カンボジアに進出する日系企業のための
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2017年12月8日
カンボジア進出ガイド

【建築・内装】

210 カンボジアの建設・内装②(2017年11月発刊 ISSUE07より)

労働者 Construction workers

 カンボジアの不動産・建設セクターが20万人以上のカンボジア人を雇用するなど、雇用機会創出の牽引役となっている。地方からの出稼ぎ労働者が多く雇用されており、収穫期でない時期には高報酬を求めて地方から首都へ大量流入し、収穫期になれば地方へ農業をしに戻るという。

 C&Pのミース氏は、「建設労働者のほとんどが、市内でのプロジェクトが無い時期には、農作業にほとんどの時間を費やすため、季節に左右されます。昨年からコメをはじめとする多くの農産物の販売価格が下がったことから、労働者たちは、利益を上げられない農作業に従事せず、通年で建設現場において働く方が良いと思っています」と話す。

 一方で、より高い賃金を求め労働者がタイなどへ流出するため建設業で労働力が不足している面もある。昨年8月、カンボジア内務省により発表された報告書によれば、今年始まって以降、1万人以上の不法労働者(90%がベトナム人)が国外追放処分となっており、その多くが建設業に従事していた。

 建設労働者の技術力について、SCEのエン氏は、「カンボジアでは、熟練技術者も非熟練労働者も、特に学校で学ぶ慣習はなく、師匠が弟子に教えるような形で、技術を学ぶんです。そのため技術レベルに一貫性がなく、基準がありません。これは大きな問題ですね。そのため、今求められているのは、スキルを向上させる職業訓練学校です。しかし、政府の動きが進んでいるとは思えず、民間企業や投資家に依存している状態です」と語る。同氏によると、カンボジア人作業員の70%は非熟練労働者だという。

 SOMAのチア氏は、「カンボジアには熟練技術者がほとんどいません。例えば5~6年かかるような大掛かりのプロジェクトだと、カンボジアの作業員では経験がない。今は向上している最中ですが、海外から人材を雇う必要があります」と語る。

カンボジアを理解した取り組み Understanding the impact of Cambodia

 設計や工法においても現地を理解した考え方が重要になる。カンボジアでは日本で使われる建材が手に入りにくい。カンボジアでの施行には創意工夫が必要になる。



 セントラル・デベロップメント・エンジニアリング(以下、CDE)のドム・リエン氏は、「建設業界に進出する海外企業は、まずカンボジアに関する知識を身に着け、特に場所とデザインに関して学んでください。カンボジアにおける建設の場所やデザインに対する理解不足が原因で、海外の企業が失敗に陥っているのを目にしてきました。更には、ビジネスに関連する環境についても深く知っておくべきです。たとえば、国道4号線に工場を建設する場合、水道、電気、労働者、輸送網に十分アクセスできるのでビジネス環境は完璧ですが、カンボジアではこれらの設備、機能が未整備となっている地域も多くあります。電気が十分に整備されていなければ、自分たちで電力施設、発電機を備える必要があります。水へのアクセスが無ければ水道システムを構築しなければならず、多くの費用を要します」とカンボジアを理解した取り組みの重要性を語った。



 また、世界中で建築プロジェクトを手掛けるココチカムデザインの河内利成氏は、カンボジアの建築・デザイン業界におけるカンボジア人の趣向に変化について、「プノンペンはおしゃれな店舗が充実してきており、イオンモール付近はエンターテインメント施設が充実してきているといったように、デザイン・ライフスタイルも多様化しています。日本のようなシンプルなデザインは定着、浸透していないのが現状です。そのため、弊社は日本ならではのデザインを施しながらも、現地のデザインを取り入れることを心がけています」と語る。また、カンボジアでまちづくりを行う際に重要視する点として、「カンボジアで事業をするためにはローカライズしていかないといけないため、Newクメールスタイルを常に考えます。設計の部分でいかに他社と差別化するかということを考えています」と付け加えた。

 SOMAのチア氏は、「外資系デベロッパーと仕事をする際は、お客様は高品質かつスピードを求めるため、我々の提示する金額でも満足頂きます。しかし地元企業はとにかく安い価格を求める。現在、中国系の建設業者も入ってきており、彼らは品質もそこそこで、納期意識はありませんが、とにかく安い。そこと戦っていくことは我々にとってはチャレンジですね」と語った。

サプライヤー Supplier

 多くの国際的な建設関連会社が、駐在員事務所の設立や正規代理店を通じてカンボジアへ進出しており、建設関連の製品は低価格から高価格帯のものまで幅広く手に入るようになった。

 SOMAのチア氏は、「この問題点はカンボジアにおける資材の輸入です。ここ5年間、建設業界はブームですが、建設資材の輸入は国内では既に限界を迎えています。そのため海外からの輸入に頼っており、しかし時間がかかり、頼んだものが手に入らないなど問題も多いです。現在、国内のサプライヤーが必死になっている最中ですね」と語る。

 C&Pのミース氏は、「AECによる影響として、国際的でグローバルなブランドの建設資材が成長市場を目指して流入するため、建設現場へはより安くより良い製品を供給出来ますが、非常に多くのサプライヤーが競合しなければならないと思います」と語る。



 電気温水器のリンナイ、電動工具のヒルティ、床材のペルゴなどの販売代理店である、カムコナ・トレーディングのエリダ・キムスルン氏は、「私たちの製品は全ての住宅や商業施設が対象です。日本や欧州から輸入する評判の高いメーカー、洗練された商品を取り扱っています。私たちはソリューションを提供することを第一にしています。商品を売ることに注力せず、顧客のニーズを汲み取り、どんな商品が最適か、どんなソリューションが一番かを提案します。また売った後も同様に大事です。もしアフターサービスやメンテナンスが無ければ一度のみの購入になってしまいますから」と語る。

 また同氏は、「顧客は外国人とローカルの半々で、一番売れ行きが良いのは、リンナイの電気温水器ですね。豪州やニュージーランド、米国でも知られており、商品を信頼して買っていきます。お陰さまで売上金額も順調に伸びており、リンナイに関しては2倍以上に伸びています。ホテル等に向けては、国内の電気料金の高さからガスシステムの需要も伸びています」と付け加えた。価格的な競争力だけでなく、新たな価値の提案が求められる。


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