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特別レポート(2020/01発刊11号より)
カンボジア観光投資についての可能性
~観光統計、ニュースから考察するカンボジア観光産業への投資~(1/2)
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観光省が発表した各種統計を知る

 本誌が発刊される頃には少し前の情報となっているが、2019年9月時点でのカンボジア観光省が発表した、カンボジアの観光の事情を紹介する。

 2019年1月から9月までの外国人旅行者は481万人となっており、前年同期437万人(1年間では620万人)から約10%増加している。

 観光産業はカンボジアのGDPの12.7%を占めており、2018年度には43億ドルの収入、またそこから発生する直接雇用は63万人(人口の約4%)となっており、カンボジアのキーインダストリーの一つにも数えられている。

 また、カンボジア国内旅行者は780万人と、前年同期より1.8%上昇(2018年度総数は1108万人)し、海外へのアウトバンド旅行者は175万人と、前年同期より4.7%上昇(2018年度総数は200万人)した。この数字から国が豊かになっていることが読み取れる。

 若干の希望的観測も入っていると思われるが、将来的な海外渡航者数の予測としては、2020年には700万人(そこから生まれる雇用は100万人、収入50億ドル)、2025年には1100万人(雇用は130万人、収入75億ドル)、2030年には1500万人、(雇用は200万人、収入100億ドル)と試算している。

 

観光産業への投資の可能性

 観光省では、カンボジア全土の宿泊施設や飲食店、旅行会社、ツアーガイドなどへのライセンス発行を行い、クオリティコントロールの強化を図っている。2019年9月時点での報告書を見ると、ホテルでは7.1%に増加しているのに対し、ゲストハウスはマイナス2.7%と減少傾向にある。これに関してはオンライン予約サイトの増加、トリップアドバイザーなどの口コミサイトでの評価、時代的な背景もありバックパッカーからフラッシュパッカー(予算に余裕を持つバックパッカー)への変化など、観光客のニーズや旅行スタイルの変化から「安かろう、悪かろう」の時代が終焉したことをあらわしている。

 実のところ、宿泊施設の増減に関しては、ただ数字だけでは見ないところがある。分かりやすい例を挙げると、事業を止めたとしても、新しいオーナーが名称を変えリニューアルし、ホテルのカテゴリーを上げるケースなどがある。つまり同じ施設が、数字上ではゲストハウスマイナス1となるが、ホテルプラス1となるからだ。

 次に旅行会社に関しては、リスト上マイナス12.1%とかなり減少しているように感じるが、ライセンス取得後の休眠企業、ライセンス未更新の企業も多かったため、これらをリストから削除した結果であり、実際のところはさほど変動はしていない。

 しかしながら、カンボジア国内の交通手段の変化も著しく変化してきており、以前の主な業務であった、ホテルや車両の手配、各種チケットの手配などはスマホアプリやオンラインで完了する時代となったため、より深いサービスが求められるようになっている。これにはレンタルW-FiやツーリストSIM価格の低下とも関係しており、今後ますます旅行会社離れが進んでいくと考えられる。

 ツアーガイドライセンス発行数の伸び率は11.5%となっているが、訪問者数の減少している国の言語を話せるツアーガイドが、ガイドの仕事がなくなってもライセンスだけは更新し、実際はサラリーマンとして別に働いているケースも散見される。

 余談ではあるが、観光省では独自の基準を設け、カンボジア全土の宿泊施設のレーティングを行っている。実のところ現在進行形でもあり、全ての施設のレーティングが終わったわけではないが、現状のカテゴリー別ホテル数、部屋数が下記となる。

 また、観光地に関する調査では、1998年にはカンボジア全土に161ヵ所の観光地が登録されているが、2018年には450ヵ所と20年で289ヵ所の観光地が新しく追加された。観光地と一言に言っても様々な種類があり、アンコールワットのような史跡だけでなく、プノンペンサファリのような人工的な観光施設、地方の村落を体験するコミュニティツーリズムなどもあり、その種類は年々多様化してきている。



  西村清志郎
Nishimura Seishiro

カンボジア在住歴15年、旅行会社、出版社、宿泊施設運営など長年にわたり 観光業に携わっている。現在は、観光省プロモーション&マーケティング部(はJICAシニアボランティア派遣満了)アドバイザーとして観光省に勤務している。主な業務はカンボジアへでのイベント、撮影コーディネート、日本人観光客、視察、学生ツアーなど誘致、広報活動などとなっている。高知県出身。


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