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2017年6月29日
カンボジア進出ガイド

【医療・医薬】

200 カンボジアの医療・医薬①(2017年05月発刊 ISSUE06より)

カンボジアの医療事情 Medical Care in Cambodia

 日本人がより安心して生活できる医療環境が整いつつある。プノンペンを中心に日本人医師・歯科医師が診療にあたる医療機関が複数存在し、一般内科・外科に限らず、耳鼻科・消化器外科・整形外科・脳外科など様々な専門科の日本人医師が診療を行なう。また、2016年10月にはプノンペン都内に24時間365日の救急対応を行う日系病院が開設され、カンボジアにおける高度医療と救急医療水準の向上への寄与も期待されている。今後も新たな日系医療機関・薬局等の開設が計画されており、さらに日本人が安心できる環境が整っていくものと見られる。

 一方で、世界保健機関(WHO)の調査によると、人口1,000人あたりの一般医および専門医を含む医師の数は、日本の2.3人(2012年)に対し、カンボジアは0.17人(同年)、高度医療機器の普及状況は、人口100万人あたり日本の45.94台(2012年)に対し、カンボジアは0.07台(2013年)となっている。医師や看護師の不足、医療機器の未整備、特に地方においては医療機器の衛生観念の欠如といった様々な問題が指摘され、カンボジア全体の医療水準は未だ黎明期にあるといえる。



 医師の水準に関しては、2012年にようやく医師国家試験が一部導入された。カンボジアは日本と比べて圧倒的に専門医の数が少なく、医師の水準も低い。カンボジア初の日本人開業医である ケン・クリニックの奥澤健医師によると、カンボジアでは医師会による勉強会や学会が整備されておらず、知識の共有などが不十分だという。外国に留学し、その国のスタンダードを学んだ医師もいるが、全体としては課題が多い状況だ。

救急への対応 Medical Evacuation

 国内の主な私立・公立の病院で救急治療を受けられる所もあるが、質にはばらつきがある。2次又は3次救急では、バンコクやシンガポールといった国外の医療適格地へ搬送される場合もある。(参考:専用機での搬送費、約2~4万ドル。入院費、手術費等別途。)

 一方で、日本人医師・看護師などが多数常駐するサンライズジャパン病院(以下、SJH)が開院し、カンボジア国内でも高度な救急治療を受けることができるようになった。SJH院長の林祥史医師は、「カンボジアでは交通事故で頭の怪我をして命を落としてしまうことが多いようで、救急には脳神経外科は必須です。我々の病院は脳外科も一つの強みとしており、周辺国以上の質を提供できると思います」と述べている。SJHは救急車も保有しており、病院に電話して呼ぶことも可能だ。

 2015年に世界保健機関(WHO)が世界180の国と地域を対象に人口10万人あたりの交通事故の死者数を調査したところ、日本の4.7人に対しカンボジアは17.4人と、交通事故で命を落とすリスクが日本の約3.7倍もあることが示唆された。万が一に備え、カンボジアの救急搬送手段をあらかじめ理解・確保したい。

カンボジアでかかりやすい病気と健康管理 Staying Healthy in Cambodia

 当地では日本とは違う環境であることを踏まえた健康管理が必要になる。衛生環境への配慮は欠かせない。蚊などに媒介されるウイルスや感染症、細菌・寄生虫による急性胃腸炎にも注意が必要である。 ケン・クリニックの奥澤医師は、「患者様で一番多いのは風邪です。腸炎、食あたりが続いて、季節によってデング熱やインフルエンザも多いです」と話している。

 経済の発展に伴い、カンボジアでは感染症にとどまらず心臓血管病、慢性肺疾患、糖尿病などの非感染性疾患等の新たな医療課題が生まれている。SICの久保伸夫医師は、「経済発展が著しく、建設ラッシュや自動車の急増による大気汚染は深刻です。中国同様にダニ、カビ、PM2.5などの呼吸器の汚染物質が室内外問わず多く、気管支喘息などを引き起こす可能性があります」と述べた。



 プノンペンの在住日本人の多くはビジネスパーソンであり、忙しさゆえに不摂生に陥ることも多いだろう。SICの野々村秀明医師は生活習慣病について、「カンボジアの在留邦人の年齢層は比較的若いことが想定されることから、生活習慣病といった慢性疾患の有病率は低いかもしれません。しかしながら、発展途上国に長期滞在する日本人の受診病名を追跡した調査によると、呼吸器疾患や消化器疾患、感染症などといった急性疾患が多いです」と語る。日々の自己管理のほか、年齢に関わらず体調に異変を感じた場合は重症化しない内に医療機関を受診することが大切だ。


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