カンボジアに進出する日系企業のための
B2Bガイドブック WEB版

2020年3月11日
カンボジア進出ガイド

【法務・会計】

300 カンボジアの法律・税務・会計②(2020年1月発刊 ISSUE11より)

税務手続はますます厳格化していく Tax procedures become increasingly strict

 税務コスト負担の軽減につながるいくつかの租税緩和措置がはかられている一方、税務手続はますます厳格化していく環境は、特にコンプライアンス意識が高いと言われる日系進出企業にとっては様々な経営リスクの主要原因ともなる。

 税務情報が把握できず、監査や税務調査等で会計原則からの乖離や計上漏れ等を指摘され、追徴課税を請求されるケースが多くあるため、企業はまず自社の経理機能の強化が急務となる。

 日本人会計士が常駐しリーズナブルな価格でサービスを提供しているSCSグローバルコンサルティング(以下、SCS)の宮田智広氏は、「日本企業が海外進出するにあたり、本社の経理財務部門の方が常駐することは滅多にありません。そのため会計税務の知見や素養のある日本人がいない中、資金繰りの繊細なスタートアップ期などにおいて自社で会計税務を試みるも、後々申告漏れや会計と税務の不一致、必要書類の紛失などといったトラブルが発覚し、結果的に追徴課税等でコストが余計に膨らむケースがしばしばあります。ここカンボジアにおいても法制度が頻繁にアップデートされ、それがビジネスリスクにもチャンスにもなりますが、いずれにしても常に専門性の高い知識が必要になります」と話す。

 近年日本の上場会社の不適切会計の開示が増えており、中でもグローバル展開を進める企業の海外でのガバナンスが徹底されていないことによる不正の発覚の事例が増えている。



 同氏は、「カンボジアに進出される会社様も「カンボジアだから大丈夫だろう」という意識では、想定外の税金コストが課されることはもとより、現金の横領や発注金のキックバックなどの典型的な不正や書類の未整備による会計数値の歪曲などのリスクをはらむことに留意が必要です」と付け加えた。

 経済財政省は2017年10月、関連者間取引によってカンボジアで本来収めるべき税金を意図的に少なく調整することを防ぐため、移転価格に関する規制を通達した。それまでは関連当事者間取引について税務当局に再評価を行う権限を与えるという規定のみだったが、国際税務の潮流に則りカンボジアにおいても移転価格の概念が正式に導入されている。

給与の2回払いや年功補償制度 Seniority payments and twice monthly pay

 労働職業訓練省は全ての業種に対し、2019年1月から給与を月2回支給し、年功手当を毎年6月と12月に支給することを義務付けた。省令では、これまで無期契約の従業員の退職時に支払われていた解雇補償金に代わり、1年に2回(6月、12月)7.5日分ずつ、年間合計15日分の給与に相当する年功手当を支払うことが明記されている。なお、特例として縫製・製靴業を営む企業は、2019年以前から働いている従業員に対して、年間30日分の給与に相当する年功手当の支払いが義務付けられたが、過去の勤務期間も支給対象になるため、過去分の年功手当の一括払いを要求する労働者側が企業へ要求し、ストライキに発展するケースもあった。

 また、政府は今年3月、縫製業を除く労働者に対する年功手当の支給期限を2021年12月まで延期を決定したほか、2018年以前及び2019年以降の年功手当は、支払い時に損金算入が認めらた。このような動きに早急に対応するため、リアルタイムな状況の変化を知る必要あるほか、今後施行の可能性がある年金制度や社会保障制度の拡充にも対応できる体制を整えるべきだろう。

税務調査 Tax audit

 税務調査等を行う税務当局員の人員が人数およびその知見・経験値において更に増強され、最近は細かい内容の指摘が増えている。折衝において専門知識や経験値が益々必要になっていることから、今後は更に高い専門性を持った折衝力のある会計事務所が求められる。

 税務調査での指摘にはトレンドがあり、例えば、税法上、カンボジア法人の代表者もしくは本社からの長期出張者等に対して給与等を支給しなければならないとの規定はないが、カンボジア法人にて勤務し、給与・報酬を受領しない場合であっても、税務調査の際に給与・報酬額を推定し、給与税が課税される事例が散見された。また、注目している新たな動きとして、アイグローカルのドゥク・ダリン氏は、「最近、税務調査が活発化しており、カンボジアでの営業担当者等への未支給事項以外に出張命令書の不備や出張手当設定に対して指摘を受けるケースが散見されます。出張手当設定に関しては、公務員対する経費規定(政令216号)が準用され、役職によってそれぞれ出張手当を決定しなければなりません。政令規定より多額の手当が支給された場合、税務局より超過額部分に関しては福利厚生としてフリンジベネフィットタックスが課される可能性も有ります」とアドバイスする。


その他の「法務・会計」の進出ガイド

法務・税務・会計
法務・税務・会計
法務・税務・会計