カンボジアに進出する日系企業のための
B2Bガイドブック WEB版

2015年11月9日
カンボジア進出ガイド

【運輸・物流】

092 カンボジアの運輸・物流③(2015年10月発刊 ISSUE03より)

期待される陸路輸送 Developments in overland transport

091 カンボジアの運輸・物流②から続き
 陸路が重要輸送手段の一つとなっているのもカンボジアの特徴と言える。タイとベトナムという高人口な経済大国に挟まれた立地条件にあり、さらにチャイナプラスワンやタイプラスワンとしての進出も活発で、在タイ国内工場の第二工場をカンボジアに作り、タイから運んだ部品をカンボジアの安い賃金で組み立て、それをタイに戻して最終組み立てをして製品として輸出する動きも加速している。また、ベトナム国境近くにあるバベットの工業団地内で生産し、陸路2時間で行けるベトナムのホーチミンの港から輸出。ベトナムの工業団地とほぼ変わらない立地条件で、カンボジアの安い労働力を使い製造し、日本への輸送をする日系企業も増えてきている。鴻池運輸の高林氏は、「カンボジア単体としてはいまだポテンシャルの段階で、各企業がベトナムやタイの隣国と組み合わせて物流を考えているというのが興味深いです。ASEAN経済統合も控え、南部経済回廊を活用した物流は今後も益々加速していくと予想しています」と語る。道路自体の拡張工事も進められており、整備が進めばさらなる時間短縮も期待される。

 ただし、一方で、ガソリンの店頭小売価格に原油価格の世界的下落が反映されておらず、物流コストにも関わってきている。政府及び関連省はこれまでも度々、石油各社へ小売価格の適正化を勧告してきたが、特に動きは見られず、政府の踏み込んだ対応が待たれる。

カンボジア特有のドライポート Specifics of Cambodian dry ports

 カンボジアのもう一つの大きな特徴としてドライポート※6 が挙げられる。「基本的にドライポートには、広大な土地、倉庫、税関機能があります。他の国であれば、どの土地にも倉庫を建てられますし、そこからの輸出が可能です。カンボジアでは輸出をするためには二つの手段しかありません。一つ目は関税手続きを工場で行うこと、もうひとつはドライポートで行うことです。カンボジアのドライポートは、輸出に関する一連の業務が可能な場所というような意味しかないんです。これがユニークなのは、5、6社のドライポート管理会社にその独占権があるという点です。つまり、すべての工場は製品を輸出するためには、どこかのドライポートを使うしかないんです。もちろん管理会社にとってはいいですが、競合を育てるという面ではよくない点ですよね」と、トーマスインターナショナルのトーマス氏は語る。工場側でドライポートを経由せずに直接輸出手配できるような環境になる日も待たれる。

国際宅配便 Internatonal courier service



 国際宅配便業者としては世界最大規模のDHLのチャナンヤラック・ビェッチャラット氏は、「ロジスティクスは国の経済成長の鏡です。ロジスティクスに注目するとその国の成長具合や事情がある程度理解できます。流通はネットワークと人材、そして改革がすべてだと感じます」と述べ、「カンボジア政府の活発な誘致と門戸の広い環境整備のおかげで企業に取って参入障壁が少ない国であり、製造業も増え、ロジスティクス分野はこれら経済事情、世界情勢と消費者意識の変化、そしてテクノロジーの発達により益々成長していくと思われます。更にASEAN経済統合により、カンボジアと周辺地域は益々魅力的な市場となり、この一帯への投資環境は益々活発になると予想されます」と続けた。カンボジア物流面、特に航空貨物取り扱いに関する諸事項の国際基準化にも一躍買っていることは想像に難くないが、今後の改善サポートにも期待を持ちたい。
093 カンボジアの運輸・物流④へ続く


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