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2017年1月4日
カンボジア進出ガイド

【マーケティング・メディア】

160 カンボジアのマーケティング・メディア①(2016年11月発刊 ISSUE05より)

テレビ Television

 カンボジアのメディアはテレビが1位である。インターネットはその急速な成長でラジオを抜いて2位になっている。特に都市部ではそれが顕著である。それに次ぐ新聞、雑誌といった紙メディアのほとんども都市部で消費されている。これは物流コストが地方のマーケットサイズに合わないためだと考えられる。このように都市部ではメディアの選択肢が増えているが、地方では限られたコミュニケーション手段しかないのが現状である。



 実に96%のカンボジア人がテレビを視ている。18チャンネルあり、そのうち9チャンネルの視聴者が91%を占めている。1社で複数チャンネルを持っており、4社の寡占状態となっている。



 5つのテレビ局を持つ最大手テレビ会社CBSのゼネラルマネージャー補佐であり、CTN、CNCニュースダイレクターのフイ・ワナック氏は、「テレビを通じての理解度が90%に対し、新聞など他のメディアのそれは50%程度です。テレビが一番のメディアの理由はそこにあります」とテレビの優位性を語り、「視聴率の調査会社は二社あり、テレビ局はそこから毎月データを購入しています。それによって広告料金がかわります」と、視聴率の信憑性についても言及した。

 また、イベントなどでテレビ局にお金を払って取材してもらうということも、その是否は置いておいても、安価にできる。ただ、これも近年は徐々に正常化してきていて、国際基準に追いつきつつある。お金を介在せずに、取材と情報提供のバーターなどが成り立ちつつある。こういったことも、近年のソーシャルメディア出現の影響だと思われるが、古くからある企業は新しいメディアに手を出さずに従来の新聞やテレビにお金をかける傾向にある。

ウェブメディアとバイラルマーケティング Online Media and Virales Marketing

 テレビの次に多く認知されているのがインターネットであり、国民の32%がユーザーである。ただし、テレビと違い、都市部と地方では格差がある。都市部の45%に対し、地方では28%にとどまる。一日複数回ネットにつなぐという層も都市部では59%にのぼる。



 端末で一番多いのがモバイルからである(スマートフォン、ガラケー含む)47%。デスクトップ、ノートパソコンが45%で、タブレットは8%にとどまる。プノンペンで電話を保持する人の半分がスマホである。

 一番多くみられているサイトはフェイスブック、ユーチューブ、グーグルカンボジア、グーグルであるが、上位4位以下10位すべてニュースサイトが占めている。



 ラジオ、インターネットニュースなど幅広い事業を行っているDAPメディアセンターのソイ・ソピーア氏は、「弊社は2つウェブサイトを持っており、若年層や、教育を受けた人々にフォーカスしています。教育を受けていない人々はオンラインでウェブサイトを検索できませんから。1つ目のDAPウェブサイトは、一般の人々や政治イシューに興味のある読者をターゲットとしています。2つ目のルッキング・トゥデイは、社会ニュースや科学、エンタメ、技術、国際ニュースを読む若年層をターゲットにしています。中でも、セレブニュースや技術に関するニュースが人気です。」とターゲット像を明確にした。2つ合わせた閲覧数は一日20万人に上るという。

フェイスブック Facebook

 フェイスブック調べによると、フェイスブックはネットユーザーの68%が利用している。いわゆるガラケーからも一部の機能は使えるので、男女比は6対4。最も多いユーザー層は18歳から24歳である。

 一日65万ページビューを獲得するクラシファイドサイト「クメール24」ゼネラルマネジャーのティ・ラディ氏はフェイスブックの人気について、「情報の集めやすさ、発信のしやすさがその大きな理由だと思います」と述べ ている。



 カンボジアは与野党の二大政党であり、新聞やラジオなどのメディアはどちらかに偏った報道がされている。「トメイトメイ・ ドットコム」のキー・ソクリム氏は、「カンボジアでは政治的な立場にある報道機関はとても多いのです。政府に対して肯定的なもの、否定的なものなど、何らかのポジションをとるメディアがほとんどです」と、カンボジアのメディアの現状について語っている。そのような状況の中、フェイスブックがカンボジアに浸透した理由として、クメール24のティ氏は、「カンボジアの人々は政治的に偏った情報は要らないと考えています。フェイスブックではリアルな情報収集が可能です。若者たちはフェイスブックなどのSNSを使って、リアルな情報交換を行っているのです」と述べている。



 カンボジアでも多くの企業が、広告・宣伝活動にフェイスブックマーケティングを取り入れている。そして、これもカンボジアの特徴であるが、いいね ! も比較的簡単につきやすい。しかしフェイスブックが万能かといえば、そういう訳でもない。例えば、「携帯電話の情報を扱っている有名なフェイスブックページは3万いいね! を獲得しています。一方で私の教え子が作った同じようなウェブサイトは10万いいね! を獲得しました。ですから、一概にいいね! の数で効果があるとは言えないと思います」とクメール24のティ氏

 ある程度の認知には効果的ではあるが、他のマーケティング手段、メディアを併用して相乗効果を狙うことが必要のようだ。実際に、フェイスブックで自社サービスの宣伝をしても、そのまま購買や来店につながることは簡単ではない。

 「クーポンキング」を運営しているスタンディングオンザブリッジ代表の清野裕司氏は、「日本で言うところのブロガーのように、フェイスブックで有名なフェイスブックスターという存在が多くいます。彼らの投稿は、プノンペンの若者に多く指示され、一投稿で数千いいね!がつくことは珍しくありません。彼らのような存在にアピールしてもらうのもコストパフォーマンスの高いひとつの方法です」と語った。

 ままだまだプロモーション告知の意味ではフェイスブックの一強状態ではあるが、プノンペンの若者を中心に、ライン、スカイプ、バイバー、インスタグラム、ツィッターなど他のソーシャルメディアの利用が増えてきているので、フェイスブックだけでなく、複数のソーシャルメディアを使い分ける必要性がだんだん強くなってくるだろう。



 オンラインショッピングサイトの先駆者であるリトルファッションのイン・ビチェット氏は、「我々の顧客は、フェイスブックからウェブサイトへ流れてくるのはもちろん、検索エンジンから来る人も増えました。また店舗に来た方が、次回からはウェブサイトから購入されたりと、入口の幅は広がりました」と分析した。また、インスタグラムにも力を入れています。これはブランディングの意味が強いです」とフェイスブック以外への広がりを示唆した。


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