カンボジアに進出する日系企業のための
B2Bガイドブック WEB版

2018年6月25日
カンボジア進出ガイド

【人材・コンサル】

242 カンボジアのHR・コンサル①(2018年5月発刊 ISSUE08より)

カンボジア人の特性 Characteristics of Cambodian staff

 2018年1月に発表された「人材競争力ランキング」では、カンボジアは108位(119か国中)と、前年と同位だった。「人材競争力ランキング」は、スイスに本部を置く人材サービス会社・アデコグループなどが行った国際調査を基にまとめたもので、人材の育成や獲得、維持について各国をランク付けしている。つまり、カンボジアは世界的に見ても人材の育成や獲得、維持が難しい国だと判断されていると言える。

 多くの経営者はカンボジア人に対する共通した感想を持っている。彼らはフレンドリーで礼儀正しいが、上司に対する進言などは少ない。彼らは自ら話さないだけで仕事に対して想いやアイディアを持っており、それを引き出すことはとても有用である。だからこそスタッフとよく話すようにするのが良いだろう。カンボジア人が家族主義の文化に基づいており、常に家族を第一に考えているという点に理解を深める必要がある。



 日本人の紹介にも多数の実績と経験を持つ日系人材紹介会社クリエイティブ・ダイアモンド・リンクス(CDL)の鳴海貴紀氏は、「全てのカンボジア人スタッフは社内で必要な存在として機能しています。会社は、感情を持つ人間の集合体です。特にカンボジアのように社内でも家族のような関係性を好む文化を持つ国の場合では、管理者の知らないうちにも、スタッフ一人ひとりの能力や個性に対する相互理解によって、個々の役割は組織的に適正化されていくと考えます。それは外から与えられた会社組織という枠で起きていることではなく、人間関係の中で自然に発生した非公式な繋がりのことで、派閥という表現とも相違しており、強いて言えば、仲間意識より一段深い、家族意識に近い繋がりです。伸び悩むスタッフでも、その能力や個性に対する相互理解から自然発生的に与えられた役割の基で、社内に一定の価値を生み出している、という前提にたって管理者は人事マネジメントを行わなければならないと思います」と語る。

カンボジア人の働き方 Cambodian work ethic

 カンボジア人の多くが日系企業の厳しさにトラブルを抱えているというが、カンボジア人と働くうえで、理解しておくべき点として、何をしたら良いだろうか。ローカル系人材会社Aプラスのソー・キナール氏は、「カンボジア人は日本の企業に、厳しくて勤勉、会社への忠誠心、長期雇用というようなイメージを持っています。しかし、日本人とカンボジア人では長期雇用の考え方は違います。また、現在の仕事よりも良い職場を見つけたら、彼らは簡単に別の会社に移ります。仕事が終わるまで夜9時、10時まで働くことは、日本でのみ可能なことです。文化の違いや安全保障上、ここカンボジアでは同じようにはいきません」と語る。



 2005年創業、100名以上のスタッフを擁するカンボジア最大の人材会社、HRインクのサンドラ・ダミーコ氏は、「カンボジア人はフレンドリーで易しく、日系企業のような厳しい環境には慣れていません。カンボジアにも規律はありますが、日本の規律とは異なります。最近では多くのカンボジア人が日本に勉強しに行き、カンボジアに戻ってきているため、日本の文化や日本人の働き方を理解している人が多いようにも感じます。そうしたことからギャップはどんどん小さくなっているとは思います」と語る。

 CJCC(カンボジア日本人材開発センター)の大西義史氏は、「日本式経営もカンボジア人の国民性に合わせてアレンジされなければならない。それにはまずカンボジアの人たちを理解しなければなりません。現在、カンボジアでは徐々に報連相の概念が広まっていますが、形だけで実際に上手く機能していない場合が多いです。原因は報連相の一方通行化と報連相後のアクションの弱さです。多くのカンボジア人は、報連相は部下から上司に一方的にすることだと思っています。しかし本来、報連相は双方性的なものです。仕事を依頼する上司は部下を教育し、失敗を避けるための情報を提供します。そして、部下は働いている途中状況を上司に報告し、上司は必要なアドバイスを行います。しかし、多くの場合、上司から部下への仕事の丸投げや、下から上の報連相の一方通行化が多いと思っています。また、報連相をした後のアクションが大事で形だけの報連相に何の価値はありません」と語る。

 カンボジア人求職者と日系企業の場合、元々の環境や文化が異なるため働き方に対する価値観にズレが生じる。カンボジア人は何か不安を感じていても言わないことが多く、辞めたいと考える理由は、些細なことである場合が多い。日本人にとっては聞けば済むことだと思いますが、なかなか聞けないのがカンボジア人の特徴です。彼らが抱える不安が積み重なり、気づけば辞めていたという事態に至ってしまう場合が多い。カンボジア人の文化、考え方、そしてカンボジアはまだ成長の過程にあるということを理解することが必要だ。日本人の感覚を押し付けても、カンボジア人は受け入れられず、企業から離れていくだろう。

最低賃金 Working hours & minimum wage



 10月5日、労働職業訓練省は2018年の縫製業、被服業及び製靴業に従事する労働者の月額最低賃金を153ドルから170ドルに上昇すると発表した。2017年の153ドルから11.1%増。前年の伸び率9.2%増を上回る伸びとなった。なお、政府が定める最低賃金額に自国通貨(リエル)を使用しないことは世界的に異例。為替が対新興国通貨でドル高基調となる際は、ASEAN諸国内において相対的に労働コストが高くなることを意味する。


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