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2014年11月22日
カンボジア進出ガイド

【運輸・物流】

019 カンボジアの運輸・物流①(2014年9月発刊 ISSUE01より)

陸海空

 内陸国であるカンボジアでは、陸路、海路、空路、水路それぞれの運搬手配が可能となり、状況に応じた使い分けができる。
 海路であれば、まずはシハヌークビル港経由が主要ルートとして挙げられる。国内唯一の深海港で、日本の支援により整備され、カンボジア全体の物量の60%を扱う重要港でもある。河川港であるプノンペン港は、5mの水深や川幅等の関係で寄港可能な船舶サイズの制限はあるものの、メコン河を経由してベトナムのホーチミン港やカイメップ・チーバイ港への内陸水運航路として重要性を増している。

 空路での主要港はプノンペン国際空港とシェムリアップ国際空港の2空港である。この他に八つの地方空港があるが、シハヌークビル空港以外の地方空港は整備状況からも実用的ではない。長年期待されていた日本とカンボジア間の直行便について、アジア・アトランティック・エアウェイズの成田・カンボジア2路線の定期就航は延期決定となったが、ミャンマー国際航空が関西・プノンペン・ヤンゴン線に就航すると発表。週3便の運行で復路はヤンゴン経由となり、まずはプログラムチャーター便で12月まで就航されるとの事なので、一般貨物の受け入れをする可能性は低い。その場合、航空貨物についてはいずれの空港からも日本への直行便は就航されず、日本へはタイ、シンガポール、ベトナム、マレーシア、香港、台湾などでの乗り継ぎ便での手配となる。現状、フレイター(貨物専用輸送機)の定期就航も無いため、航空各社が各々のフライトで利用する機体によって、一般貨物の積載可能サイズが変わってくる。

 陸路としては、タイ側からであれば、ポイペトかコッコン経由、ベトナム側からはバベット経由が主要ルートとなる。鉄道路線では、プノンペン・ポイペト(タイ国境)を結ぶ北線、プノンペン・シハヌークビルを結ぶ南線が存在する。内戦後、荒廃した線路等の復旧作業が行われ、一部区間が運行可能となった。しかし、実際に利用可能な付随施設もまだ十分では無く、線路の整備状況から運航速度が極めて遅く、現状では一般貨物の輸送手段としての選択肢には入らないだろう。近隣諸国からの陸路輸送経路として南部経済回廊の開発が期待されるものの、発展途上であるため、道路、港湾、空港、鉄道、それぞれの経路も含め、利用環境に対するさらなる改善が待たれる。

特恵関税制度

 カンボジアは後発開発途上国として輸出に対する特恵を与えられている。GSP(特恵関税制度)※1 もその一つで、ドライポート内に検品所を持つ大森&トーマス・ロジスティックサービスの菊谷周平氏は、「日本で製品を輸入する際に特恵関税率を使用し、多くの商品を免税で輸入できる事が、カンボジアが注目されている理由の一つです。関税、人件費などを含め、トータルコストを見たときに、近隣諸国と比較してコストメリットが出るという考えの下で各社が進出してきています」と語る。

関税とカムコントロール

 カンボジア独自の制度として、輸出入手続きに関税とは別にカムコントロール※2 に貨物検査料を支払い、手続きをする必要がある。物流業界で30年の経験を持つトーマスインターナショナル・サービスのクリストファー・トーマス氏は「関税は財務省が管理している一方で、カムコントロールは商業省が管理しています。このような二重の管理があらゆるものに適応されている事でコストもかさみます。これがカンボジアの一番の特徴です。カンボジアの市場では、近い将来のうちに税関事務所による輸出関税の一括取り扱いを期待する声が高まっています」と語る。海外24拠点を持つ鴻池運輸プノンペン駐在員事務所の高林洋平氏も「二重行政になっている税関とカムコントロールが一番の問題です。通関料にも関わってくるため、トータルの物流コストを高める大きな要因となっています」と述べる。

 この問題は日・カンボジア官民合同会議※3 でも去年より継続的に取り上げられてげられている。商業省担当官の公式説明では、輸出は繊維製品、輸入は特定品目のみがカムコントロールの貨物検査の対象となり、ASYCUDAシステム※4 によってハイリスクと評価された物についてのみコントロールを行うとの事。しかし、実際には輸出入される全貨物に対し検査料がかかっているのが現状である。この背景には、管轄省庁が異なる事による利権問題も絡み、簡単には改善されそうもない問題ではある。総合的に見るとカンボジア側のデメリットどころか新規ビジネスの参入障害にもなり得るため、早急なカンボジア政府の対応に期待したい。


※1 一般特恵関税制度(GSP: Generalized System of Preferences): 開発途上国・地域を原産地とする一定の農水産品、鉱工業産品に対し、一般の関税率よりも低い税率(特恵税率)を適用、あるいは無税(Free)にすることによって、開発途上国・地域の輸出所得の増大、工業化の促進と経済発展を支援するという先進国による国際的途上国支援制度。
※2 カムコントロール(CAMCONTROL): 商業省傘下の輸出入貨物検査機関。貨物検査は税関とカムコントロールが個別に行う。
※3 日・カンボジア官民合同会議: 在カンボジア日本国大使館とカンボジア日本人商工会の会員企業が共同でカンボジア政府に対し、投資環境改善提案を行う官民合同会議。日本からカンボジアへの投資促進を話し合う場として 2009年より定期的に開催されている。
※4 ASYCUDAシステム: Automated SYstem for CUstoms DAtaの略で、UNCTAD(国連貿易開発会議)が開発した電子税関システム。


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