カンボジアに進出する日系企業のための
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2015年7月12日
カンボジア進出ガイド

【不動産】

034 カンボジアの不動産③(2015年4月発刊 ISSUE02より)

■ 住宅の賃貸 Rental Housing

(033 カンボジアの不動産②からの続き)
 住居として外国人に人気の高いエリアは、ボンケンコン1。プノンペンの富裕層エリアといわれており、カフェ激戦区となっている。しかし、家賃が高いため、いろんなエリアに少しずつ分散が進み、その周辺のボントラバエク(BT)、トゥールトンポン(TTP)、ボンケンコン(BKK2、3)、トンレバサック(TB)、プノンペンタワー裏の人気も高い。ボントラバエクやトンレバサック南部は新興住宅地で比較的新しい建物が多く、日本人が増えているエリアだ。また、ここに日本食屋などが並ぶ「絆ストリート」もあり今後注目のエリアである。立地的にPPSEZに勤務している方が多く住んでいるトゥールコークも高級住宅街として知られているが、設備の割に価格が抑えられた物件が多い。このエリアにはレオパレス21が自社開発するサービスアパートも建設予定だ。「最近人気のあるエリアはロシアンマーケットの辺りです。新しい物件も散見しますが、見た目は古くても内装をリノベーションしている安価な物件もあります。比較的安いことから欧米人を中心に外国人からの注目が集まっているエリアです。日本人の方も住んでらっしゃる方は増えています。このような居住エリアは生活のしやすさという点が重要ですから、家賃の安さもさることながら、美味しいレストランやショップがあるなどの存在は大きいです」とレオパレス21の小林氏は語る。

 また、カンボジアの賃料について、「カンボジア=安いという先入観を持たれている方が多いので、例えば1ベットルームで1000ドル以上という今の状況を聞くと大概の方は驚かれます。しかし、カンボジアは人気のある居住エリアという点でベトナムやタイのそれと比較すれば高い方ですから、そう思われても仕方ないでしょう。私たちは、賃貸物件をご紹介する前に、そのような先入観を変えて頂くことが必要になりますし、ときには会社の海外規定にある家賃の上限設定の見直しもご提案しています」と続けた。

 カンボジアの住居形態は、サービスアパート、コンドミニアム、ヴィラ(一軒家)、プテアロベーン(フラット)などがある。サービスアパートは24時間警備のほか、プールやジム、部屋の掃除や洗濯など、ハード面だけでなく、ソフト面も充実している物件が多い。忙しいビジネスマンのために買い物サービスもある、日本人が常駐しているサービスアパートを提供するTAMAホームの上田武範氏は、「立地が良く、広くて家具もきれいというサービスアパートが人気ですが、1人であれば1,000~1,500ドルは最低かかります。ファミリータイプは2,000ドル以上するでしょう。クリーニングサービスには掃除や洗い物、リネン交換なども含まれていますが、お洗濯は付いていない所が多いようです。また、古くてもいいから中心に住みたい気持ちもわかりますが、駐在員などのお客様には赴任期間が限定されているからこそ、心のゆとりや、ここで頑張って欲しいと言う意味も込めて、家に帰りたくなるような住まいを提供できたらと思っています」と語った。仕事に集中するためにも住環境の整備は大切であることから、賃貸物件の選択には十分留意したい。レオパレス21の小林氏は、「住居探しのポイントとしては、何を重視するのか最後までぶれずに探すことです。物件をいくつも見ていると当初の目的からずれてしまうことがあります。最後まで自分が何を重視したいかを考えることが大事です」とアドバイスしている。セキュリティや治安、住み心地など、重視する点を考慮し、現地をしっかりと見たうえで検討したい。

 日本に居ながら賃貸物件を探さなければならない場合には、賃貸情報サイトを利用することができる。賃貸情報サイトの一つ、アンナホームを運営しているアンナキャムパートナーズの荒木杏奈氏は、「駐在されている外国人をターゲットにしていますので、外国人が住むための住宅情報を提供しています。サイトは日本語・英語に対応していて、賃貸仲介のお客様は90%が非日系の外国人です」と語る。

■ 不動産の購入 Investing in property

 カンボジアでは憲法第44条において、外国人または企業が土地を所有することはできないと明記されているが、例外として土地を購入するためには、クメール資本51%以上の合弁会社により購入する等の条件がある。まず、購入する土地を選定する上で、売手の持っている書類がハードタイトルかソフトタイトルかを確認する必要がある。JICA国際協力専門員、磯井美葉氏は、報告書「カンボジアの不動産登記について」内で、権利証について以下のように記述している。

 Systematic RegistrationおよびSporadicRegistrationにより発行された権利証または占有権証明書等は、実務上ハードタイトルと呼ばれる。

 これに対して、ソフトタイトルと呼ばれるものも流通している。これには登記手続の前提としてコミューンチーフ※1が占有状態を証明した書類、Sporadic Registrationの「受理書」など、いくつかの種類があるようである。地籍局に登記されていない土地について、これらのソフトタイトルを相手に交付することによって、担保を設定したり、所有権を移転したりする慣行があるようだが、複数の人が同じ土地について権利を主張する等、不安定、不確実なものであり、紛争の原因ともなっている。 

 所有権が認定され、登記がされた後に所有権移転等によって変更登記を行う際は、登記簿の記載を変更するとともに、旧所有者が手元に保有する権利証等を地籍局に提出し、権利証等にも登記簿と同様に変更の記載をすることになっている。


 一方で、コンドミニアムなどを小規模のオフィススペースとして区分所有する方法もある。コンドミニアムは当初は建築者の名義で所有権が登記され、分譲されると新しい所有者の名義が登記されるとともに、各戸の所有者に対しハードタイトルが発行される。これらは、コンドミニアムなどの区分所有建物を建築する場合の義務とされている。区分所有建物の登記について、磯井氏は同報告書内で以下のように記述している。

 これらの登記簿の作成の申請は、区分所有建物を建築する場合の義務とされているが、必ずしも行われていない場合があり、プノンペン市内でも、権利証(ハードタイトル)のないコンドミニアムが売り出されている例があるようである。

 IPSのマーフィー氏は、「会社として物件を購入する場合、所有権を考えたほうがいいですね。権利証等がない物件の場合、有効な所有権の取り決めをする必要があります。正式に登記された会社の場合、ランドホールディングカンパニーを設立して土地を登記します。これだけではリスクが高いので議決権を51%以上にする必要がありますね。こうすればローカルパートナーの名義が含まれたとしても会社の判断に口出しをすることが不可能となります。次に長期リースというものがあります。50年+50年の契約になるのですが、正直最近はほとんど見られません。さらにこれは人気の高い方法で特に住宅で多いのですが、ノミニー※2 制度を利用するものです。カンボジア人の友人もしくはノミニーの扱いのある会社もしくは弁護士や不動産会社を通して設定します。あなたの資金で、しかし名義はカンボジア人のものになります。そこに100%の不動産抵当権を付けることにより、抵当の除外もしくは満額支払いがない限りは第三者に売り渡すことができないのです。このような手法で土地を守ります。ですからまずはどのシステムなら納得できるか決める。何に必要なのか、投機目的の購入なのか、ロケーションありきなのか、ハイエンド物件を探しているのか、長期の投資を考えるならば、住宅と商業物件の両方を検討する必要があります。まずは自身のニーズを考えること、次に信頼できる代理店を探すことです」と語った。

※1 コミューンチーフ: カンボジアの地方行政には、州、郡、コミューンという三つの行政区分がある。コミューンは人口1万5千人から2万人の規模をもつ行政体で、コミューンの下には村がある。一つのコミューンにつき8~10の村がある。
※2 ノミニー: 合法的にプライバシーを保護することができる。法人登記時にオーナーの個人情報を使うことなく登記することが可能。


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