カンボジアに進出する日系企業のための
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2015年7月12日
カンボジア進出ガイド

【法務・会計】

025 カンボジアの法務・税務・会計①(2015年4月発刊 ISSUE02より)

■ 法律の整備と運用 Legal developments & application of existing laws

 カンボジアの法律の多くは、実質的には外国人法律専門家の手によって作成されている。日本も1999年から継続して、政府開発援助(ODA)の一環である「技術協力」という形で、実際に裁判官・弁護士・司法書士などの日本人法律専門家を国際協力機構(JICA)を通じて派遣し、カンボジアの民法・民事訴訟法を始めとする民事関連法令の起草・成立の支援を行っている。先進国の支援もあって、法律そのものはしっかりと作られているわけだが、多くの現地専門家が口を揃えて語る諸問題の根源は、法律の整備状況よりもむしろその運用状況であった。しかし昨今、この運用状況に改善の兆しが見え始め、適正な課税プロセスを期すための税制改正が頻繁に行われている。

 日本国内最大規模の税理士法人のカンボジア法人である辻・本郷税理士法人の松崎勇人氏によると「昨年末から今年年初にかけて、いくつかの税法改正がありました。一つ目は、税務登録手続の変更です。税務登録にあたっては、代表者の租税総局窓口での指紋・顔写真の登録、カンボジアでの居住証明の提出を求められるようになりました。また、税務登録にあたっても求められる情報量も格段に増えています。さらに、この新制度導入にあたって、既存の企業も同様の形で、事実上の再登録が必要となっており、同様の手続きを行う必要があります。外資系企業では代表者が国外に居住しているケースが多いため、現在問題となっています。二つ目は、主に製造業、特に縫製業を念頭においた税法改正が2つあります。一つは給与税の課税最低限の125ドルから200ドルへの変更、もう一つは工場での住居・通勤手当や食事手当等の支給についてのフリンジベネフィット税免税です」と語った。

 改善されている税制の適用を推進する課税当局の現場も変わりつつあるようだ。辻・本郷税理士法人の松崎氏は「税務署の職員の意識も変わりつつあるように思います。申告書提出時のアンダーテーブルの要求も租税総局本部では大分少なくなっていますし、昨年初から税務調査官に対して、追徴課税額の10%を支給する等のインセンティブ制度も導入されているようです。また、租税総局は新システムを導入し、全ての地区税務署が共通のシステムを使用し、また納税者情報も一元的に管理がなされるように改善が進められています。今年末のASEAN経済共同体発足に向けて、関税撤廃に伴う代替財源の確保の点からも、税務当局は徴税体制を強化しています」と続けた。

■ 会計事務所 Accounting firms

 カンボジアには、KPMGやPWC等の国際的な会計事務所のほか、日系会計事務所等が存在し、税務申告、記帳代行、登記関係業務等のサービスを提供している。JETROプノンペンのコーディネーターを兼務するKPMGのマネージャー、田村陽一氏は「カンボジアでは源泉徴収税やフリンジベネフィット税、ミニマム税といった日本では一般的でない税金がかかります。信頼できる専門家のサポートがなければ、税金の仕組みを理解し税務リスクを十分に低減するのは簡単ではないでしょう」と述べている。会計事務所の中には、日本語スタッフが定期的に顧客を訪問し、記帳代行やトレーニングを行うといったきめ細かなサービスを用意しているところもある。

■ 税務について The Cambodian tax system

 特に多くの進出企業が直面するのは、法律と会計が交差する税務に関する諸問題だ。税法を運用する税務署の実態こそ根源とも言える。4大国際会計事務所の一つであるKPMGのシニアパートナー、マイケル・ゴードン氏は、「重要なのは、投資家はカンボジアがまだ発展途上にあると意識することです。全ての分野の手続きやシステムが十分には整備されておらず、税法の運用にも同じことが言えます。現在の税金の仕組みや税法は、1960年代から70年代に作られた初歩的な税法を基にしています。細かい定義や説明がない部分も多く、租税裁判所もない。租税に関する決め事は基本的に税務総局に決定権があるような状況です。この十年間、税務総局の法解釈に起因する問題は頻繁に起きています。日本のような先進国の投資環境は法令やルールがしっかりしていますが、カンボジアには一切ないと考えてほしい。ビジネス上のリスクをしっかりと把握し、適切に対処しながら投資をすることが重要です」と語った。

 一方、昨今の税制改正も含め税務当局の徴税体制の強化の兆しもあり、民間ビジネスは更にやりづらくなりはしないのか。 辻・本郷税理士法人の松崎氏によると、むしろ税制改正や体制強化にはメリットを生む可能性もあるという。同氏は、「税務登録手続の一部オンライン化は納税者側にもメリットがあり、また、商業省での法人登記手続にもオンライン化の計画があり、全体として、行政手続が効率化され、外資企業にとってビジネスがしやすい環境に変わりつつあると思います。税務署で管理する納税者情報がより増え、さらに情報が一元化される事によって、税務当局の徴税能力が向上し、不公平な課税による弊害も減少していくと思います。給与税課税最低限の変更、フリンジベネフィット税免税は、最低賃金の上昇に伴う企業の追加コストを和らげる効果があります」と語る。(026 カンボジアの法務・税務・会計②へ続く)


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