カンボジアに進出する日系企業のための
B2Bガイドブック WEB版

2014年11月21日
カンボジア進出ガイド

【金融・保険】

003 カンボジアの金融・保険①(2014年9月発刊 ISSUE01より)

金融

米ドルとカンボジア通貨リエル

 カンボジア国内には米ドルとカンボジア通貨のリエルが流通しており、経済取引の大半がドル決済である。通貨リエルへの信頼が十分でないだけでなく、外国為替に関する規制がほとんどないこともドル化促進の要因の一つだろう。世界で10数行しかないAA格付けを持つ国際的金融機関、ANZロイヤル銀行のグラン・ナッキー氏は「カンボジアでのビジネスは、ほぼ完全な米ドル経済です。リエルは支払いや両替の手段として使われていますが、取引量の5%ほどしかありません。ですから、現在は金融業界や支払手段においては米ドルが問題なく使えます」と語る。為替変動は投資の際の大きなリスクとなり得るが、カンボジアではそのリスクが低くなる。米ドル基準の経済は、投資家にとって安定的だと言える。

カンボジアの銀行

 ここ数年の金融業界の状態について、ANZロイヤル銀行のナッキー氏は「現在のカンボジアでは、主要な5、6行によって75%の市場シェアが占められています。これでも寡占具合は緩和されたほうなのです。2年前に遡ってみれば、四つの銀行が80%のシェアを占めていました。寡占状態は緩和されましたが、一方で大変競争の激しい分野になっています。競合が増え、価格競争が激しくなるに従い、商業銀行が以前のように利益を出すことは難しくなりました。一方で、利用者にとっては良い状況になったと言えると思います。手数料や利息が下がり、サービスの効率が上がり、質も良くなりました」と語っている。

 マレーシアに親会社を持ち、カンボジアの外資銀行で最大の資本規模であるカンボジア・パブリック銀行のパン・イン・トン氏は「所得比率の上昇、高学歴者の増加で顧客の見識も高まっており、要求も細かくなっているため、銀行の選択にも厳しくなっているように思います。銀行を選ぶ時はその銀行の資本力と実績やカスタマーサービスの評価、さらに革新的な金融商品の有無が基準にされています」と語っている。

 カンボジアに進出する企業が銀行を選ぶポイントは、その企業の事業内容や経営方針により異なる。
 ANZロイヤル銀行の山口紗世氏は、同行が多くの日系企業に選ばれている理由として三つのポイントを挙げた。「一つ目は、国際的信用がある金融機関であること。二つ目は、親会社や統括オフィスなど国外に幅広いネットワークを持ち、カンボジア国内でも現地のマーケットに関して深い知識をもつローカルパートナーを持っていること。そして三つ目は、法人用インターネットバンキングの利用が可能なことです」。同行のオンラインプラットフォーム(法人用インターネットバンキング)はセキュリティレベルが高く機能も多様なため、法人の顧客から支持されていると語る。国際標準の金融基準を適用しているか、現地でのビジネスに精通しているか、十分な資金を持っているかなどを踏まえ、安心して利用できる金融機関を選びたい。

 また、カンボジアでは法人登記していないと口座をつくることができないにも関わらず、商業省に法人登記する際には残高証明書を求められる。そのような場合、「当行では法人用の仮口座を開設し、残高証明書を発行しています。ビジネスライセンスなどが揃い次第、同じ口座で使用可能になります。法人口座名でなく代表者名での口座開設も可能ですが、大きな企業であればあるほど個人の口座はリスクがあるために好まれません」と山口氏はアドバイスしている。

今後の銀行業界

 カンボジア・パブリック銀行のパン氏は「技術の発達により、銀行業界はシステム処理面においてさらに激変すると思います。決済処理やATMなどもより便利になるでしょう。インターネット・モバイルバンキングも今後数年でさらに拡大するものと思われます。カンボジアは現金主義の歴史が根強く、主要貨幣もドルです。しかし今後、より多くのカンボジア人が銀行に口座を持ち、小切手や送金機能を使うようになることも全体の底上げになると考えています」と語った。


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