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2017年1月4日
カンボジア進出ガイド

【IT・通信】

155 カンボジアの通信・IT②(2016年11月発刊 ISSUE05より)

IT・システム開発関連サービス Information Technology & System Intergation

 進出する企業の数も規模もまだまだ小さいカンボジアだが、事業規模を拡大する通信会社や銀行・保険会社など金融機関、システム対応し始めた官公庁などのニーズの高まりにより、ウェブ開発やシステム開発といったIT関連サービスの品質もしだいに高まってきている。

 例えば、OA機器である複写機は画像処理部分がデジタル化し、ネットワークに繋がることで多機能化が進み、「マルチファンクションデバイス(MFD)」と呼ばれるようになった。



 2000年初頭から販売代理店を通してカンボジアで機器販売をスタートし2015年10月にカンボジア支店を設置し直販・直サービスを開始した富士ゼロックスアジアパシフィックの山口渉氏は、「ローカルのオフィス機器市場は黎明期であり新規の需要が拡大しています。日本では殆どの企業で既にMFDを導入いただいており成熟市場と呼べますが、カンボジアでは卓上プリンターのみ、或いはOA機器を使っていないオフィスもいまだ珍しくありません。経済規模の拡大にあわせ事業が大きくなればMFDは間違いなく必要になりますので、ローカル企業でのMFDのニーズは確実に拡大して行きます。また外資系企業の投資も堅調ですので、この分野でも伸び代は十分あります」と語った。

 外資系企業からの投資で支店開設も増えているカンボジアでは、OA機器を取り巻くIT関連サービスの品質も向上が期待される。

 ITシステム関連サービスの品質が高まり、ウェブサービス開発やスマホ用アプリ開発など、比較的軽めの開発に対応できる技術を備えたカンボジア人若手ITエンジニアの数は着実に増えつつある。しかし個人もしくは少数チームによる個人事業主程度の業者が多く、またIT知識・技術には長けてはいるが、納期や品質などに関する顧客とのコミュニケーション能力が未熟であるケースが多い。

 日本を含む外国企業からの発注に対し、しっかりと顧客要求と議論して向き合える窓口(ブリッジ・エンジニア)がいる業者でないと、受注はしたものの顧客期待を満たせずトラブルにつながるケースも散見される。日本で言う所の「SIer(システム・インテグレータ)」と呼べるようなレベル・規模の事業会社は、カンボジアにはまだまだ育っていないというのが現状だ。



 優秀なIT人材は確実に育ちつつある一方、そのIT人材がなかなかカンボジアIT産業に根付かない傾向もある。独自のルートで優秀なカンボジア人IT人材を集め、スマートフォンアプリやウェブシステム開発などを行うJCITの髙虎男氏は、「カンボジア国内の優秀なIT人材を輩出するのは、一定以上の教育水準を誇り情報通信学部がしっかりしている大学。その大学生が、卒業後にカンボジア国内で勤めず、アメリカや欧州への海外留学を選択するケースが非常に多く見られるようになってきています。優秀なIT人材を青田刈りする奨学金制度が充実してきた事、海外留学中にIT系のアルバイトでそれなりに稼げる事例が増えてきた事あたりが、その主要因です」と語る。

 また同氏は、「留学から戻ってきたIT人材は、大規模なシステム開発に関われる銀行等の金融機関のシステム部門に就職するか、大学教授の道を選ぶ傾向が増え、IT企業に勤めたり起業したりするケースがまだまだ少ないのが実情です」と語った。

 優秀な大学卒業生や海外留学から帰国した人材は 、ITに関するかなり高い基礎能力とビジネスレベルの英語能力をほぼ全員が備えている。カンボジアで何らかITシステム開発を行いたい場合は、優秀なカンボジア人IT人材をしっかり押さえてマネジメントしているIT業者に出会える事が肝要だが、まだまだその数は少ないようだ。


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