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2018年12月12日
カンボジア進出ガイド

【建築・内装】

263 カンボジアの建設・内装①(2018年11月発刊 ISSUE09より)

建設業界 The construction industry

 カンボジアは外国資本が大量に参入し、建設ブームの真っ只中だ。プノンペン、シハヌークビル、シェムリアップなどの都市は、住居施設、商業施設などの開発に満ちている。

 2018年10月に発表された国土整備・都市化・建設省の報告書によると、2018年1月~9月までの間、建設投資額48億ドルに相当する2541件のプロジェクトを同省は承認したが、昨年同期の56億ドルを14.47%下回った。

 また、9ヶ月間でプノンペンでは5階建て以上建物が92棟建設され、2005年から現在までは累計で1084棟が建設されており、建設会社も1028社が登録されている。また、沿岸部の開発が目まぐるしいプレアシアヌーク州では、同州土地管理部門のデータによると、2005年から2016年にかけて、5~35階建ての建物が46棟増加している。

 国際通貨基金(IMF)は、カンボジアの不動産部門の成長が今後5年間で減速すると予測しているが、現地不動産CPLカンボジアプロパティーズのチェイン・ケインCEOは、「カンボジアの不動産と建設部門は現在、3~4の州で強力な勢いを見せている。他の州でも引き続きポテンシャルを持ち続けると思う。カンボジアの不動産部門は長期的に成長を続けるだろう」と楽観的だ。大型建設プロジェクトの急激な急増により、市場は今後5年間で飽和するだろうが、中国人が引き続き投資すれば、良好になるだろう。

 韓国系建設会社による建設が2008年に停止していた42階建ての高層ビル「ゴールドタワー42」は、中国企業の手によって再開され、カンボジア政府からの強い要請を受け、2019年末までの竣工を約束している。また、台湾や中国で多くの実績を持つ台湾系不動産開発会社、和新建設のジョージ・シエ氏は、「カンボジアの不動産需要は今後も高まり続けると予想しています。アジアを見てみれば、台湾や中国、マレーシア人など、多くの華僑がよりよい生活を求め海外へ留学、駐在、もしくは移住をしています。そしてこれはどんどん増えます」と語っており、アジア諸国に点在する華僑の投資動向は注視に値する。

低所得者向け住宅開発 Housing development for low-income people

 カンボジアの首都プノンペンでは、都内に住む人口が急速に増加している。これらの人々は、ほとんどが中流階級から下層階級に属し、経済的および教育的機会を求めてプノンペンに集中して来ており、国土整備・都市化・建設省によると、プノンペンの人口は2030年までに400~700万人に増加すると予想されている。
 
 急増する人口とそれに伴う需要に応えるため、チア・ソパーラー建設大臣は、「低コストの賃貸住宅やアパートなどはもちろん、2030年までに政府は100万世帯を増やす必要がある」と述べ、同省長官も都市人口の増加率について言及し、「2016年にはカンボジア人全体の24%、450万人が都市部に住んでいたが、2030年には44%、800万人に達する。今後15年間で、年間50万軒の住宅を都市に建設する必要がある」と述べている。

 プノンペンの膨大な移民労働者が、低コストレンタルの大きな市場を作り出した。これらの移住者の多くは、プノンペン地区の工場、主に衣服・縫製工場で働く労働者である。

 同省は、低中所得者向けの低価格住宅の開発を優先するよう投資家に呼びかけており、ホワイトビルディングの再開発で知られる日系不動産開発会社アラカワは、大学生、新婚夫婦、低所得世帯をターゲットに、都内中心部に7000万ドルという低コストでコンドミニアムを建設する。また、公共住宅プロジェクトも始動しており、住宅価格は2万5000ドル~3万ドルで、住宅ローンが利用できるようになるという。

 建設会社、サプライヤー、不動産会社など60社以上が加入するカンボジア建設協会(CCA)が支援する建築業界専門誌、コンストラクション&プロパティ(C&P)のミース・プロックサー氏は、「カンボジア市場は依然として強い購買力がありますが、立地が良い、デザインが良い、手頃な価格、ビジネスや投資において魅力的等、買い手を惹き付ける物件は少ないです」と語っており、まだまだ投資余地は残っている。

プノンペンの不動産開発 Various development projects

 小売業への投資熱は、人々の賃金が上がるにつれ高まっている。プノンペンシティセンターの担当責任者によると、竣工前にも関わらずテナント部分は完売するところもあり、場所とデザインが良い小売スペースならばビッグビジネスになる可能性があるという。

 商業施設への開発投資として代表的な例が、イオンモールが2018年10月に発表した、カンボジア3号店だ。プノンペン都中心地から南へ約8キロに位置し、現地開発会社INGホールディングが進める「INGシティ」の中核施設になるという。2023年に完成予定だ。また、国際的なスーパーマーケットブランドのマクロ(Makro)は、シェムリアップに商業施設を建設する。

 不動産会社CBREカンボジアのアソシエイトダイレクター、ジェームス・ホッジ氏は、「小売市場の近代化は今や首都だけでなく全国で起きている。地方の町や都市は、プノンペンの足跡をたどって、需要にあった近代的な小売店を開発するだろう。観光客の数が多い地方の町や都市は、小売業の開発者にとっても興味深いだろう」と語っている。

 商業施設のみならず、さまざまなプロジェクトが進行している。台湾投資家は2018年6月、ダイヤモンドアイランドに1億ドルを投じて、40階建てで高さ178メートルの複合施設、ギアタワーを建物すると発表したほか、現地企業OKTロイヤルワンは中国企業と共に2018年9月、TV3カンボジアの跡地に1億5千万ドルを投じて62階建ての商業ビルを建設している。

 また、アジアにおいて最も成功した統合型リゾートの一つを目指すべく、香港に上場しているナガコープは、ナガ3を建設する計画を進めている。


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