと、カンボジアの作業員では経験がない。今は向上している最中ですが、海外から人材を雇う必要があります」と語る。
  • 183 カンボジアの建設・内装②(2017年05月発刊 ISSUE06より)
  •  世界銀行の統計(2013年)によればカンボジアの都市人口割合は20.3%とASEAN諸国中最低のため、中長期的にプノンペンの都市化率が更に上昇することが予測される。また、プノンペンの中間所得層の収入増加により、ボレイと呼ばれる戸建住宅街の開発が急成長している。  プノンペン都南部に50ヘクタール以上のボレイ計画を進めているソナトラグループの永田哲司氏は、「コンドミアムに比べると、ボレイ自体はまだ売れています。コンドミアムはローカルの人は買いませんから、頼みの綱は外国人投資家です。しかし、ボレイは未だにローカルの人がすごく好きなマーケットです」と語る。  住みやすい環境に恵まれ、買い手が土地所有権利を持てる点が人気だが、選ぶうえで留意点もある。  同氏は、「一番大事なのは、ボレイ自体の価値を上げること、街をどう作ってどう発展させるのかです。ちゃんとメンテナンスして、富裕層の方々も住みだす街を開発しなければなりません。メンテナンスしないと公園は汚れ、道路も傷み、町自体の付加価値が下がります。良い町に継続して作るなら、メンテナンスが一番大事です」と、できるだけ良いボレイを選ぶ方法としてメンテナンスの重要性を指摘している。  潜在的な買い手には多くの選択肢があり、市場競争に勝つためにデベロッパーも抑えた価格を提示しているが、ボレイの一部のデベロッパーが顧客に対し、頭金なしで30年間の長期住宅ローンを提供しているケースもある。  一方でコンドミニアムを購入するカンボジア人の多くは、学校や空港、都内中心部へ簡単にアクセスでき、素晴らしい景観や設備を持つ、都会的で世界基準のライフスタイルを楽しみたいと思っており、もちろんそのほとんどが、キャピタルゲインや賃貸収入目的も含まれる。オーキデヴィラの場合、ボレイ内のコンドミニアムの9割以上の購入者が、若くて知識を持ち、海外を知っている現地人だという。センチュリー21・メコンのチレク・ソクニム氏は、「カンボジアの高齢者の習慣や文化では土地を持ちたがり、コンドミニアムに住むことを好みません。コンドミニアムがそれぞれ分かれた居住スペースを持っていることすら理解していない人もいます。コンドミニアムを買う地元の人のほとんどは投資が目的です。コンドミニアムに住むことを好む外国人に貸すためです。しかし3年後には若い世代が文化の変化を受け入れてコンドミニアムに住むようになるでしょう」と語った。
  • 151 カンボジアの建設・内装①(2016年11月発刊 ISSUE05より)
  • 152 カンボジアの建設・内装②(2016年11月発刊 ISSUE05より)
  •  カンボジアは高い経済発展を背景に、強い購買力を持ち始めた人々がまず最初に求めるものは良い家だ。プノンペン都郊外では、ボレイ(戸建住宅街)の開発が数多く進んでいる。住みやすい環境に恵まれ、買い手が土地所有権利を持てる点が人気だが、選ぶうえで留意点もある。  地元富裕層に人気のあるボレイ、オーキデヴィラのキエウ・サシリップ氏は、「なかには土地のほとんどが細かく分割されており、緑やレジャースペースがほとんど無いボレイもあります。ボレイは土地を個々で所有しているため、追加改修などが雑然と行われ、ボレイの全体的な雰囲気を壊してしまうなど、何が起こるかほとんど制御できません。また多くの購入者は保守や修繕費用を出したがらず、道路や公園のような供用スペースが置き去りになりかねません」とボレイの留意点を語る。  ソナトラグループの永田氏は、「一番大事なのは、ボレイ自体の価値を上げること、街をどう作ってどう発展させるのかです。ちゃんとメンテナンスして、富裕層の方々も住みだす街を開発しなければなりません。メンテナンスしないと公園は汚れ、道路も傷み、町自体の付加価値が下がります。良い町に継続して作るなら、メンテナンスが一番大事です」と、できるだけ良いボレイを選ぶ方法としてメンテナンスの重要性を指摘している。  潜在的な買い手には多くの選択肢があり、市場競争に勝つためにデベロッパーも抑えた価格を提示しているが、ボレイの一部のデベロッパーが顧客に対し、頭金なしで30年間の長期住宅ローンを提供しているケースもある。  一方でコンドミニアムを購入するカンボジア人の多くは、学校や空港、都内中心部へ簡単にアクセスでき、素晴らしい景観や設備を持つ、都会的で世界基準のライフスタイルを楽しみたいと思っており、もちろんそのほとんどが、キャピタルゲインや賃貸収入目的も含まれる。オーキデヴィラの場合、ボレイ内のコンドミニアムの9割以上の購入者が、若くて知識を持ち、海外を知っている現地人だという。  センチュリー21・メコンのチレク氏は、「カンボジアの高齢者の習慣や文化では土地を持ちたがり、コンドミニアムに住むことを好みません。コンドミニアムがそれぞれ分かれた居住スペースを持っていることすら理解していない人もいます。コンドミニアムを買う地元の人のほとんどは投資が目的です。コンドミニアムに住むことを好む外国人に貸すためです。しかし3年後には若い世代が文化の変化を受け入れてコンドミニアムに住むようになるでしょう」と語った。  また、低所得者や労働者向けに、手頃な価格で住宅を提供する公共住宅計画が、年末に開始する予定だ。この計画を政府から請負うワールドブリッジ・インターナショナル・グループのシーア・リッティ会長は、「FS調査はほぼ完了しており、プロジェクトの開始は今年10月か11月で、完了は2年以内だ」と述べ、住宅価格は2万5000ドル~3万ドルで、住宅ローンが利用出来るようになるという。
  • 153 カンボジアの建設・内装③(2016年11月発刊 ISSUE05より)
  •  資家や利用者が内装デザインに価値を見出している限り、内装業界は益々成長していく。  設計や工法においても現地を理解した考え方が重要になる。カンボジアでは日本で使われる建材が手に入りにくい。タニチュウ・アセットメントの谷氏は、「毎日が工夫の連続でしたね。日本ではこんな格好悪い仕上げはしないとか、どこまで許容できるのかとか。また、欲しい建材も手に入らないこともあります。入手方法を最初はいろいろ考えましたが、現地で調達できるもので対応することを基本にしました。逆転の発想でそこが見えてもおかしくないようにするとか、見せ方を工夫することを考えました」と語るとおり、カンボジアでの施行には創意工夫が必要になる。  大村インダストリーの大嶋信氏は、「日本の建設と同じ感覚でカンボジアの建設や施工を行うと、トラブルになることも多くあります。人件費は確かに安いですが、材料費は高くなることが多いです。というのも、カンボジアでは国内で材料を調達することが難しいことが多く、ほとんどを輸入に頼っているからです。カンボジアで建設をする際に気をつけなければいけないことは、安請け合いを鵜呑みにしないということです。建設会社の営業が安請け合いをして、後で問題になることは、カンボジアではよくあることです」と話す。  建築デザイン・プロデュースをするココチカムデザインの河内利成氏は、「大部分の発注者は実際の費用よりも安く予算を見積りますし、また、その額で請け負ってしまう工事会社もあります。しかし、そのような工事業者は途中から資金の不足分を次々と請求しますので、対応の判断を場当たり的に求められ、結果的に高くなることもあります。余裕のある予算のなかで計画的に工事する場合と比較したら、ボロボロの状態で工事が進捗していくわけです」と話す。  もちろん、安ければ良いというばかりではない。先進的なデザインで数々の実績を持つ内装会社、ザ・ルームのパヴェウ・シウデスキー氏は、「内装で最も重要なのは品質です。どれだけ安く見積を出せたとしても上質でなければ、その事業は失敗に終わるかと思います。内装デザインは非常に重要です。顧客の製品やサービスの品質保証にも関わってもきます。コンセプトにあった素敵な内装の店舗やブランドショップを訪れたとき、サービス内容や製品について知る前に、第一印象でお客様が良い判断を下すこともありますよね」と語った。いずれにしても進出には十分な準備や調査が重要だ。
  • 119 カンボジアの建築・内装①(2016年5月発刊 ISSUE04より)
  • 118 カンボジアの不動産②から続き  カンボジアの建設業界は年を追うごとに急速に変化している。2015年の建設投資額は約33億ドルで、対前年比32%増と堅調に伸びた。建設会社、サプライヤー、不動産会社など60社以上が加入するカンボジア建設協会(CCA)が支援する建築業界専門誌、コントラクション&プロパティ(C&P)のミース・プロックサー氏は、「多くの投資家が既にこれまでの数年で仕掛けた各案件に着工しているおり、同セクターは健全な成長を示しています。案件のほとんどは2018年までの完成を計画しているものです」と話す。 多くの国際的な建設関連会社が、駐在員事務所の設立や正規代理店を通じてカンボジアへ進出しており、建設関連の製品は低価格から高価格帯のものまで幅広く手に入るようになった。一方、市場の競争はより厳しくなっており、部材の価格競争も激しさを増している。  C&Pのミース氏は、「既にいくつかの先進的なサプライヤーの中には、先進技術を活用する等して、クライアントが競争優位性を保つ上で役立つサービスをパッケージ化して提供しています。価格的な競争力だけでなく、新たな価値の提案が求められています。また、多くのサプライヤーがより高品質の製品を供給できるように動き始めています。コンドミニアム、アパートメント、ホテル、集合住宅建設のような大規模な建設案件に加え、今では戸建て住宅の建設案件でも品質の高い製品を求め始めていることが理由です」と語る。
  • 120 カンボジアの建築・内装②(2016年5月発刊 ISSUE04より)
  • 119 カンボジアの建築・内装①から続き  カンボジアは高い経済発展を背景に、強い購買力を持ち始めた人々がまず最初に求めるものは良い家だ。プノンペン市郊外では、特にボレイと呼ばれる住宅街の開発が数多く進んでいる。住みやすい環境に恵まれ、買い手が土地所有権利を持てる点が人気だが、全てのボレイが計画的に建設され、同じ価格で売られている訳ではなく、選ぶうえで留意点もある。  地元富裕層に人気のあるボレイ、オーキデヴィラのキエウ・サシリップ氏は、「なかには土地のほとんどが細かく分割されており、緑やレジャースペースがほとんど無いボレイもあります。ボレイは土地を個々で所有しているため、追加改修などが雑然と行われ、ボレイの全体的な雰囲気を壊してしまうなど、何が起こるかほとんど制御できません。また多くの購入者は保守や修繕費用を出したがらず、道路や公園のような供用スペースが置き去りになりかねません」とボレイの留意点を語る。しかし、できるだけ良いボレイを選ぶ方法として、同氏は、「まずデベロッパーの評判と実績を調査し、場所がニーズや条件に合うか。デザインや供用スペースや設備の見取り図から、どのようにメンテナンスするのかを確認します。大事なのは、売買契約書を理解し、全ての条項と内部条件、特に支払条件が最適かを確認することです。あなたが支払う価格は、あなたが得る価値です。支払う価格よりもあなたが得られる価値が高いものを選んでほしいです」と付け加えた。  住宅街の開発に日系企業からの参入も活発化しており、サービスアパート等を運営するタマホームカンボジアのマネージングダイレクター、上田武範氏は、「カンボジアでは住宅街を造って販売する分譲型をやりたいです。中間層から富裕層の間くらいの月1,500ドル以上を稼いでいる人をターゲットに、7万ドルから最大15万ドルくらいで買えるものを目指します。また、日本の次世代住宅のようにハイスペックにしていきたいです。最近できた住宅でも設備が乏しいので、どんどん提案してきたいです。またソーラーパネルも良いですね。日射量が日本の1.5倍程あり発電効率が良いので、電気代の高いカンボジアでは喜んでもらえると思うんです」と抱負を語る。  一方でコンドミニアムを購入するカンボジア人の多くは、学校や空港、市内中心部へ簡単にアクセスでき、素晴らしい景観や設備を持つ、都会的で世界基準のライフスタイルを楽しみたいと思っており、もちろんそのほとんどが、キャピタルゲインや賃貸収入目的も含まれる。オーキデヴィラの場合、ボレイ内のコンドミニアムの9割以上の購入者が、若くて知識を持ち、海外を知っている現地人だという。  センチュリー21・メコンのチレク氏は、「カンボジアの高齢者の習慣や文化では土地を持ちたがり、コンドミニアムに住むことを好みません。コンドミニアムがそれぞれ分かれた居住スペースを持っていることすら理解していない人もいます。コンドミニアムを買う地元の人のほとんどは投資が目的です。コンドミニアムに住むことを好む外国人に貸すためです。しかし3年後には若い世代が文化の変化を受け入れてコンドミニアムに住むようになるでしょう」と語った。
  • 121 カンボジアの建築・内装③(2016年5月発刊 ISSUE04より)
  • 120 カンボジアの建築・内装②から続き  投資家や利用者が内装デザインに価値を見出している限り、内装業界は益々成長していく。ボンケンコンエリアを中心に、外国人やカンボジア人富裕層をターゲットにした飲食店がプノンペン市内に点在する。現在は店舗の内装スタイルが多様化し始め、経済発展と共にカンボジア人の感覚も表面的には変化がみられる。  建築デザイン・プロデュースをするココチカムデザインの河内利成氏は、「お金をかければ良いものができるのは当たり前ですが、回収年数を考えると何でもかんでもお金をかけるわけにはいきません。全てにお金をかけ過ぎる傾向があるために、かえって敷居を高くさせてカンボジア人が入りづらいという悪循環を起こしている場合があります」と、ターゲットに合わせたメリハリの必要性を語った。  また、設計や工法においても現地を理解した考え方が重要になる。「重工業が発展していないカンボジアでは、そもそもスチールが無いので外国から仕入れないと使えません。それだけでかなり高くつきます。建材はほとんどありません。そういった認識や、建材の選択のさじ加減が大事です。中国と同じように安く建てられるだろうという甘い考えを持った方が多い。大部分の発注者はこのような理由から、実際の費用よりも安く予算を見積りますし、また、その額で請け負ってしまう工事会社もあります。しかし、そのような工事業者は途中から資金の不足分を次々と請求しますので、対応の判断を場当たり的に求められ、結果的に高くなることもあります。余裕のある予算のなかで計画的に工事する場合と比較したら、ボロボロの状態で工事が進捗していくわけです」と、ココチカムデザインの河内氏は続けた。  先進的なデザインで数々の実績を持つ内装会社、ザ・ルームのパヴェウ・シウデスキー氏は、「内装で最も重要なのは品質です。どれだけ安く見積を出せたとしても上質でなければ、その事業は失敗に終わるかと思います。内装デザインは非常に重要です。顧客の製品やサービスの品質保証にも関わってもきます。コンセプトにあった素敵な内装の店舗やブランドショップを訪れたとき、サービス内容や製品について知る前に、第一印象でお客様が良い判断を下すこともありますよね」と語った。いずれにしても進出には十分な準備や調査が重要だ。
  • 079 カンボジアの建築・内装①(2015年10月発刊 ISSUE03より)
  • 078 カンボジアの不動産②から続き  カンボジアの建設業界は年を追うごとに急速に変化している。2014年の建設投資額は約25億ドルで1,960件のプロジェクトが承認され、前年と比較しおおむね堅調に推移したが、2015年は全体的に大きく下落する見込みだ。建設会社、サプライヤー、不動産会社など60社以上が加入するカンボジア建設協会(CCA)が支援する建築業界専門誌、コントラクション&プロパティ(C&P)のミース・プロックサー氏は、「多くの投資家が既にこれまでの数年で仕掛けた各案件に着工しているおり、同セクターは健全な成長を示しています。案件のほとんどは2018年までの完成を計画しているものです」と話す。  特に2015 年は、カンボジアがAEC(ASEAN経済共同体)発足を目前にして、めざましい発展が見られる。多くの国際的な建設関連会社が、駐在員事務所の設立や正規代理店を通じてカンボジアへ進出しており、建設関連の製品は低価格から高価格帯のものまで幅広く手に入るようになった。一方、市場の競争はより厳しくなっており、部材の価格競争も激しさを増している。  C&Pのミース氏は、「既にいくつかの先進的なサプライヤの中には、先進技術を活用する等して、クライアントが競争優位性を保つ上で役立つサービスをパッケージ化して提供しています。価格的な競争力だけでなく、新たな価値の提案が求められています。また、多くのサプライヤがより高品質の製品を供給できるように動き始めています。コンドミニアム、アパートメント、ホテル、集合住宅建設のような大規模な建設案件に加え、今では戸建て住宅の建設案件でも品質の高い製品を求め始めていることが理由です」と語る。
  • 080 カンボジアの建築・内装②(2015年10月発刊 ISSUE03より)
  • 079 カンボジアの建築・内装①から続き  BDリンクの報告書によれば、2007年から2011年の5年間の建設労働者の賃金動向では、名目賃金が非熟練労働者て78%上昇している。そのほか、セメントや鉄などの資材など、あらゆる価格の上昇によるコスト面の変化、地価の高騰により戸建てが持ちにくくなったことから需要の変化が起きている。  OCICのトゥーチ氏は、「需要にも変化が見られます。10年前はアパートメントの需要は多くありませんでしたが、現在ではかなり多くなっています。土地の価格が高騰して、個別の住宅を持てなくなってきていることも理由の一つでしょう。世代間でも需要の差はあります。若い世代はアパートメントに抵抗が無いようですが、年配の世代には戸建ての方が良いという方々が多いようです」と語る。  C&Pのミース氏は、「カンボジアの不動産市場で最も注目すべき理由の1つに、土地価格の急速な上昇によって、不動産を購入できる中間層家族や若い共働きの夫婦が、集合住宅の戸建てよりもコンドミニアムを選択するケースが増えていることです。現地ではコンドミニアムをより手頃で文明的、かつ安全で快適なライフスタイルとして好ましく捉える傾向が高まっていることです。比較的安価な中級クラスのコンドミニアムではカンボジア人の買い手の持続的な需要を見込めるでしょう」と言う。  ローカル系不動産仲介会社、Vトラストの2014年11月の報告書では、世帯数の増加と住宅需要の増加には相関関係を示唆しており、着実な核家族化の進行を背景とした住宅需要の増加を今後も見込めるとしている。また、銀行の住宅ローン金利が以前より下落したことも後押しとなって、現代的なライフスタイルに傾倒する中間所得者の利用が増加しており、住宅ローンは2012年に3.3億ドルと前年比20%増で成長し、2013年には最初の2ヶ月間で3.4億ドルまで成長したと、報告している。
  • 081 カンボジアの建築・内装③(2015年10月発刊 ISSUE03より)
  • 080 カンボジアの建築・内装②から続き  ボンケンコンエリアを中心に、外国人やカンボジア人富裕層をターゲットにした飲食店がプノンペン市内に点在する。現在は店舗の内装スタイルが多様化し始め、経済発展と共にカンボジア人の感覚も表面的には変化がみられる。建築デザイン・プロデュースをするココチカムデザインの河内利成氏は、「お金をかければ良いものができるのは当たり前ですが、回収年数を考えると何でもかんでもお金をかけるわけにはいきません。全てにお金をかけ過ぎる傾向があるために、かえって敷居を高くさせてカンボジア人が入りづらいという悪循環を起こしている場合があります」と、ターゲットに合わせたメリハリの必要性を語った。  また、設計や工法においても現地を理解した考え方が重要になる。「重工業が発展していないカンボジアでは、そもそもスチールが無いので外国から仕入れないと使えません。それだけでかなり高くつきます。建材はほとんどありません。そういった認識や、建材の選択のさじ加減が大事です。中国と同じように安く建てられるだろうという甘い考えを持った方が多い。大部分の発注者はこのような理由から、実際の費用よりも安く予算を見積りますし、また、その額で請け負ってしまう工事会社もあります。しかし、そのような工事業者は途中から資金の不足分を次々と請求しますので、対応の判断を場当たり的に求められ、結果的に高くなることもあります。余裕のある予算のなかで計画的に工事する場合と比較したら、ボロボロの状態で工事が進捗していくわけです」と、ココチカムデザインの河内氏は続けた。いずれにしても進出には十分な準備や調査が重要だ。
  • 289 カンボジアの通信・IT①(2019年6月発刊 ISSUE10より)
  •  カ...
  • 155 カンボジアの通信・IT②(2016年11月発刊 ISSUE05より)
  •  進出する企業の数も規模もまだまだ小さいカンボジアだが、事業規模を拡大する通信会社や銀行・保険会社など金融機関、システム対応し始めた官公庁などのニーズの高まりにより、ウェブ開発やシステム開発といったIT関連サービスの品質もしだいに高まってきている。  例えば、OA機器である複写機は画像処理部分がデジタル化し、ネットワークに繋がることで多機能化が進み、「マルチファンクションデバイス(MFD)」と呼ばれるようになった。  2000年初頭から販売代理店を通してカンボジアで機器販売をスタートし2015年10月にカンボジア支店を設置し直販・直サービスを開始した富士ゼロックスアジアパシフィックの山口渉氏は、「ローカルのオフィス機器市場は黎明期であり新規の需要が拡大しています。日本では殆どの企業で既にMFDを導入いただいており成熟市場と呼べますが、カンボジアでは卓上プリンターのみ、或いはOA機器を使っていないオフィスもいまだ珍しくありません。経済規模の拡大にあわせ事業が大きくなればMFDは間違いなく必要になりますので、ローカル企業でのMFDのニーズは確実に拡大して行きます。また外資系企業の投資も堅調ですので、この分野でも伸び代は十分あります」と語った。  外資系企業からの投資で支店開設も増えているカンボジアでは、OA機器を取り巻くIT関連サービスの品質も向上が期待される。  ITシステム関連サービスの品質が高まり、ウェブサービス開発やスマホ用アプリ開発など、比較的軽めの開発に対応できる技術を備えたカンボジア人若手ITエンジニアの数は着実に増えつつある。しかし個人もしくは少数チームによる個人事業主程度の業者が多く、またIT知識・技術には長けてはいるが、納期や品質などに関する顧客とのコミュニケーション能力が未熟であるケースが多い。  日本を含む外国企業からの発注に対し、しっかりと顧客要求と議論して向き合える窓口(ブリッジ・エンジニア)がいる業者でないと、受注はしたものの顧客期待を満たせずトラブルにつながるケースも散見される。日本で言う所の「SIer(システム・インテグレータ)」と呼べるようなレベル・規模の事業会社は、カンボジアにはまだまだ育っていないというのが現状だ。  優秀なIT人材は確実に育ちつつある一方、そのIT人材がなかなかカンボジアIT産業に根付かない傾向もある。独自のルートで優秀なカンボジア人IT人材を集め、スマートフォンアプリやウェブシステム開発などを行うJCITの髙虎男氏は、「カンボジア国内の優秀なIT人材を輩出するのは、一定以上の教育水準を誇り情報通信学部がしっかりしている大学。その大学生が、卒業後にカンボジア国内で勤めず、アメリカや欧州への海外留学を選択するケースが非常に多く見られるようになってきています。優秀なIT人材を青田刈りする奨学金制度が充実してきた事、海外留学中にIT系のアルバイトでそれなりに稼げる事例が増えてきた事あたりが、その主要因です」と語る。  また同氏は、「留学から戻ってきたIT人材は、大規模なシステム開発に関われる銀行等の金融機関のシステム部門に就職するか、大学教授の道を選ぶ傾向が増え、IT企業に勤めたり起業したりするケースがまだまだ少ないのが実情です」と語った。  優秀な大学卒業生や海外留学から帰国した人材は 、ITに関するかなり高い基礎能力とビジネスレベルの英語能力をほぼ全員が備えている。カンボジアで何らかITシステム開発を行いたい場合は、優秀なカンボジア人IT人材をしっかり押さえてマネジメントしているIT業者に出会える事が肝要だが、まだまだその数は少ないようだ。
  • 122 カンボジアの通信&IT(2016年5月発刊 ISSUE04より)
  • 121 カンボジアの建築・内装③から続き  カンボジアの携帯通信市場の特徴といえば、市場規模の小ささに対して参入・退出・合従連衡が極めて頻繁に繰り返されている事と言える。2013年には人口約1500万の小国カンボジアにおいて8社もの通信キャリアが移動通信サービスを提供していたが、この年から合従連衡の波が一気に押し寄せた。  2013年1月~3月までの間にタイとカンボジア政府との合弁キャリアであるエムフォンの経営破綻(モビテルが吸収)とハローアクシアタ及びラテルスの経営統合(スマートアクシアタ)が起こり2社減少、その後新規参入1社が加わって2013年末には合計7社となり、2015年3月には業界4位のビーラインが1位のメットフォンに買収された。ビーラインの買収以降、現在に至るまで大きな再編は起きていないが、この合従連衡のさなかに大きなシェアを築いた通信キャリアといえば、ベトナム系キャリアであるヴィッテル(Vittel)を母体とするメットフォン(加入者数約740万、シェア約45%)、マレーシア系キャリアであるアクシアタを母体とするスマート(契約者数約470万、シェア約30%)、カンボジア有力財閥ロイヤルグループとルクセンブルグ系MCIの共同出資によるセルカード(契約者数約310万、シェア約20%)の3強キャリアと言える。  新興勢力である中華系キャリアも勢強い。Cootel ブランドを展開する中国の信威通信産業グループは世界的に採用事例の少ないMcWiLL方式に対応した端末の販売を手掛ける。端末のラインナップはスマートフォン、タブレット、フィーチャーフォン、据置型電話、データ通信専用端末まで揃え、カンボジアでは通信サービスから端末の開発・販売まですべて同グループで手掛けている。  ExcellブランドのGT-TELLを買収してカンボジアの移動体通信事業に参入したシンガポール系South East Asia Telecomグループは2015年7月からSEATELブランド(中国語ブランド名は東南亜電信)として4G LTEサービスの提供を開始。カンボジア初のVoice Over LTE(VoLTE)による通信方式を導入するという。  小さな市場で競争が激化するなか、各通信キャリアは進化する顧客ニーズの取り込みに必死の様相だ。2009年4月に8番目の通信キャリアとしてスタートし、その後積極的なM&Aにより業界2位にまで駆け上がったスマートアクシアタのトーマス・ハント氏は「我々の業界は常に投資が必要で顧客の変わるニーズに対応する必要があります。最近は2Gだけの提供では生き残れませんし、4Gだけの提供でも生き残れません。近年は通話やSMSよりもLINEやフェイスブック等データネットワークの需要がどんどん増えているので会社としては顧客の要求に応える必要があるのです」と語っている。  「弊社はデータネットワークの投資に力を入れてきました。4Gの導入もしました。それ以外ではスマートミュージック等のエンターテインメントコンテンツや保険のサービスを開始しました。保険はこの1年で加入者が10万人となりました。基本的なテレコムサービス提供以外にコンテンツを増やす努力をしているところです」と続けた。
  • 082 カンボジアの通信&IT(2015年10月発刊 ISSUE03より)
  • 081 カンボジアの建築・内装③から続き  カンボジアの携帯通信市場は小さいながらも急拡大を続けており、競争環境も苛烈な状況が続いている。カンボジア郵便電気通信省の発表によると、2014年6月末時点で携帯電話契約数は2,000万件を突破。総人口約の1.3倍以上だ。 この急成長市場をめぐり多くの通信キャリアが参入してきたが、2013年から合従連衡の波が一気に押し寄せている。  2013年初頭には8社存在した通信キャリアだが、同年1月~3月までの間にタイとカンボジア政府との合弁キャリアであるエムフォンの経営破綻(モビテルが吸収)とハローアクシアタ及びラテルスの経営統合(スマートアクシアタ)が起こり2社減少、その後新規参入1社が加わって2013年末には合計7社となり、2015年3月には業界4位のビーラインが1位のメットフォンに買収される事がリリースされた。 2015年4月現在の3強と言えば、ベトナム系キャリアであるヴィッテル(Vittel)を母体とするメットフォン(加入者数約740万、シェア約45%)、マレーシア系キャリアであるアクシアタを母体とするスマート(契約者数約470万、シェア約30%)、カンボジア有力財閥ロイヤルグループとルクセンブルグ系MCIの共同出資によるセルカード(契約者数約310万、シェア約20%)があげられる。  新興勢力である中華系キャリアも勢強い。Cootelブランドを展開する中国の信威通信産業グループは世界的に採用事例の少ないMcWiLL方式に対応した端末の販売を手掛ける。端末のラインナップはスマートフォン、タブレット、フィーチャーフォン、据置型電話、データ通信専用端末まで揃え、カンボジアでは通信サービスから端末の開発・販売まですべて同グループでてがけている。ExcellブランドのGT-TELLを買収してカンボジアの移動体通信事業に参入したシンガポール系South East Asia Telecomグループは2015年7月からSEATELブランドとして4G LTEサービスの提供を開始。カンボジア初のVoice Over LTE(VoLTE)による通信方式を導入するという。  小さな市場で競争が激化するなか、各通信キャリアは進化する顧客ニーズの取り込みに必死の様相だ。2009年4月に8番目の通信キャリアとしてスタートし、その後積極的なM&Aにより業界2位にまで駆け上がったスマートアクシアタのトーマス・ハント氏は、「我々の業界は常に投資が必要で顧客の変わるニーズに対応する必要があります。最近は2Gだけの提供では生き残れませんし、4Gだけの提供でも生き残れません。近年は通話やSMSよりもLINEやフェイスブック等データネットワークの需要がどんどん増えているので会社としては顧客の要求に応える必要があるのです」と語っている。また同氏は、「弊社はデータネットワークの投資に力を入れてきました。4Gの導入もしました。それ以外ではスマートミュージック等のエンターテインメントコンテンツや保険のサービスを開始しました。保険はこの1年で加入者が10万人となりました。基本的なテレコムサービス提供以外にコンテンツを増やす努力をしているところです」と続けた。
  • 268 カンボジアのHR・コンサル①(2018年11月発刊 ISSUE09より)
  • 2018年1...
  • 242 カンボジアのHR・コンサル①(2018年5月発刊 ISSUE08より)
  •  2018年...
  • 158 カンボジアの人材・コンサル③(2016年11月発刊 ISSUE05より)
  •  意思決定の迅速化と現地市場の急変対応のため、進出企業の多くは調達の現地化、意思決定や実施方法の現地化を念頭に置いている。なかでも重要なのが人材の現地化だが、カンボジア人のマネジメント力の低さの要因として学校教育や職業教育が十分でないことが挙げられる。  CDLの鳴海氏は、「多くの進出企業はあらゆる面で現地化を念頭におき、マネージャーや幹部候補などの役職にはカンボジア人を配置させる場合が多いです。そして将来はほぼすべての業務をカンボジア人だけでオペレーションするという理想を持っています。しかし人材面における現地化の妨げとして、カンボジア人材の社会人基礎力の低さが挙げられます。基礎力とは主に、考える力・行動する力・チームワークの三つです」と語っている。  スイスのダボス年次総会で知られる国際機関である世界経済フォーラムが2016年9月に公表した国際競争力レポートでは、カンボジアでの事業に伴う主な阻害要因の一つとして、腐敗に次いで労働者の教育水準を挙げている。また、このレポートの教育に関係する詳細をみると、初等教育の質(110位)、中等・高等教育(124位)は過去のランキングと比較しても低迷したままであり、他のASEAN諸国と比較してもレベルが低く、ランキング対象外のミャンマーを除けば最低だ。隣国ラオスの初等教育ランキングは89位、ベトナムでは92位、タイは90位だった。  「日本人の場合、義務教育などを通してある程度の基礎力が自然と身につくものですが、カンボジアの場合は初等・中等教育が他のASEAN諸国と比べてかなり遅れています。カンボジア人の多くは社会人基礎力の素養が身につかぬまま、大学等では英語などの語学学習に勤しむため、『話せるだけの人材』などと揶揄されることもあります」とCDLの鳴海氏は語る。  依然として教育の質が及ぼす人材への影響が懸念される一方で、カンボジア政府の教育システム改善の動きに一定の結果が現れ始めている。2014年から全国公立高校卒業試験の監査が厳格化されて以降、2014年の合格者数は40%、2015年は56%、2016年には62%と、年々改善されている。カンボジアの教育システム改善には様々な根深い問題点を解決する必要があり、今後とも革新的な取り組みが求められる。
  • 123 カンボジアのHR&コンサル①(2016年5月発刊 ISSUE04より)
  • 122 カンボジアの通信&ITの続き  多くの経営者はカンボジア人に対する共通した感想を持っている。彼らはフレンドリーで礼儀正しいが、上司に対する進言などは少ない。だからこそスタッフとよく話すようにするのが良いだろう。彼らは自ら話さないだけで仕事に対して想いやアイディアを持っており、それを引き出すことはとても有用である。  2005年創業、100名以上のスタッフを擁し7万人の求職登録を誇るカンボジア最大の人材会社、HRインクのダミーコ氏は、「カンボジア人は基本的に新しいことや学ぶことが大好きですし勤勉です。しかし教育システムが不完全なのでハンズオン支援が不可欠です。ただ機会を与えれば努力しますし能力を発揮します。日系企業は規律がきちんとしている分、カンボジアでは苦労するかもしれません。忍耐力とルールなどの明確化が必要かと思います。最初は日系企業の厳しさに付いて行くのが大変だと皆言います。しかし働いているうちにその良さが伝わるのか、働きたい企業の上位になっています」と語っている。  JICAの協力により設立され、民間セクター開発を促進するための人材育成とネットワーキングの拠点となっている施設、CJCC(カンボジア日本人材開発センター)の伴俊夫氏は、「カンボジア人の日本そのものへの関心も非常に高くなっており、その結果日本語学習者も確実に増えているわけです。そして何と言っても若い人たちはとても親日であると言えます。これは人材としては大きなポイントだと思います。それ以外だと英語の力が高いですね。CJCCでは英語が公用語ですが、英語人材を雇用するのは決して難しくありません。人材の特徴は誠実で前向きかつ素直で、いつも笑顔である。これまでお目に掛かった日系企業の経営者の皆さんのうち、このような人材像がカンボジアに進出するときの一番のキーになっている方は多いようです」と語る。  カンボジア人の多くは家族や親戚、友人らと共同生活をしており、一人暮らしは稀だ。理由として生活費の節約が挙げられるが、むしろ精神的な支え合いに重点を置いている傾向が強い。親の進言で採用を辞退したり、職務より個人的な用事を優先するなど、親からの過剰な干渉や強い依存関係に起因した行動が会社運営にも影響を与えるため留意が必要だ。
  • 124 カンボジアのHR&コンサル②(2016年5月発刊 ISSUE04より)
  • 123 カンボジアのHR・コンサル①の続き  CDLの鳴海氏は、「職種別・職階別の平均月給(最終月給)を比較すると、接客の職務に携わる者はどの段階でも比較的低給であり、またセールス職では一般スタッフは比較的高給ではあるものの、総務的部署に異動する等により職務が変わらなければ、昇格してもマネージャークラスで給与は伸び悩む傾向があります」と語る。  また、「業界別の平均月給を比較すると、物流業はほかの業種と比べて高給ですが、マネージャークラスになると比較的低給になります。これらの統計は日系企業に限らず、全ての国籍の企業の平均の調査であり、一般スタッフなら業種によってかなりのバラつきがあるものの、大体200ドル前後です」と同氏は続けた。  一方で日系企業だけの場合、2014年のJETROの調査では非製造業の一般職で332ドルという結果が出ており、100ドル以上の差がある。調査主体が相違するため一概には言えないが、可能性として大きい原因の一つは、日系企業には日本語人材が雇用されているからだと言えよう。
  • 125 カンボジアのHR&コンサル③(2016年5月発刊 ISSUE04より)
  • 124 カンボジアのHR・コンサル②の続き  意思決定の迅速化と現地市場の急変対応のため、進出企業の多くは調達の現地化、意思決定や実施方法の現地化を念頭に置いている。なかでも重要なのが人材の現地化だが、カンボジア人のマネジメント力の低さの要因として学校教育や職業教育が十分でないことが挙げられる。  CDLの鳴海氏は、「多くの進出企業はあらゆる面で現地化を念頭におき、マネージャーや幹部候補などの役職にはカンボジア人を配置させる場合が多いです。そして将来はほぼすべての業務をカンボジア人だけでオペレーションするという理想を持っています。しかし人材面における現地化の妨げとして、カンボジア人材の社会人基礎力の低さが挙げられます。基礎力とは主に、考える力・行動する力・チームワークの三つです」と語っている。  スイスのダボス年次総会で知られる国際機関である世界経済フォーラムが、2015年公表した国際競争力レポートでは、カンボジアでの事業に伴う主な阻害要因の一つとして、労働者の教育水準を挙げている。また、このレポートの人材に関係する詳細をみると、昨年の得点が高かった「労働市場の効率性」は、賃金決定の柔軟性や、賃金・生産性の点で評価を下げたため、29位から38位に後退した。また、他の東南アジアの後発開発途上国と同様に、初等教育の質(114位)、中等・高等教育(118位)は低迷したままであり、教育の質が及ぼす人材への影響が懸念される。  「日本人の場合、義務教育などを通してある程度の基礎力が自然と身につくものですが、カンボジアの場合は初等・中等教育が他のASEAN諸国と比べてかなり遅れています。カンボジア人の多くは社会人基礎力の素養が身につかぬまま、大学等では英語などの語学学習に勤しむため、『話せるだけの人材』などと揶揄されることもあります」とCDLの鳴海氏は語る。  2015年の全国公立高校の卒業試験の合格者割合は56%と、試験の厳格化を始めた前年の40%と比較し一応は伸びた結果だが低水準のままだ。例年は8割以上が合格する試験だったが、前年から政府が教師や生徒の不正を厳しく取り締まっている。
  • 083 カンボジアのHR・コンサル①(2015年10月発刊 ISSUE03より)
  • 082 カンボジアの通信&ITから続き  多くの経営者はカンボジア人に対する共通した感想を持っている。彼らはフレンドリーで礼儀正しいが、上司に対する進言などは少ない。だからこそスタッフとよく話すようにするのが良いだろう。彼らは自ら話さないだけで仕事に対して想いやアイディアを持っており、それを引き出すことはとても有用である。また、一方で稚拙で短絡的な思考や言動が見受けられ、周囲に流され易くメンタル面が弱い。  2005年創業、100名以上のスタッフを擁し7万人の求職登録を誇るカンボジア最大の人材会社、HRインクのサンドラ・ダミーコ氏は、「カンボジア人は基本的に新しいことや学ぶことが大好きですし勤勉です。しかし教育システムが不完全なのでハンズオン支援が不可欠です。ただ機会を与えれば努力しますし能力を発揮します。日系企業は規律がきちんとしている分、カンボジアでは苦労するかもしれません。忍耐力とルールなどの明確化が必要かと思います。最初は日系企業の厳しさに付いて行くのが大変だと皆言います。しかし働いているうちにその良さが伝わるのか、働きたい企業の上位になっています」と語っている。  2008年から人材開発や労務コンサルタントを行うローカル人材会社、Aプラスのソー・キナール氏も、「多くのカンボジア人は会社の同僚や上司と仲良くフレンドリーな関係を好む文化があります。彼らは若く、行動力があり、新しいことを率先して学ぶ姿勢があります。彼らに継続して働いて欲しければ良い仕事環境と成長機会を提供することを忘れないで欲しいです」と語る。  カンボジア人の多くは家族や親戚、友人らと共同生活をしており、一人暮らしは稀だ。理由として生活費の節約が挙げられるが、むしろ精神的な支え合いに重点を置いている傾向が強い。親の進言で採用を辞退したり、職務より個人的な用事を優先するなど、親からの過剰な干渉や強い依存関係に起因した行動が会社運営にも影響を与えるため留意が必要だ。  カンボジアは祝祭日が年間27日程度とASEAN諸国の中では最多。プノンペン市民には地方出身者が多く、盆や正月などの連休には帰郷することが多い。できるだけ多くの時間を故郷で過ごすため、連休の前後に移動日として更に休暇を要求する一方で、会社の方針を尊重し、従業員間で休暇を調整するといった行動はまれである。そのため、飲食店などは休業せざるを得ない場合もある。
  • 084 カンボジアのHR・コンサル②(2015年10月発刊 ISSUE03より)
  • 083 カンボジアのHR・コンサル①から続き  労働法では、労働時間は1日8時間、週48時間と定めている。残業は通常賃金の50%増しで、午後10時~午前5時までや休日は100%増し。有給休暇は1か月につき1.5日(年間18日)と定めている。  また、2015年10月、労働職業訓練省より最低賃金に関する省令が公布され、2016年の縫製業、被服業及び製靴業に従事する労働者の最低賃金は月額140ドル(試用期間中は135ドル)に決定された。2015年の128ドルから9.4%増。一昨年から昨年にかけての伸び率28.0%増と比較すると小幅な伸びとなった。政府が定める最低賃金額に自国通貨(リエル)を使用しないことは世界的に異例。この額は2015年のベトナムのハノイ・ホーチミン等都市部における月額最低賃金3,100,000ドンと並ぶ額。為替レートによってはカンボジアの方が高額になる場合もあるだろう。  なお、JETRO海外調査部が発表した在アジア・オセアニア日系企業活動実態調査(2014年度調査)によると、月給は作業員で113ドル、エンジニア(中堅技術者)で323ドル、中間管理職(課長クラス)で668ドルであった。
  • 085 カンボジアのHR・コンサル③(2015年10月発刊 ISSUE03より)
  • 084 カンボジアのHR・コンサル②から続き  意思決定の迅速化と現地市場の急変対応のため、進出企業の多くは調達の現地化、意思決定や実施方法の現地化を念頭に置いている。なかでも重要なのが人材の現地化だが、カンボジア人のマネジメント力の低さの要因として学校教育や職業教育が十分でないことが挙げられる。  CDLの鳴海氏は、「多くの進出企業はあらゆる面で現地化を念頭におき、マネージャーや幹部候補などの役職にはカンボジア人を配置させる場合が多いです。そして将来はほぼすべての業務をカンボジア人だけでオペレーションするという理想を持っています。しかし人材面における現地化の妨げとして、カンボジア人材の社会人基礎力の低さが挙げられます。基礎力とは主に、考える力・行動する力・チームワークの三つです」と語っている。  スイスのダボス年次総会で知られる国際機関である世界経済フォーラムが、2015年公表した国際競争力レポートでは、カンボジアでの事業に伴う主な阻害要因の一つとして、労働者の教育水準を挙げている。また、このレポートの人材に関係する詳細をみると、昨年の得点が高かった「労働市場の効率性」は、賃金決定の柔軟性や、賃金・生産性の点で評価を下げたため、29位から38位に後退した。また、他の東南アジアの後発開発途上国と同様に、初等教育の質(114位)、中等・高等教育(118位)は低迷したままであり、教育の質が及ぼす人材への影響が懸念される。  「日本人の場合、義務教育などを通してある程度の基礎力が自然と身につくものですが、カンボジアの場合は初等・中等教育が他のASEAN諸国と比べてかなり遅れています。カンボジア人の多くは社会人基礎力の素養が身につかぬまま、大学等では英語などの語学学習に勤しむため、「話せるだけの人材」などと揶揄されることもあります」とCDLの鳴海氏は語る。  2015年の全国公立高校の卒業試験の合格者割合は56%と、試験の厳格化を始めた前年の40%と比較し一応は伸びた結果だが低水準のままだ。例年は8割以上が合格する試験だったが、前年から政府が教師や生徒の不正を厳しく取り締まっている。労働職業訓練省傘下のNEA(国家雇用機構)のコイッ・ソミエン氏も、「周辺国と比べ、労働力が安価であることなどが特徴ですが、欠点の一つとして、労働者の教育レベルが低いです」と語っている。
  • 127 カンボジアのマーケティング・メディア①(2016年5月発刊 ISSUE04より)
  • 126 カンボジアの教育&学習支援の続き  これから投入しようとするサービスや商品に需要があるか、タイミングは最適か、パートナーは見つかるのかなど、マーケット調査のポイントはいくつか挙げられる。  マーケット調査の老舗、インドチャイナリサーチのマネージングダイレクター、カール・リモイ氏は、「ここ 10年近くカンボジアの経済は年間6~7%の水準で成長を続けており、世界的に見てもかなりの発展スピードと言えます。世帯収入の増加、さらに中流階級が発達してきている。ここ数年は国際的な大手企業の参入も増えており、投入しようとするサービスのレベルも大きなポイントです。かなりのポテンシャルがあると思いますが、独特のマーケットの理解を深めることが重要になってきます。急激な成長により消費者の考え方も変化しているので、最新のカンボジア事情を把握していることが成功のカギとなるでしょう」と語った。  また、20年以上リサーチの経験を有するBMRSのポウン・ヴッティ氏は、「例えば、レストランはただ食事ができるところから、清潔で質の高いサービスが求められるようになってきました。これは諸外国の影響が強いと思われます。今後、顧客の力が強くなるでしょう。 消費量が増え、求めるレベルが高くなり、ただものを販売するだけの時代は終わります。消費者にはたくさんの選択肢があります。フェイスブックやインターネットでの口コミで会社が潰れる可能性すらあるのです」と、今後の消費者動向について語った。
  • 128 カンボジアのマーケティング・メディア②(2016年5月発刊 ISSUE04より)
  • 127 カンボジアのマーケティング&メディア①から続き  あらゆる層にリーチできる一般的なメディアである。携帯電話から聴くこともでき、テレビよりも細分化したエリアへの告知が可能。プノンペンには36のラジオ局があり、地方と合わせると200局以上が存在する。そのため、ラジオのマーケットとしては大きいが、広告主が分散するため、広告費が非常に安いのが特徴。しかも国内のほとんどを網羅し、特にネットやテレビではカバーできない農村部まで浸透させることができる。ラジオの内容は、70%~80%が若者向けのエンターテイメント性の高い番組を放送している。  「かつては歴史を伝えるなどの文化的なコンセプトで番組作りをする局が複数ありましたが、若者に不人気で、広告も集まらず、やむを得ずコンセプトを変えていきました」と、DAPのソイ・ソピーア氏は語る。また、ラジオ広告の利用方法について、「これはカンボジアの教育水準にも関係することですが、文字から情報を得ることに慣れていない人たち、農場や工場のワーカーを募集などといった告知にはいいですね。逆に知識人が視聴するとすれば、海外ラジオ番組やTV番組です」とトメイトメイ・ドットコムのキー氏は述べている。
  • 129 カンボジアのマーケティング・メディア③(2016年5月発刊 ISSUE04より)
  • 128 カンボジアのマーケティング&メディア②から続き  現代のカンボジアは、流行のもの、良いものは積極的に宣伝する傾向があり、バズマーケティング、口コミが有効となる。影響力のある人からの発信は大きな価値を生むため、インターネットに限定されるものではなく、「例えば、村で探したワーカーをコアメンバーとして好待遇で働いてもらって仲間を連れてきてもらう方法もあります。クラブも人気がありますから、DJなどに流行らせたいアイテムを無料で持たせて、周囲に欲しいという気分にさせることもできます」と、カンボジア人向けフリーペーパー「チュガポン(CHUGA-PON)」を発行するメイツの柳内学氏が語る。  例えばフラッシュモブやゲリラ告知は、プノンペンの若者向けのサービスを中心にここ数年増えてきており、先進的な手法を主に使うブラウンコーヒーや、ピザカンパニーなどカンボジア人の若者に指示の高い店が先駆けとなっている。カンボジアのマーケティングにとって純粋な話題の総量を増加させることは非常に有効である。  そして、カンボジアならではのアナログ媒体といえばトゥクトゥク広告だろう。トゥクトゥクドライバーとの直接交渉だと価格は安くすることが可能だが、どこを走っているか基本的に把握できないのがトゥクトゥク。いくつかの広告を付け替えているトゥクトゥクも存在するという。そういう意味で、代理店を使って管理を一任するという選択肢もある。  「弊社は、トゥクトゥクドライバー個人に看板広告をお願いする際は手数料を頂戴していますが、管理という面を信頼して頂き、現在では500台以上を任せて頂いております」とは、メイツの柳内氏。さらに、その効果について、「トゥクトゥク広告というのは非常にシンプルで広告効果がすぐに見える広告だと思います。例えば弊社を通しトゥクトゥクを100台走らせたとしますと、月1500$ですが、新聞に1ヶ月広告をのせるのと同じ金額ですが断然効果は高いと思います」と語った。
  • 130 カンボジアのマーケティング・メディア④(2016年5月発刊 ISSUE04より)
  • 129 カンボジアのマーケティング・メディア③から続き  カンボジア人を対象にしたクメール語のものや、英語、中国語、韓国語など各国外国人向けに発行しているものとがあり、それぞれのマーケットに告知するのに効果的である。  日本語では本誌をはじめ、生活情報誌のプノン、ニョニュム、クロマーマガジン、ディスカバーニューアジア、プノンペンプレスネオの6誌がある。在住日本人は2,500人ほどとマーケットとしては成長段階にあるので、日本人に特化したサービスでない限り他のマーケティング手法との併用が望ましい。
  • 087 カンボジアのマーケティング・メディア①(2015年10月発刊 ISSUE03より)
  • 086 カンボジアの教育・学習支援から続き  これから投入しようとするサービスや商品に需要があるか、タイミングは最適か、パートナーは見つかるのかなど、マーケット調査のポイントはいくつか挙げられる。  マーケット調査の老舗、インドチャイナリサーチのマネージングダイレクター、カール・リモイ氏は、「ここ10年近くカンボジアの経済は年間6~7%の水準で成長を続けており、世界的に見てもかなりの発展スピードと言えます。世帯収入の増加、さらに中流階級が発達してきている。ここ数年は国際的な大手企業の参入も増えており、投入しようとするサービスのレベルも大きなポイントです。かなりのポテンシャルがあると思いますが、独特のマーケットの理解を深めることが重要になってきます。急激な成長により消費者の考え方も変化しているので、最新のカンボジア事情を把握していることが成功のカギとなるでしょう」と語った。  また、20年以上リサーチの経験を有するBMRSのポウン・ヴッティ氏は、「例えば、レストランはただ食事ができるところから、清潔で質の高いサービスが求められるようになってきました。これは諸外国の影響が強いと思われます。今後、顧客の力が強くなるでしょう。消費量が増え、求めるレベルが高くなり、ただものを販売するだけの時代は終わります。消費者にはたくさんの選択肢があります。フェイスブックやインターネットでの口コミで会社が潰れる可能性すらあるのです」と、今後の消費者動向について語った。
  • 088 カンボジアのマーケティング・メディア②(2015年10月発刊 ISSUE03より)
  • 087 カンボジアのマーケティング・メディア①から続き  あらゆる層にリーチできる一般的なメディアである。携帯電話から聴くこともでき、テレビよりも細分化したエリアへの告知が可能。プノンペンには36のラジオ局があり、地方と合わせると200局以上が存在する。そのため、ラジオのマーケットとしては大きいが、広告主が分散するため、広告費が非常に安いのが特徴。しかも国内のほとんどを網羅し、特にネットやテレビではカバーできない農村部まで浸透させることができる。ラジオの内容は、70%~80%が若者向けのエンターテイメント性の高い番組を放送している。「かつては歴史を伝えるなどの文化的なコンセプトで番組作りをする局が複数ありましたが、若者に不人気で、広告も集まらず、やむを得ずコンセプトを変えていきました」と、DAPのソイ・ソピーア氏は語る。また、ラジオ広告の利用方法について、「これはカンボジアの教育水準にも関係することですが、文字から情報を得ることに慣れていない人たち、農場や工場のワーカーを募集などといった告知にはいいですね。逆に知識人が視聴するとすれば、海外ラジオ番組やTV番組です」とトメイトメイ・ドットコムのキー氏は述べている。
  • 089 カンボジアのマーケティング・メディア③(2015年10月発刊 ISSUE03より)
  • 088 カンボジアのマーケティング・メディア②から続き  カンボジア人を対象にしたクメール語のものや、英語、中国語、韓国語など各国外国人向けに発行しているものとがあり、それぞれのマーケットに告知するのに効果的である。スタンディングオンザブリッジの清野氏は、「カンボジア人向けの場合、文字はあまり読まれないよううです。必要最低限の情報のみ文字にして、ビジュアルインパクトを狙ったほうが反響につながるようです」と語った。  日本語では本誌をはじめ、生活情報誌のプノン、ニョニュム、クロマーマガジン、ディスカバーニューアジア、プノンペンプレスネオの6誌がある。在住日本人は2,000人ほどとマーケットとしては成長段階にあるので、日本人に特化したサービスでない限り他のマーケティング手法との併用が望ましい。
  • 223 カンボジアの物流・運輸②(2017年11月発刊 ISSUE07より)
  •  5年前から冷凍・冷蔵物流を始めているロコモの小市琢磨氏は、「弊社は一般的な冷凍・冷蔵物流ではなく、ベトナムの大手アイスクリームメーカーと契約しています。2000台のアイスケースを主にプノンペンや都市部の商店に設置し、代理店として各商店にアイスクリームを配送しています。冷凍・冷蔵物流は一般のドライ商品に比べて初期費用もコストもかかるため、参入する企業は多くありません。弊社は各商店のアイスケースにかかる電気代を負担するなどして、カンボジア人の生活に合わせた事業を行っています。  カンボジアでは、ここ数年間で道路脇の商店にもアイスクリームが備えられるようになりました。隣国タイでは現在、コンビニに冷凍食品が大量に置かれており、カンボジアも数年後には同様の環境になると予想できます。もともと問屋事業であるため過去20年間に亘りカンボジア国内で築き上げたコネクションを生かして、今後、冷凍・冷蔵物流の場合は弊社を使ってもらえるように足場作りをしています」と述べ、カンボジアの冷凍・冷蔵物流の可能性について触れた。
  • 196 カンボジアの運輸・物流②(2017年05月発刊 ISSUE06より)
  •  5年前から冷凍・冷蔵物流を始めているロコモの小市琢磨氏は、「弊社は一般的な冷凍・冷蔵物流ではなく、ベトナムの大手アイスクリームメーカーと契約しています。2000台のアイスケースと500台のヨーグルト用ショーケースを主にプノンペンや都市部の商店に設置し、代理店として各商店にアイスクリームとヨーグルトを配送しています。冷凍・冷蔵物流は一般のドライ商品に比べて初期費用もコストもかかるため、参入する企業は多くありません。弊社は各商店のショーケースにかかる電気代を負担するなどして、カンボジア人の生活に合わせた事業を行っています。  カンボジアでは、ここ数年で道路脇の商店にもアイスクリームが備えられるようになりました。隣国タイでは現在、コンビニに冷凍食品が大量に置かれています。カンボジアも数年後には同様の環境になると予想できます。もともと問屋事業であるため過去20年間に亘りカンボジア国内で築き上げたコネクションを生かして、今後、冷凍・冷蔵物流の場合は弊社を使ってもらえるように足場作りをしています。将来を見据えた事業です」と述べた。経済発展を遂げるカンボジアならではの冷蔵・冷凍物流事業である。
  • 131 カンボジアの運輸・物流①(2016年5月発刊 ISSUE04より)
  • 130 カンボジアのマーケティング・メディア④から続き  内陸国であるカンボジアは、陸路、海路、空路、水路それぞれの運搬手配が可能となり、状況に応じた使い分けができる。海路であれば、シハヌークビル港経由が主要ルートとして挙げられる。国内唯一の深海港で、日本の支援により整備された、カンボジア全体の物量の60%を扱う重要港だ。また、河川港であるプノンペン港は、寄港可能な船舶サイズに制限はあるものの、メコン河を経由してベトナムのホーチミン港やカイメップ・チーバイ港への内陸水運航路として重要性が増しており、貨物船交通量の急増に伴い、プノンペン港湾公社の貨物港拡張計画の前倒しが2016年3月に発表された。  空路での主要港はプノンペン国際空港とシェムリアップ国際空港の2空港である。いずれの空港からも日本への直行便は未就航で、日本へはタイ、シンガポール、ベトナム、マレーシア、香港などでの乗り継ぎ便での手配となる。現状、フレイター(貨物専用輸送機)の定期就航も無いため、航空各社が各々のフライトで利用する機体によって、一般貨物の積載可能サイズも異なる。本年度のANA日本直行便就航開始により、日本向けの航空貨物便の利便性が増すことにも期待したい。  陸路では、タイ側からであれば、ポイペトかコッコン経由、ベトナム側からはバベット経由が現状での主要ルートとなるが、国道1号線のネアックルン橋の開通でプノンペンとホーチミンを結ぶ物量が増えると予想される。また、日本政府が南部経済回廊整備を支援しており、無償支給のネアックルン橋を始め、2020年までには国道5号線を改修し、全4車線化となる予定。  他に、プノンペン・ポイペト(タイ国境)を結ぶ北線、プノンペン・シハヌークビルを結ぶ南線を有する鉄道路線も存在する。南線に関しては14年ぶりに旅客鉄道を運行再開するとの運営会社の発表があったが、運行速度や関連施設の充実度の関係で、一般貨物の輸送手段としての選択肢には入らないのが現状である。  日本政府はカンボジアの国土開発・隣国とのコネクティビティの一層の支援を強化するため、高速道路網の整備等の案件化や物流の活性化を通じた投資促進を支援することを表明しているが、道路、港湾、空港、鉄道、それぞれの経路も含め、未だ発展途上であるため、利用環境に対するさらなる改善が待たれる。また、プノンペン市内の交通渋滞緩和と交通安全向上を図る目的として、日本政府による無償援助協力(ODA)により、既存の中国製信号機の入替えと交通管制センターを新たに設置する事も発表された。
  • 132 カンボジアの運輸・物流②(2016年5月発刊 ISSUE04より)
  • 131 カンボジアの運輸・物流①の続き  カンボジア独自の制度として、輸出入手続きに関税とは別にカムコントロール※2 に貨物検査料を支払い、手続きをする必要がある。物流業界で30年の経験を持つトーマスインターナショナル・サービスのゼネラル・マネージャー、クリストファー・トーマス氏は、「関税は財務省が管理している一方で、カムコントロールは商業省が管理しています。このような二重の管理があらゆるものに適応されている事でコストもかさみます」と語る。  一方、世界37カ国に拠点を持ち、カンボジアには2007年に進出した韓国系物流会社、パントス・ロジスティクスのキム・ソンモ氏は、「税関内部の仕組みや法自体が明確ではないため、明確な判断を出してくれないケースが非常に多いので、その都度税関に問い合わせをしなければならない状況です。したがって、税関法等に対する十分な知識があり、不明確な部分に対しては税関と話し合うことができ、何かしらの解答を出せる能力が必要となります。この一連のプロセスをきちんと理解、実行できれば余分なコストはかかりません」と語る。  この問題は日・カンボジア官民合同会議※3 でも去年より継続的に取り上げられている。商業省担当官の公式説明では、輸出は繊維製品、輸入は特定品目のみがカムコントロールの貨物検査の対象となり、ASYCUDAシステム※4 によってハイリスクと評価された物についてのみ検査を行うとのこと。しかし、実際には輸出入される全貨物に対し検査料がかかっているのが現状である。この背景には、管轄省庁が異なる事による利権問題も絡み、簡単には改善されそうもない問題であるが、2015年7月、2016年3月にも開催された官民合同会議でも特に進展は見られず、迅速なカンボジア政府の対応が待たれる。
  • 133 カンボジアの運輸・物流③(2016年5月発刊 ISSUE04より)
  • 132 カンボジアの運輸・物流②の続き  カンボジアのもう一つの大きな特徴としてドライポート※6 が挙げられる。  「基本的にドライポートには、広大な土地、倉庫、税関機能があります。他の国であれば、どの土地にも倉庫を建てられますし、そこからの輸出が可能です。カンボジアでは輸出をするためには二つの手段しかありません。一つ目は関税手続きを工場で行うこと、もうひとつはドライポートで行うことで、輸出に関する一連の業務が可能な場所というような意味しかないんです。ユニークなのは、5、6社のドライポート管理会社にその独占権があり、競合を育てるという面ではよくない点ですね」と、トーマスインターナショナルのトーマス氏は語る。工場側でドライポートを経由せずに直接輸出手配できるような環境になる日も待たれる。
  • 134 カンボジアの運輸・物流④(2016年5月発刊 ISSUE04より)
  • 133 カンボジアの運輸・物流③の続き  2014年4月より流通・卸事業を開始し、食品や酒類、特に冷凍・冷蔵食料品のラインアップに力を入れているS.E.A.T.S.の峯島浩輔氏は、「主に現地の飲食店や小売店への日々のリサーチを通して必要とされている製品やサービスに関する活きたマーケティング活動を実践しています。隣国で成功している企業が現地資本と組んで出店するケースも多く、品質・価格面でもより良い物が必要となってきています。当社はこの認識の上、過去の取引先企業との経験に基づき、より現実的なご提案が可能となります」と語る。  同社の強みとして、営業担当者が現場で毎日顧客に足を運ぶことで得られているリアルなマーケット情報があげられることで、「カンボジアでは地続きのタイやベトナムに影響を受けるケースが多く、SNS等を通じて日本や韓国のカルチャーやトレンドの情報を取り入れつつ、実際の製品やサービスは価格的に手の届く隣国のものが流通しているというのが現状です」と語る。数年後の市場を見極め、対応していく力も必要となる。
  • 090 カンボジアの運輸・物流①(2015年10月発刊 ISSUE03より)
  • 089 カンボジアのマーケティング・メディア③から続き  内陸国であるカンボジでは、陸路、海路、空路、水路それぞれの運搬手配が可能となり、状況に応じた使い分けができる。海路であれば、まずはシハヌークビル港経由が主要ルートとして挙げられる。国内唯一の深海港で、日本の支援により整備され、カンボジア全体の物量の60%を扱う重要港でもある。河川港であるプノンペン港は、寄港可能な船舶サイズの制限はあるものの、メコン河を経由してベトナムのホーチミン港やカイメップ・チーバイ港への内陸水運航路として重要性を増している。  空路での主要港はプノンペン国際空港とシェムリアップ国際空港の2空港である。いずれの空港からも日本への直行便は就航されず、日本へはタイ、シンガポール、ベトナム、マレーシア、香港、台湾などでの乗り継ぎ便での手配となる。現状、フレイター(貨物専用輸送機)の定期就航も無いため、航空各社が各々のフライトで利用する機体によって、一般貨物の積載可能サイズが変わってくる。  陸路としては、タイ側からであれば、ポイペトかコッコン経由、ベトナム側からはバベット経由が現状での主要ルートとなるが、国道1号線のネアックルン橋の開通でプノンペンとホーチミンを結ぶ物量が増えると予想される。また、日本政府が南部経済回廊整備を支援しており、無償支給のネアックルン橋を始め、2020年までには国道5号線を改修し、全4車線化となる予定。  他に、プノンペン・ポイペト(タイ国境)を結ぶ北線、プノンペン・シハヌークビルを結ぶ南線を有する鉄道路線も存在するが、線路の整備状況から運航速度も極めて遅く、現状では一般貨物の輸送手段としての選択肢には入らないだろう。  日本政府はカンボジアの国土開発・隣国とのコネクティビティの一層の支援を強化するため、高速道路網の整備等の案件化や物流の活性化を通じた投資促進を支援する事を表明しているが、道路、港湾、空港、鉄道、それぞれの経路も含め、未だ発展途上であるため、利用環境に対するさらなる改善が待たれる。
  • 091 カンボジアの運輸・物流②(2015年10月発刊 ISSUE03より)
  • 090 カンボジアの運輸・物流①から続き  税関ではASYCUDAシステムなどを導入し、EDI化(電子データ交換)しているため、輸出入者はそのシステムを利用し輸出入申告を行う必要がある。しかし、データ入力できる端末に台数の限りがあり、しかもデータが手入力作業となるため、商品項目が増えると入力手続きだけでも莫大な時間を要するという大きな問題点を抱えている。そこで、2014年6月にカンボジア版AEO※5とも言われる BestTraders Initiative (BTI)が関税消費税総局により発足し、第一回認定者8社(そのうち日系企業は3社)に対する贈呈式が行われた。これにより、自社内に設置された専用端末での操作が可能になる。これは過去に日・カンボジア官民合同会議等の際、数次に渡り当制度の導入についての議題が取り上げられており、この会議による優良成果事例と言えよう。しかしながら具体的な手続きや承認条件等に不明瞭な点も多く、明確な情報開示が待たれる。
  • 092 カンボジアの運輸・物流③(2015年10月発刊 ISSUE03より)
  • 091 カンボジアの運輸・物流②から続き  陸路が重要輸送手段の一つとなっているのもカンボジアの特徴と言える。タイとベトナムという高人口な経済大国に挟まれた立地条件にあり、さらにチャイナプラスワンやタイプラスワンとしての進出も活発で、在タイ国内工場の第二工場をカンボジアに作り、タイから運んだ部品をカンボジアの安い賃金で組み立て、それをタイに戻して最終組み立てをして製品として輸出する動きも加速している。また、ベトナム国境近くにあるバベットの工業団地内で生産し、陸路2時間で行けるベトナムのホーチミンの港から輸出。ベトナムの工業団地とほぼ変わらない立地条件で、カンボジアの安い労働力を使い製造し、日本への輸送をする日系企業も増えてきている。鴻池運輸の高林氏は、「カンボジア単体としてはいまだポテンシャルの段階で、各企業がベトナムやタイの隣国と組み合わせて物流を考えているというのが興味深いです。ASEAN経済統合も控え、南部経済回廊を活用した物流は今後も益々加速していくと予想しています」と語る。道路自体の拡張工事も進められており、整備が進めばさらなる時間短縮も期待される。  ただし、一方で、ガソリンの店頭小売価格に原油価格の世界的下落が反映されておらず、物流コストにも関わってきている。政府及び関連省はこれまでも度々、石油各社へ小売価格の適正化を勧告してきたが、特に動きは見られず、政府の踏み込んだ対応が待たれる。
  • 093 カンボジアの運輸・物流④(2015年10月発刊 ISSUE03より)
  • 092 カンボジアの運輸・物流③から続き  物流会社を選ぶ時はその会社の実績と構成やカンボジアでの評判を調べるだけではなく、課税制度にどこまでコンプライアンスを守っているかも調査すべきである。これは物流会社に限った話ではないが、順守していない会社を選ぶと後々に問題となる場合もあり、注意が必要である。  2008年創業、主に米国発着の衣類や靴の輸出入を手掛けるトライアンフ・リンク・ロジスティクスのコウ・ペン氏は、「現在カンボジアは変化の真っただ中です。税金の支払いに関するコンプライアンスは、我社にとっても問題になってきています。競合する市場で、コンプライアンスを順守して、より高いコストを負う当社のような会社がある一方で、税金の支払いのコンプライアンスを順守しない一部の会社は、安価な価格設定を提示することができている。様々な課題がありますが、今後改善されることで市場の活性化につながるのではないかと思います」と語る。  個人商店や小規模企業等、まとまった物量を必要としない所は、輸入量も少ないが故に輸入業者がハンドキャリーやバス輸送等で持ち込み、関税を支払わずに輸入を行うケースも存在する。鴻池運輸の高林氏は、「私たちは日本でAEO認定通関業者ですので、コンプライアンスに関しては徹底的にやっており、関税云々をスルーするという輸送サービスは提供できません。ですから、ハンドキャリー等ができない大規模の物流量となる大型店舗の進出を待つか、既存の店舗の取扱量が相当規模まで大きくなるのを待つしかありません。または、少量の物流量でもコンプライアンスを守り正規輸入したいという企業とお付き合いをするということになります。」と語る。
  • 136 カンボジアの医療・医薬①(2016年5月発刊 ISSUE04より)
  • 135 カンボジアのホスピタリティ・ツーリズムの続き  日本人がより安心して生活できる医療環境が整いつつある。プノンペンを中心に日本人医師・歯科医師が診療にあたる医療機関が複数存在し、一般内科・小児科に限らず、耳鼻科・消化器外科・整形外科・脳外科など様々な専門科の日本人医師が診療を行なう。今夏にはサンライズジャパン病院も開設され、日本人医師による高度な手術を行なうことができるようになる。また、近年は家族でプノンペンに居住する日本人も増えているが、出産は日本で行い、カンボジアで小児科健診を行なうというケースも増えてきている。今後も新たな日系医療機関・薬局等の開設が計画されており、さらに日本人が安心できる環境が整っていくものと見られる。  一方でカンボジア全体の医療水準は、いまだ十分に教育されたカンボジア人の医師や看護師が少なく、黎明期にあるといえる。医療機関の衛生観念の欠如や正しい診断を行うための医療機器の不足など、さまざま課題を抱えている。カンボジアでは公認の医学部が少なく、これまで国家試験はなく医学部を卒業したら医師になることができたが、近年、やっと医師国家試験が一部導入された。日本と比べて圧倒的に専門医の数が少なく、日本と同じ手術を行うことができるカンボジア人医師はほとんどいない。  さらに、カンボジア初の日本人開業医であるケン・クリニックの奥澤健医師は、「カンボジア全体の医療界では、横の連携がほとんどないです。日本だったら医師会があって勉強会や学会がありますが、カンボジアには知識を共有するような場が整っていないようです」と語っている。外国に留学し、その国のスタンダードを学んだ医師もいるが、全体としては課題が多い状況だ。
  • 137 カンボジアの医療・医薬②(2016年5月発刊 ISSUE04より)
  • 136 カンボジアの医療・医薬①の続き  国内の主な私立・公立の病院で救急治療を受けられる所もあるが、質にはばらつきがある。2次又は3次救急では、国外に搬送されるケースが多い。タイには数多くの国際標準の病院があり、診断機器、専門医、集中治療室での治療が可能だ。カンボジアからバンコク、またはシンガポールなどの医療適格地へ搬送される場合は、高額な費用がかかるため(参考:専用機での搬送費、約2~4万ドル。入院費、手術費等別途)、海外旅行保険に加入しておくことを勧める。なお、今夏開設予定のサンライズジャパン病院によって、カンボジア国内で高度な救急治療を受けることができるようになる。
  • 138 カンボジアの医療・医薬③(2016年5月発刊 ISSUE04より)
  • 137 カンボジアの医療・医薬②の続き  カンボジアでは衛生環境への配慮が欠かせない。ローカルの飲食店や市場では適切な衛生処理が行われていない場合が多く、不衛生な飲食店を避ける、氷・水を飲むことを避けるなどの配慮が必要だ。また、野菜は煮沸するかよく洗い、寄生虫の卵などを口にしないよう注意も必要。さらに熱中症などにも注意が必要で、強い日差しに当たりすぎないことも大切だ。SICの荒木医師は、「特に男性にですが、中性脂肪や尿酸の異常に高い人が多く見られます。血管が硬くなったりつまりやすくなったり、痛風や糖尿病に繋がるため、毎日の食事の総カロリーや栄養素について、時々見直しをすることが大事です」と食事管理の必要性を述べている。また、少なくとも年に1回の健康診断によって健康状態を把握することも重要であり、レントゲン検査・エコー検査・各種血液検査等を行なう企業健診を提供しているクリニックも多い。
  • 139 カンボジアの医療・医薬④(2016年5月発刊 ISSUE04より)
  • 138 カンボジアの医療・医薬③の続き  自身も薬剤師である、透析治療専門クリニックのジャパンライフクリニックの青木渉氏は、「カンボジアの薬は欧米から入っているものが多く、体の大きな欧米人と同じ用量を処方されることが多いです。日本は厚生労働省の基準が厳しいので用量の制限が厳密に決められていますが、カンボジアではそれがありません」と述べている。SICの久保医師は、「当院では日本製の医薬品をなるべく取り揃えており、やむなく海外の薬を処方するときには、日本での内服量に準拠した処方を考えています」と語っている。 症状や体調により、適切な処方をしてくれる信頼できる医療機関選びをしたい。  また、SICは医療健康相談サービスや24時間救急支援サービス付きの置き薬サービスを開始した。かぜ薬、胃薬、漢方薬、解熱剤、整腸剤、体温計などを取り揃えており、在住日本人の健康面を支援している。置き薬の使用方法はSICのスタッフが説明し、料金は設置無償で使用した薬のみが清算対象となる。
  • 094 カンボジアの医療・医薬①(2015年10月発刊 ISSUE03より)
  • 093 カンボジアの運輸・物流④から続き  カンボジア全体の医療水準はいまだ十分に教育された医師や看護師が少なく、黎明期にあるといえる。医療機関の衛生観念の欠如や正しい診断を行うための医療機器の不足など、さまざま課題を抱えている。カンボジアでは公認の医学部が少なく、これまで国家試験はなく医学部を卒業したら医師になることができたが、近年、やっと医師国家試験が一部導入された。日本と比べて圧倒的に専門医の数が少なく、日本と同じ手術を行うことができる医師はほとんどいない。  さらに、カンボジア初の日本人開業医であるケン・クリニックの奥澤健医師は、「カンボジア全体の医療界では、横の連携がほとんどない。日本だったら医師会があって勉強会や学会があるが、カンボジアには知識を共有するような場が整っていないようです」と語っている。外国に留学し、その国のスタンダードを学んだ医師もいるが、全体としては課題が多い状況だ。
  • 095 カンボジアの医療・医薬②(2015年10月発刊 ISSUE03より)
  • 094 カンボジアの医療・医薬①から続き  国内の主な私立・公立の病院で救急治療を受けられる所もあるが、質にはばらつきがある。2、3次救急では、国外に搬送されるケースが多い。タイには数多くの国際標準の病院があり、診断機器、専門医、集中治療室での治療が可能。カンボジアからバンコク、またはシンガポールなどの医療適格地へ搬送される場合は、高額な費用がかかるため(参考:専用機での搬送費、約2~4万ドル。入院費、手術費等別途)、海外旅行保険に加入しておく必要がある。また、医療アシスタンスサービス(緊急搬送も含む)を提供している病院・企業とあらかじめ契約を結んでおくことも可能である。2015年8月には、24時間ホットライン・緊急駆け付けを軸としたサービスを提供する日系企業も現れている。
  • 096 カンボジアの医療・医薬③(2015年10月発刊 ISSUE03より)
  • 095 カンボジアの医療・医薬②から続き  カンボジアでは衛生環境への配慮が欠かせない。ローカルの飲食店や市場では適切な衛生処理が行われていない場合が多く、不衛生な飲食店を避ける、氷・水を飲むことを避けるなどの配慮が必要だ。また、野菜は煮沸するかよく洗い、寄生虫の卵などを口にしないよう注意も必要。さらに熱中症などにも注意が必要で、強い日差しに当たりすぎないことも大切だ。サンインターナショナルの荒木医師は、「特に男性にですが、中性脂肪や尿酸の異常に高い人が多く見られます。血管が硬くなったりつまりやすくなったり、痛風や糖尿病に繋がるため、毎日の食事の総カロリーや栄養素について、時々見直しをすることが大事です」と食事管理の必要性を述べている。また、少なくとも年に1回の健康診断によって健康状態を把握することも重要であり、レントゲン検査・エコー検査・各種血液検査等を行なう企業健診を提供しているクリニックも多い。一方、サンインターナショナルクリニックのようにアンチエージング治療に力を入れており、プラセンタ注射・高濃度ビタミン点滴・ニンニク注射などの治療を行なうことができる環境もカンボジアにて整ってきている。
  • 097 カンボジアの医療・医薬④(2015年10月発刊 ISSUE03より)
  • 096 カンボジアの医療・医薬③から続き  医薬品のほとんどを輸入に頼っているカンボジアでは、西洋諸国で流通している薬剤を使うことが多いため、処方を間違えば日本人の体には効果が強すぎることもある。サンインターナショナルクリニックの久保医師は、「当院では日本製の医薬品をなるべく取り揃えており、やむなく海外の薬を処方するときには、日本での内服量に準拠した処方を考えています」と語っている。 症状や体調により、適切な処方をしてくれる信頼できる医療機関選びをしたい。
  • 140 カンボジアの公的機関(2016年5月発刊 ISSUE04より)
  • 139 カンボジアの医療・医薬④の続き  2014年度末にカンボジアへの進出日系企業を追跡調査したところ70%がJETROを利用していることがわかりました。2014年度から設置している中小企業海外展開現地支援プラットフォームの活用実績は毎月20件以上で、最近では毎日のように問い合わせがあります。ご相談にはJETRO常駐の海外投資アドバイザーがまず対応しておりますが、必要に応じて以下の「プラットフォーム事業」を活用し、労務・法務/税務・会計/企業経営実務の専門分野のコーディネーターにご質問を繋ぐ形となります。  2015年8月、ジェトロがジャパンパビリオンを運営したカンボジア最大の総合機械展示会(CIMIF2015)に出品した測定工具を扱う企業様は、同展示会中、ジェトロのビジネスマッチング支援によりバイヤーとの商談を行い、カンボジアのローカル企業のニーズを実感。その後、市場性を確認するべく、プラットフォーム事業を活用し、測定機器制度調査を実施しました。その後、2015年10月および2016年2月、販路開拓のためカンボジアに再訪。コーディネーターによる商談同席支援により、技術系職業訓練校への販売と、代理店との契約をほぼ確定させるまで漕ぎつけました。現在も、契約上の留意点等に関するサポートを受けながら、商談を継続中です。
  • 098 カンボジアの公的機関(2015年10月発刊 ISSUE03より)
  • 097 カンボジアの医療・医薬④から続き  2014年度末にカンボジアへの進出日系企業を追跡調査したところ70%がJETROを利用していることがわかりました。2014年度から設置している中小企業海外展開現地支援プラットフォームの活用実績は毎月20件以上で、最近では毎日のように問い合わせがあります。ご相談にはJETRO常駐の海外投資アドバイザーがまず対応しておりますが、必要に応じて労務・法務/税務・会計/企業経営実務の専門分野のコーディネーターに繋ぐ形となります。  昨年プノンペン市内の収集したごみから肥料の製造販売をするビジネス展開を検討されている企業様からご相談を受け、当時プノンペン市内ではシントリー社の独占市場である当地特有の情報をコーディネーターから提供したことで、早い段階でビジネスモデルを転換されました。その後もコーディネーターによる最新情報と提案をもとにビジネスモデルの検証を繰り返し、ビジネスモデルを確立されて進出を決定し、今年5月に会社設立もされました。税務・会計分野のコーディネーターより自社ビジネスモデルに関わる税制の留意点の情報を提供し、会社運営のサポートを続けています。コーディネーターを組み合わせて活用した好事例の一つです。