カンボジアは6月30日、タイとの全ての国境貿易を即時停止した。これは、プノンペン時間でわずか30分前に、フン・マネット首相がタイ当局から寄せられた「一部国境検問所のみ再開を求める書簡」に回答した直後の措置である。
カンボジア移民総局(GDI)は声明で「全ての国際検問所およびその他の越境検問所において、あらゆる品目の輸出入および通過を禁止する」と発表した。この措置は首相の指示に基づき厳格に実施され、タイ政府が6月7日以前の全検問所再開を約束するまで継続される。
フン・マネット首相はSNSで、カンボジア側の立場を4点に整理した。第一に、カンボジアは生活への影響を理解し、モムベイ紛争以降も一方的閉鎖は控えてきたと述べた。第二に、今回の閉鎖はタイ軍が6月7日から段階的に実施し、6月24日に全面閉鎖を決めたものであり、カンボジア発ではないと強調した。第三に、タイ政府内の首脳と軍の立場の食い違いが一貫した解決策を妨げてきたと指摘した。第四に、タイが6月7日以前の状態に戻し、一方的行動を繰り返さない保証を明示すれば、カンボジアも即座に貿易を再開すると表明した。
「要するに、国境再開の鍵はタイ側にあり、カンボジアに要請する必要はない」と首相は述べた。さらに「タイ当局が権限をもって国境を開き、恣意的な閉鎖を行わないと保証すれば、全て正常に戻る」と語った。
経済学者のドゥッチ・ダリン氏は「タイが先に国境を6月7日以前に戻すことが最も建設的な一歩であり、双方の経済利益の安定に資する」と述べた。また「最初に閉鎖を決めたのがタイである以上、再開もタイが主導するのが合理的だ」と指摘した。
なお、今回の全面貿易停止措置について、専門家の間では経済的影響の大きさが注目されている。タイとカンボジアは地理的に密接な貿易関係にあるが、GDP規模や代替調達能力に大きな差がある。タイのGDPは約5,000億ドルを超え、対カンボジア貿易は全体のごく一部にとどまる一方、カンボジアはGDP約300億ドルと規模が小さく、燃料・食品などをタイから多く輸入していることから、短期的な影響はカンボジア側がより大きいとの見方が強い。特に輸送コストや供給網切替による価格上昇が懸念されている。ただし、タイ側も国境地帯の零細事業者や農産物輸出業者への打撃は避けられず、双方にとって損失を伴う応酬である点は共通している。