カンボジアに進出する日系企業のための
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2015年7月13日
カンボジア進出ガイド

【人材・コンサル】

045 カンボジアのHR&コンサル③(2015年4月発刊 ISSUE02より)

■ 人材開発と労働市場のミスマッチ Mismatch between labor market needs and skill-levels

(044 カンボジアのHR&コンサル②からの続き)
 基礎力が低いとされるカンボジア人労働者のスキルや専門的知識について、Aプラスのソー氏は「カンボジア総人口の70%が労働人口にあたります。つまり、市場には900万人以上がいるということになりますが、課題として彼らにはスキルなどがないため職業訓練が必要となります。スキルワーカーがいないのです」と語る。

 2012年、JICAが行った産業人材育成プログラムの準備調査によると、日系企業は技術者の採用に際し、ポテンシャルや即戦力を重視し、主に品質や工程管理に従事させたいとの回答が多かった。

 カンボジアの産業人材育成にかかる政策は、企業が必要とする能力の基準(CBS)により策定されることが望ましいが、職業訓練技術教育(TVET)の一角を担う公立職業訓練校は、高校3年生から大学レベルまでの教育訓練を実施しているものの、CBSによる訓練コースを描き切れていないなど、職業訓練の機能が不十分であると言える。職業訓練校で企業労働者として育成できるかどうかは今後の課題である。また、若者の習得するスキルや専門的知識の選択は、必ずしも労働市場の要求を反映しておらず、高等教育を受けた者の中でも労働の需要にミスマッチが生じている。

人材教育サービスを行う3Gエージェントのビジネスマネージャー、ンガイ・メンリー氏は、「若者は大学卒業後、お金が必要なために熟考せずに就職しがちです。大学では基礎しか学んでいませんから、本当は就職の前にもう少し専門的に学んだ方が良いと考えています」と言っている。

 安価な労働力が主な進出メリットであるカンボジアでは、そもそも高度なスキルや専門知識を有する労働者の需要は少ない。NEAのコイッ氏は「NEAに登録されている求人者と求職者のデータから見ると、市場でミスマッチが起こっているということが確認できます。というのも、求人では工場労働者などの低スキルワーカーの需要が多いのに対して、求職ではオフィスワークなどの供給が大きくなっているからです。ここに需要と供給のミスマッチが見て取れます」と言う。

 また、オフィスワークの人材について、Aプラスのソー氏は「3%しか資格のある人材、よい労働者がいないのが課題です。彼らを訓練し資格を習得させたりする必要があります。海外の投資家にとってこれは問題で、彼らに研修をさせないと仕事にならないのです。カンボジアでは他のASEAN諸国の労働力と比べ、生産性は高くないということも理解しておくべきです」と語る。

スキルや知識が企業の求める水準に満たない場合には、社内において人材育成・人材開発を検討することとなるが、2004年から企業向けの人材育成プログラムを提供するAAAカンボジアのスザンナ・コーグラン氏は、「人材開発プログラムを導入している企業は一定の規模に成長したところが多いです。一定の規模になると人材がカギになってくるのでそこに投資をするようになります。企業のバックグラウンドも様々な国がありますね、近年はカンボジア系の企業の人材開発意識も高まっています」と語り、特に進出する企業に対してのアドバイスとして、「人材に時間とお金をかけること。たいていの方は会社を作り上げるのに急いでいることが多いです。目標達成にはそれも必要かもしれませんが、必要な人材を育て上げるには時間もかかります。技術職でない場合は、経験やスキルよりも仕事に対する態度ややる気が重要だと思います。カスタマーサービスや販売職の場合は、その仕事のコンセプトを理解してもらうことに時間をかけるべきです」と語った。


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