カンボジアに進出する日系企業のための
B2Bガイドブック WEB版

2019年8月12日
カンボジア進出ガイド

【医療・医薬】

297 カンボジアの医療・医薬①(2019年6月発刊 ISSUE10より)

カンボジアの医療事情 Medical Care in Cambodia

 外国人がより安心して生活できる医療環境が整いつつある。プノンペンを中心に外国人医師・歯科医師が診療にあたる医療機関が複数存在し、様々な専門科の医師が診療を行う。病院を選ぶ際は、外国人専門医師や、海外で訓練を受けたか、外国の医師免許を持っているカンボジア人医師を有し、国際標準医療を導入している医療機関を選ぶことが望ましい。救急医療については、国内で救急治療を受けられる病院もあるが、質にはばらつきがあり、2次又は3次救急では、国外の医療適格地へ搬送される場合もある。また、高額な治療費がかかり、輸血用血液は不足しているなど懸念も多い。

 サンインターナショナルクリニック(以下、SIC)の荒木良守医師は、「我々のクリニックでは、内科、外科、整形皮膚科、形成外科、耳鼻科、精神科など結構いろんな先生がカンボジアに来てくれているので、幅広い対応ができます。また、日本にも我々の医療機関があるので、日本へLINEや電話などの通信手段を利用して遠隔の診療も可能ですから、かなり的確な診断ができるクリニックだと思います」と語る。日本と同じ医療サービスを受けられるクリニックの存在は、在住日本人にとって重要だ。

 また、プノンペンは都市化が進んでいるので、病気の質が変わってきており、途上国特有の感染症としてマラリアやデング熱という病気は、都市部では改善されている一方で、アレルギー性疾患や慢性的な病気が増えている。

 カンボジア人は経済的事情から、薬局で薬を購入して治療しようとする傾向が強いが、薬学部を卒業していないスタッフが処方箋なしで医薬品を販売する薬局もあり、人々が適切な医薬品を入手できているとは言い難い。近年は薬局の水準も徐々に上がってきているが、症状により適切な処方をしてくれる信頼できる医療機関を選びたい。

カンボジアでかかりやすい病気と健康管理 Staying Healthy in Cambodia

 保健省は、H1N1型とB型インフルエンザを雨季に流行する季節性インフルエンザと指定している。また、熱帯モンスーン気候に属し、年間を通して高温多湿のため、デング熱・マラリアといった感染症に注意が必要だ。

 保健省によると、2019年1月から5月にかけてデング熱が8000件近く発生したと発表した。6月から8月にかけてデング熱の症例数は増加する可能性がある。

 SICの野々村秀明医師によると、「デング熱の症状は、突然の高熱・頭痛・関節痛・筋肉痛・倦怠感などで、解熱時には全身に発疹が現れることもあります。一般的な風邪症状と似ているものの、喉の痛みや咳といった呼吸器症状はあまりないです。時には症状がほとんど出ず、かかったことに気づかないケースもある」と、外国人にも充分な警戒が求められるという。ワクチン接種は実施されておらず、デング熱対策としては、蚊に刺されない対策が重要だ。

 ケン・クリニックの奥澤健医師は、「カンボジアで体重が増加したという外国人を多く見ますが、その原因は主に食生活にあります。カンボジア人の食生活は、おかずを少なく白米を多く摂取する傾向があります。肥満、糖尿病、高血圧の主な原因は白米などの炭水化物であり、カンボジア人同様の食生活を送るとこういった病気にかかりやすくなります」と警告している。

 しかし、プノンペンの在住外国人の多くはビジネスパーソンであり、忙しさゆえに不摂生に陥ることも多いだろう。SICの野々村医師は生活習慣病について、「カンボジアの在留邦人の年齢層は比較的若いため、慢性疾患の有病率は低いかもしれませんが、長期滞在する外国人には呼吸器疾患や消化器疾患、感染症など急性疾患も多いです」と語る。日々の自己管理のほか、体調に異変を感じた場合は早急に医療機関で受診することが大切だ。病気だけでなく、バイク乗車中に発生する事故によるケガも多い。また、ひったくりに遭って引きずられるといったケースもあり、十分注意したい。


その他の「医療・医薬」の進出ガイド

医療・医薬
医療・医薬
医療・医薬