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2017年12月8日
カンボジア進出ガイド

【建築・内装】

209 カンボジアの建設・内装①(2017年11月発刊 ISSUE07より)

建設業界 The construction industry

 国土整備・都市化・建設省のデータによると、2017年上期の建設プロジェクトは1523件、720万平方メートル、投資承認額が総額で49億ドルと昨年同期比で27%上昇した。経済財政省は、過剰供給と需要下落が原因により、建設部門の成長率が2017年には減速すると予測しており、現状はこれに反した様子を見せている。



 イオンモール2号店やシェムリアップの大型ショッピングモールの建設を手がけるSOMAコンストラクション&ディベロップメント(以下、SOMA)のチア・チャンダラ氏は、東京工科大学で博士号を取得している。今の建設業界の業況についてチア氏は、「家や建物でいうと、物件の品質管理や、自社で賃貸を行うなどのビジネス需要はすでに増えてきています。住宅は供給過多で需要が下がると言われていますが、低所得者~中所得者層向けの住宅需要は伸びており、成長は期待できるでしょう。一方インフラ面でいうと、カンボジアはまだ開発途中であり、道路や橋、エネルギー供給の需要は高く、引き続き成長しています。政治的にも安定し、政府による税金の優遇措置もあるため、投資家はますます増えるでしょう。引き続き成長は続くと思います。高い建物や高級物件のみ成長が鈍化するくらいで、その他の産業は引き続き伸びると思います」と語る。



 建設会社、サプライヤー、不動産会社など60社以上が加入するカンボジア建設協会(CCA)が支援する建築業界専門誌、コンストラクション&プロパティ(C&P)のミース・プロックサー氏は、「前年と比較して、建設市場がやや減速しているように思います。2016年に多くのプロジェクトがローンチしたわけではありませんが、ほとんどの開発が2015年以降に開始され、2018年以降、すなわち2018年の国民選挙後の完了を目指している可能性が高いです。総選挙後には、政治的・経済的安定が正常化し、不動産市場が再び盛り上がるのではないでしょうか」と話す。

需要と供給 Supply and demand

 2017年2月、カンボジアの不動産プロジェクト、オリンピアシティが計画を縮小するとデベロッパーが発表した。複合施設内の最も高い建物が、当初予定されていた65階建てから45階建てに、別の45階建ての建物も38階建てになるという。オリンピアシティは、カナディア財閥系の不動産開発会社OCIC社によって開発されている巨大複合プロジェクトで2020年完成予定だ。

 C&Pのミース氏は、「過去数年間、ハイエンドクラスの開発が多く、そのため過剰供給が発生し、十分な買い手がいません。そのため現在、デベロッパーは開発物件をローエンドクラスや、買い手を引き付けることができるコンセプトに変更しています。もし安価で素晴らしい開発コンセプトであれば、顧客は十分に確保できます。 カンボジア市場は依然として強い購買力がありますが、立地が良い、デザインが良い、手頃な価格、ビジネスや投資において魅力的等、買い手を惹き付ける物件は少ないです」と語る。

 CBREのレポートによると、コンドミニアムの供給は2015年にかけて22.4%増加したが、2018年には実に794%増の1万9018戸が追加されることから、2018年末までに合計すると2万1414戸となる見込みだ。カンボジア国内で売上がトップクラスの建設会社スタンダードコンストラクション&エンジニアリング(SCE)のマネージングダイレクター、エン・スロン氏は、「カンボジアにとって、海外の投資家抜きでの建設業界の成長は難しいでしょう。地元の人はお金を持っていませんから。そのため政府の政策や指針として、投資家の誘致が必要です。どうすれば投資家の方々がカンボジアに投資をしてくれるのか、これを考えないと建設業界は生き残れないでしょう」と語る。

 不動産会社Vトラストが2017年3月に発表したレポートによると、昨年発売されたボレイの3分の1(約3万3500戸)の完成ユニットが売れ残るなかで、さらに2万8000戸のユニットが年末までに完成する予定だ。不動産市場では、クラスター型の戸建住宅(個別の独立した住宅のゲート付き共同体)の建設が精力的に進められており、こうした住宅は2016年末までに合計で10万278戸が建設され、そのうち69%が完成し、67%が売却された。

 競争に勝つためにデベロッパーも抑えた価格を提示しているが、ボレイの一部のデベロッパーが顧客に対し、頭金なしで30年間の長期住宅ローンを提供しているケースもある。カンボジア不動産協会(CVEA)とカンボジア住宅開発協会(HDAC)は、ボレイの一部のデベロッパーが顧客に対し、頭金なしで30年間の長期住宅ローンを提供していることに対し、懸念を表明している。

ボレイとコンドミニアム Borey & Condominium

 世界銀行の統計(2013年)によればカンボジアの都市人口割合は20.3%とASEAN諸国中最低のため、中長期的にプノンペンの都市化率が更に上昇することが予測される。また、プノンペンの中間所得層の収入増加により、ボレイと呼ばれる戸建住宅街の開発が急成長している。

 プノンペン都南部に50ヘクタール以上のボレイ計画を進めているソナトラグループのCEO、永田哲司氏は、「コンドミアムに比べると、ボレイ自体はまだ売れています。コンドミアムはローカルの人は買いませんから、頼みの綱は外国人投資家です。しかし、ボレイは未だにローカルの人がすごく好きなマーケットです」と語る。

 住みやすい環境に恵まれ、買い手が土地所有権利を持てる点が人気だが、選ぶうえで留意点もある。

 同氏は、「一番大事なのは、ボレイ自体の価値を上げること、街をどう作ってどう発展させるのかです。ちゃんとメンテナンスして、富裕層の方々も住みだす街を開発しなければなりません。メンテナンスしないと公園は汚れ、道路も傷み、町自体の付加価値が下がります。良い町に継続して作るなら、メンテナンスが一番大事です」と、できるだけ良いボレイを選ぶ方法としてメンテナンスの重要性を指摘している。

 潜在的な買い手には多くの選択肢があり、市場競争に勝つためにデベロッパーも抑えた価格を提示しているが、ボレイの一部のデベロッパーが顧客に対し、頭金なしで30年間の長期住宅ローンを提供しているケースもある。

 一方でコンドミニアムを購入するカンボジア人の多くは、学校や空港、都内中心部へ簡単にアクセスでき、素晴らしい景観や設備を持つ、都会的で世界基準のライフスタイルを楽しみたいと思っており、もちろんそのほとんどが、キャピタルゲインや賃貸収入目的も含まれる。


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