カンボジアに進出する日系企業のための
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2016年6月13日
カンボジア進出ガイド

【マーケティング・メディア】

127 カンボジアのマーケティング・メディア①(2016年5月発刊 ISSUE04より)

マーケットリサーチ Market Research

126 カンボジアの教育&学習支援の続き
 これから投入しようとするサービスや商品に需要があるか、タイミングは最適か、パートナーは見つかるのかなど、マーケット調査のポイントはいくつか挙げられる。

 マーケット調査の老舗、インドチャイナリサーチのマネージングダイレクター、カール・リモイ氏は、「ここ 10年近くカンボジアの経済は年間6~7%の水準で成長を続けており、世界的に見てもかなりの発展スピードと言えます。世帯収入の増加、さらに中流階級が発達してきている。ここ数年は国際的な大手企業の参入も増えており、投入しようとするサービスのレベルも大きなポイントです。かなりのポテンシャルがあると思いますが、独特のマーケットの理解を深めることが重要になってきます。急激な成長により消費者の考え方も変化しているので、最新のカンボジア事情を把握していることが成功のカギとなるでしょう」と語った。



 また、20年以上リサーチの経験を有するBMRSのポウン・ヴッティ氏は、「例えば、レストランはただ食事ができるところから、清潔で質の高いサービスが求められるようになってきました。これは諸外国の影響が強いと思われます。今後、顧客の力が強くなるでしょう。 消費量が増え、求めるレベルが高くなり、ただものを販売するだけの時代は終わります。消費者にはたくさんの選択肢があります。フェイスブックやインターネットでの口コミで会社が潰れる可能性すらあるのです」と、今後の消費者動向について語った。

ウェブメディアとバイラルマーケティング Online Media and Virales Marketing

 インターネットの普及率は、タイ35%、ベトナム48%と比較してカンボジアは9%と低いが(ITU 2014年)、プノンペンの若者に限れば、PCやスマートフォンの所有率は高い。

 また、注意点としては、カンボジアを語る時に、それがカンボジア全体のことなのか、首都プノンペンのことなのかはっきりさせることで ある。例えば、2015年のフェイスブックユーザーは、280万人である が、その 80%にあたる225万人が首都プノンペンに集中している。この場合、ソーシャルメディアを使ったマーケティングはプノンペンでは効果を発揮するが、地方や農村部などでは別の手法が必要になってくる。



 一日1万超のアクセスがあるオンラインニュース、「トメイトメイ・ ドットコム」のキー・ソクリム氏は、最近のメディアを取り巻く環境について、「一年前、新聞を読んでいた人達多くはオンラインニュー スを読み始めました。しっかりした教育を受けている人達も新聞ではなくオンラインニュースに移ってきています。また、収入が低い人達・ 田舎に住んでいる人達はテレビ・ラジオから情報を得ていますが、 お金が無くてもスマートフォンを購入し始めました。彼らはオンラインニュースのことを知らなくともフェイスブックは見ます。つまりフェイス ブックからオンラインニュースにアクセスすることができるので、自然に視界に入ってきているという状態です」と語った。

 カンボジアのフェイスブック利用者は前述したように、2015年時点で280万人で、プノンペンは225万人。カンダール、バッタンバン、コンポンチャムがそれに続く。

 フェイスブックの調べによれば、カンボジアで27%がiOSデバイス (iPhone、iPod、iPad)から、57%がAndroidスマートフォンからのアクセス。PCからのアクセスはわずか8%にとどまる。



 一日65万ページビューを獲得するクラシファイドサイト「クメール 24」のティ・ラディ氏はフェイスブックの人気について、「情報の集めやすさ、発信のしやすさがその大きな理由だと思います」と述べ ている。

 カンボジアは与野党の二大政党であり、新聞やラジオなどのメディ アはどちらかに偏った報道がされている。トメイトメイ・ドットコムのキー氏は、「カンボジアでは政治的な立場にある報道機関はとても 多いのです。いくらでもあります。政府に対して肯定的なもの、否定的なものなど、何らかのポジションをとるメディアがほとんどです」と、カンボジアのメディアの現状について語っている。 そのような状況の中、フェイスブックがカンボジアに浸透した理由と して、クメール24のティ氏は、「カンボジアの人々は政治的に偏った情報は要らないと考えています。フェイスブックではリアルな情報収集が可能です。若者たちはフェイスブックなどのSNSを使って、リアルな情報交換を行っているのです」と述べている。

 

 カンボジアでも多くの企業が、広告・宣伝活動にフェイスブックマーケティングを取り入れている。そして、これもカンボジアの特徴であるが、いいね ! も比較的簡単につきやすい。しかしフェイスブックが万能かといえば、そういう訳でもない。例えば、「携帯電話の情報を 扱っている有名なフェイスブックページは3万いいね! を獲得しています。一方で私の教え子が作った同じようなウェブサイトは10万いいね! を獲得しました。ですから、一概にいいね! の数で効果があるとは言えないと思います」とクメール24のティ氏

 ある程度の認知には効果的ではあるが、他のマーケティング手段、メディアを併用して相乗効果を狙うことが必要のようだ。実際に、フェイスブックで自社サービスの宣伝をしても、そのまま購買や来店につながることは簡単ではない。



 「クーポンキング」を運営しているスタンディングオンザブリッジ代表の清野裕司氏は、「日本で言うところのブロガーのように、フェイスブックで有名なフェイスブックスターという存在が多くいます。彼らの投稿は、プノンペンの若者に多く指示され、一投稿で数千いいね!がつくことは珍しくありません。彼らのような存在にアピールしてもらうのもコストパフォーマンスの高いひとつの方法です」と語った。

 まだまだプロモーション告知の意味ではフェイスブックの一強状態ではあるが、プノンペンの若者を中心に、ライン、スカイプ、バイバー、タンゴなど他のソーシャルメディアの利用が増えてきているので、フェイスブックだけでなく、複数のソーシャルメディアを使い分ける必要性がだんだん強くなってくるだろ う。

 ウェブ広告に関しては、「近年ではとても一般的になってきていま す。これは新しいものが好きというカンボジアの国民性と関係があります。インターネットを使うことは新しい世代の象徴なんです。ネットサーフィンをしてウェブ広告を見ることは、新しい考え方で魅力的なものです。ウェブ広告を出している会社に対しては、先進的な印象を持ちますね」と クメール24のティ氏は言う。

 認知度の高いサイトはクメール24やDAPニュースの他に、ニュースサイトの「クメールロード」、また新聞のウェブサイト版である「ポストクメール」「カッサンテピアップ」や「スマイルカンボジア」、エンターテイメント情報を発信している「サバイ」などがある。これらのウェブサイトで特徴的なのが、好まれる話題やフェイスブックでシェアされるも のに事故などの映像が多いということである。その理由は、「多くの人々は文字から情報を得るということに慣れていません。一方で、事故の映像や画像はとても分かりやすく彼らの感情に響きます。嬉しいとか悲しいとか、そういった感情が視覚的に認識できるので、とても分かりやすいんです。カンボジアでは、多くの人がまだ字を読めませんし、読めたとしても意味を理解するのはより難しいことです」とは トメイトメイ・ドットコムのキー氏

 また、2015年に速報性の高いニュースサイト「FreshNews」をスタートさせたDAPメディアセンターのソイ・ソピーア氏は、「今まではニュースの配信スピードが遅かったのですが、最近では、いろんなメディアが ITテクノロジーを駆使し、競争しています。ニュースが早いほど、新鮮な情報を伝えられ、メディア自身が頑張っていけます。 今のカンボジアのメディアマーケットは、ニュースがパワーを持っているのです。最近では、ニュースがメインの番組構成になっている新しいチャンネルやコンテンツが増えています」と語った。マーケティングにおいても、動画やインパクトのある絵、そして、分かりやすい内容で打ち出していくことが一つの手法となる。

テレビ Television

 スマートフォンの普及によって、以前と比較すると2~3割は視聴者が減少しているが、テレビこそカンボジア人に広く訴求できる最大のメディアであることは間違いない。国内に実に18チャンネルものテレビ局がしのぎを削っている。「ほぼ全ての層、文字を読めない人々にまでアプローチをすることが可能なメディアです。人気のあるテレビ局は、ホンミー、CTN、バイヨンTVなどが挙げられます」と、DAP メディアセンターのマネージングダイレクター、ソイ・ソピアップ氏。他にも情報省管轄の国営放送であるTVKや国軍保有のTV5などがある。TVKは国土の60%をカバーしており、2015年からの デジタル放送開始を表明している。クメール24のティ氏も、「化粧品など女性向けに広く告知したい場合に最適です。カンボジアの女性は日中家にいることが多く、テレビを観ることが好きな傾向にあるからです」と語っている。テレビCMというと一般的に広告費が高いイメージがあるが、カンボジアの場合は、日本のそれと比べると、10分の1程度の予算でできる。



 また、イベントなどでテレビ局にお金を払って取材してもらうということも、その是否は置いておいても、安価にできる。ただ、これも近年は徐々に正常化してきていて、国際基準に追いつきつつある。お金を介在せずに、取材と情報提供のバーターなどが成り立ちつつある。こいうったことも、近年のソーシャルメディア出現の影響だと思われるが、古くからある企業は新しいメディアに手を出さずに従来の新聞やテレビにお金をかける傾向にある。人気番組とスポンサーに関して、カンボジアで最も有名なテレビ局のひとつであるCTNのニュースダイレクターのナオ・ソポー氏は、「人気番組はニュースとエンターテイメント、例えばタイのドラマや週末のコンサート、ボクシングなどです。主なスポンサーは、家電メーカー、通信会社、飲料メーカー、化粧品、自動車ディーラーなどです」と語った。
128 カンボジアのマーケティング・メディア②へ続く


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