カンボジアに進出する日系企業のための
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2015年7月12日
カンボジア進出ガイド

【建築・内装】

036 カンボジアの建築・内装②(2015年4月発刊 ISSUE02より)

■ 労働者 Construction workers

(035 カンボジアの建築・内装①からの続き)
 建設業で労働力が不足している理由として、カンボジア国内の建設ラッシュと、より高い賃金を求め非熟練労働者がタイなどに流出していることが挙げられる。熟練労働者はタイで経験を積んだ者が多く、カンボジアで働けば非熟練労働者の2.5倍程度の賃金で働くことできる。

 C&P誌によると、労働者不足から賃金が毎年20%上昇しており、熟練労働者が1日4万リエル、スキルのない労働者でも日給平均1万6千リエルを支払っているとOCICのプロジェクトマネージャーは話し、また、イオンモールを建設した韓国企業のシニアエンジニアは、労働力不足からエンジニアや熟練労働者を中国人やベトナム人に頼っていると話している。

 Vトラストのクイ・ヴァット氏は「国内でスキルを身に付けることができれば国内で高い賃金を望めるようになるので、国外へ労働者が逃げるというのも減るのではないかと思います。賃金上昇も必要ですが、まずはスキルアップが必要ではないでしょうか」と語る。

 電気技師、配管工や溶接工などの職種をカンボジアで採ることは非常に困難であり、また多くの場合は想定より技術レベルが低く、英語での円滑な意思疎通が困難である場合が多い。熟練労働者は圧倒的に不足しており、品質や仕上げに関しては許容できるレベルにはほど遠く、一定の品質を求める場合は時間と資金を用意しなければならない。

内装 Interior

■ 気候風土を理解した取り組み Understanding the impact of climatic differences

 ボンケンコンエリアを中心に、外国人やカンボジア人富裕層をターゲットにした飲食店がプノンペン市内に点在する。現在は店舗の内装スタイルが多様化し始め、経済発展と共にカンボジア人の感覚も表面的には変化がみられる。建築デザイン・プロデュースをするココチカムデザインの河内利成氏は「お金をかければ良いものができるのは当たり前ですが、回収年数を考えると何でもかんでもお金をかけるわけにはいきません。全てにお金をかけ過ぎる傾向があるために、かえって敷居を高くさせてカンボジア人が入りづらいという悪循環を起こしている場合があります」と、ターゲットに合わせたメリハリの必要性を語った。

 また、設計や工法においても現地を理解した考え方が重要になる。「重工業が発展していないカンボジアでは、そもそもスチールが無いので外国から仕入れないと使えません。それだけでかなり高くつきます。建材はほとんどありません。そういった認識や、建材の選択のさじ加減が大事です。中国と同じように安く建てられるだろうという甘い考えを持った方が多い。大部分の発注者はこのような理由から、実際の費用よりも安く予算を見積りますし、また、その額で請け負ってしまう工事会社もあります。しかし、そのような工事業者は途中から資金の不足分を次々と請求しますので、対応の判断を場当たり的に求められ、結果的に高くなることもあります。余裕のある予算のなかで計画的に工事する場合と比較したら、ボロボロの状態で工事が進捗していくわけです」と、ココチカムデザインの河内氏は続けた。いずれにしても進出には十分な準備や調査が重要だ。

■ 工期 Project deadlines

 企業が遭遇するもう一つの問題としては、カンボジア人の工期に対する姿勢における文化的衝突がある。1年に27日もの祝祭日があり突発的な理由で更に増えることもあるほか、連休には帰郷したがる者が多いカンボジア人にとって、残業や休日出勤にネガティブなイメージを持っている事実は否めない。「残業代を出しても残業してくれません。工程表を見せてスケジュールが遅れていることを説明してもダメです。残業代を貰うより、早く帰ることを選択する労働者が多い。これはお国柄のようです。私の知る限り、10年以上前から言われている話です」と海外起業歴17年のASEAN GATEの石原一彦氏は語るが、カンボジアで工期が遅れる原因の一つであろう。

 10年以上の実績を持つ内装会社、イエローツリーインテリアのバーニー・ダーキン氏も「工期に関しては、ほとんどの場合遅れるとみておいた方がいいでしょう。日本人ほど時間に対する考え方は重要ではないのです。文化的な問題ですから、発注する側がある程度寛容に構えるくらいがいい」と、アドバイスしている。そのような現状に対して、Gホールディングスのビアンカ・モイス氏は「工期は私たちにとってもお客様にとっても厳守しなければならないもので、この国の文化には私たちも頭を悩ませています。品質を保ったうえで完成させることは挑戦でもあり、私たちのような経験のあるマネジメントチームが必要とされる理由でもあります」と語る。



 現場管理の重要性について、店舗やオフィスの内装の実績が豊富な S.I.C.S.デベロップメントの洪 哲秀氏は、「工期を遵守するにはマネジメント能力も試されます。現地の労働者に対して、現場責任者がどのように接して仕事を効率よく進めていくかで状況は改善されていきます。この国の発展に貢献するためにも、より高い意識を持って日々努力することが大切です」と述べている。

 また、現場での教訓として、「これは内装に限った話ではありませんが、スタッフ一同がカスタマーファーストの意識を共有できるよう、私たち外国人が率先して実行することが大切です。与えられた予算と時間内で顧客満足度の高い内装を仕上げることは、仕事に関わる多くの人たちに自信と喜びを与えます」と、現地での取り組み方について語った。


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