カンボジアに進出する日系企業のための
B2Bガイドブック WEB版

2015年11月9日
カンボジア進出ガイド

【運輸・物流】

091 カンボジアの運輸・物流②(2015年10月発刊 ISSUE03より)

カンボジア版AEO※5 Cambodian AEO

090 カンボジアの運輸・物流①から続き
 税関ではASYCUDAシステムなどを導入し、EDI化(電子データ交換)しているため、輸出入者はそのシステムを利用し輸出入申告を行う必要がある。しかし、データ入力できる端末に台数の限りがあり、しかもデータが手入力作業となるため、商品項目が増えると入力手続きだけでも莫大な時間を要するという大きな問題点を抱えている。そこで、2014年6月にカンボジア版AEO※5とも言われる BestTraders Initiative (BTI)が関税消費税総局により発足し、第一回認定者8社(そのうち日系企業は3社)に対する贈呈式が行われた。これにより、自社内に設置された専用端末での操作が可能になる。これは過去に日・カンボジア官民合同会議等の際、数次に渡り当制度の導入についての議題が取り上げられており、この会議による優良成果事例と言えよう。しかしながら具体的な手続きや承認条件等に不明瞭な点も多く、明確な情報開示が待たれる。

運送と検品業務 Transportation and inspection business



 運送だけではなく、ドライポート内に検品所を持つ大森&トーマス・ロジスティックサービスの山崎豊氏は、「もともとは運送屋ですが、工場の建設や生産ラインの調整、原材料の輸入、製品の輸出、またそれらのコントロールなども一貫してやって欲しいという依頼が来るんです。その流れから検査の業務が始まりました」と述べる。検査内容としては、外見検査、X線検査、又、検針器という金属探知機を使用し、ミシン針などの混入がないかどうかも確認し、発注主と工場側との製品基準のギャップを埋める非常に重要な作業も担う。同氏は「本業である運輸をより注力していきながら、サービスの一環として検品センターを活用し、何から何まで一貫してワンストップ化を続けていきたい」と語る。物流コストと労働コストと並び、製品品質も非常に重要なポイントとなる。新たに進出される企業もどれか一方の条件でカンボジアを見るのではなく、各分野において、進出に値する条件が整っているかをバランスよく見ることが求められる。

内需型の低温輸送の取り組み Approaches to isothermal transport



 南部回廊での冷凍・冷蔵輸送、低温輸送を昨年から開始している鴻池運輸の高林氏は、「私たちは20年前にベトナムに進出しましたが、現在ではベトナムもようやく内需型の低温物流の需要が増えつつある状況です。スーパーやコンビニなどの日系小売業の進出の加速が大きな要因です。カンボジアにも24時間マートは見かけるようになりましたが、チルド品などの独自商品が未だありません。現在のカンボジアは20年前のベトナムの状況に近いですが、今のベトナムのような環境になるには20年もかからないと予想しています」と語る。従来の輸出入重視型の物流から、将来を見据えた、低温輸送のカンボジア国内流通展開を見越しての事業参入と言えよう。
092 カンボジアの運輸・物流③へ続く



※5 AEO: Authorized Economic Operator貨物のセキュリティー管理とコンプライアンスの体制が整備された者として、あらかじめ税関長の認定を受けた通関業者については、輸入者の委託を受けた輸入貨物について貨物の引取り後に納税申告を行うことや、輸出者の委託を受けて特定保税運送者による運送を前提に、貨物を保税地域に入れることなく輸出の許可を受けることを可能とする制度。


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