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2016年6月9日
カンボジア進出ガイド

【不動産】

118 カンボジアの不動産②(2016年5月発刊 ISSUE04より)

住宅の賃貸 Rental Housing

117 カンボジアの不動産①から続き
 住居として外国人に人気の高いエリアは、チャムカモーン区のボンケンコン1地区(BKK1)。プノンペンの富裕層エリアといわれており、カフェ激戦区となっている。しかし、家賃が高いため、いろんなエリアに少しずつ分散が進み、その周辺のボントラバエク地区(BT)、トゥールトンポン地区(TTP)、ボンケンコン1、2地区(BKK2、3)、トンレバサック地区(TB)、プノンペンタワー裏の人気も高い。ボントラバエク地区やトンレバサック地区南部は新興住宅地で比較的新しい建物が多く、日本人が増えているエリアだ。また、ここに日本食屋などが並ぶ「絆ストリート」もあり注目のエリアである。立地的にPPSEZに勤務している方が多く住むトゥールコーク区のボンコック1、2地区(BK1、2)も高級住宅街として知られているが、設備の割に価格が抑えられた物件が多い。

 また、ロシアンマーケットの辺りも人気が上昇しており、比較的家賃が安価であることから欧米人を中心に外国人からの注目が集まっているエリアだ。このような居住エリアは生活のしやすさという点が重要であり、家賃の安さもさることながら、美味しいレストランやショップの存在は大きい。



 カンボジアの住居形態は、サービスアパート、コンドミニアム、ヴィラ、フラットなどがある。ライフ・デザイン・パートナーズの青山英明氏は、「プノンペンは非常に小さい町ですので、移動手段さえ確保できて渋滞にさえ気を付ければ、よほど職場から遠くない限り場所はそれほど問題にならないです。問題になるとすれば治安ですが、外国人でセキュリティを重視するのであれば月額350ドル~400ドルは最低必要になります。これが今人気のBKK1地区ですと最低でも500ドルからになります」と、特別なサービスが付かないアパートの場合の相場について語る。

 また、「高級物件ですとプール、ジム付きなど豪華な設備が付きますが、日本で同じ金額では絶対に借りられない条件の物件が安く借りられるのはカンボジアの魅力の一つですね」と同氏が語るとおり、サービスアパートは24時間警備のほか、プールやジム、部屋の掃除や洗濯など、ハード面だけでなく、ソフト面も充実している分、当然のことながら家賃は上がる。しかし、日本と勝手の違う環境のなか、少しでも快適に過ごす住居形態として駐在員を中心にサービスアパートのニーズは高い。

 忙しいビジネスマンのために買い物サービスもあり、日本人常駐のサービスアパートを提供するTAMAホームの上田武範氏は、「立地が良く、広くて家具もきれいというサービスアパートが人気ですが、1人であれば1,000~1,500ドルは最低かかります。ファミリータイプは2,000ドル以上するでしょう。クリーニングサービスには掃除や洗い物、リネン交換なども含まれていますが、お洗濯は付いていない所が多いようです。駐在員などのお客様には赴任期間が限定されているからこそ、心のゆとりや、ここで頑張って欲しいと言う意味も込めて、家に帰りたくなるような住まいを提供できたらと思っています」と語った。




 また、ホテルをサービスアパートとして提供しているヒマワリホテルのアンドリュー・テイ氏は、「私たちが提供しているのは単なるサービスではないということです。ホテルで時間を過ごすことそのものに、どれだけの価値を感じて貰うかということを大事にしています」と語った。仕事に集中するためにも住環境の整備は大切であることから、賃貸物件の選択には十分留意したい。

 1997年創業のローカル系不動産会社CPLのケイン氏は、「私たちはお客様にサービスを提供するときは3つの事項を詳しくヒアリングします。まず①お客様は何を求めているか、②場所はどこがいいのか、③なぜ物件を探しているのか、の三点。これらは時に個人的な内容を含みますが、嫌がらず出来るだけしっかりと答えて頂きたいなと思います。まずお客様がこの三点を曖昧にされていると、おそらく自身に合った物件を決めることが出来ないし、また私たちもご提案出来なくなってしまいます。お客様に100%のサービスを提供するために、この三点の確認作業は重要なものなのです」と住居探しのアドバイスをする。セキュリティや治安、住み心地など、重視する点を考慮し、現地をしっかりと見たうえで検討したい。

不動産の購入 Investing in property

 カンボジアでは憲法第44条において、外国人または企業が土地を所有することはできないと明記されているが、例外として土地を購入するためには、クメール資本51%以上の合弁会社により購入する等の条件がある。まず、購入する土地を選定する上で、売手の持っている書類がハードタイトルかソフトタイトルかを確認する必要がある。JICA国際協力専門員、磯井美葉氏は、報告書「カンボジアの不動産登記について」内で、権利証について以下のように記述している。

 Systematic RegistrationおよびSporadic Registrationにより発行された権利証または占有権証明書等は、実務上ハードタイトルと呼ばれる。

 これに対して、ソフトタイトルと呼ばれるものも流通している。これには登記手続の前提としてコミューンチーフ※1 が占有状態を証明した書類、Sporadic Registrationの「受理書」など、いくつかの種類があるようである。地籍局に登記されていない土地について、これらのソフトタイトルを相手に交付することによって、担保を設定したり、所有権を移転したりする慣行があるようだが、複数の人が同じ土地について権利を主張する等、不安定、不確実なものであり、紛争の原因ともなっている。

 所有権が認定され、登記がされた後に所有権移転等によって変更登記を行う際は、登記簿の記載を変更するとともに、旧所有者が手元に保有する権利証等を地籍局に提出し、権利証等にも登記簿と同様に変更の記載をすることになっている。


 一方で、コンドミニアムなどを小規模のオフィススペースとして区分所有する方法もある。コンドミニアムは当初は建築者の名義で所有権が登記され、分譲されると新しい所有者の名義が登記されるとともに、各戸の所有者に対しハードタイトルが発行される。これらは、コンドミニアムなどの区分所有建物を建築する場合の義務とされているが、プノンペン市内でも、権利証(ハードタイトル)のないコンドミニアムが売り出されている例がある。

 欧米系外国人クライアントを多く持つインディペンデント・プロパティ・サービス、CEOのデイビット・マーフィー氏は、「会社として物件を購入する場合、所有権を考えたほうがいいですね。権利証等がない物件の場合、有効な所有権の取り決めをする必要があります。正式に登記された会社の場合、ランドホールディングカンパニーを設立して土地を登記します。これだけではリスクが高いので議決権を51%以上にする必要がありますね。こうすればローカルパートナーの名義が含まれたとしても会社の判断に口出しをすることが不可能となります。さらにこれは人気の高い方法で特に住宅で多いのですが、ノミニー※2制度を利用するものです。カンボジア人の友人もしくはノミニーの扱いのある会社もしくは弁護士や不動産会社を通して設定します。あなたの資金で、しかし名義はカンボジア人のものになります。そこに100%の不動産抵当権を付けることにより、抵当の除外もしくは満額支払いがない限りは第三者に売り渡すことができないのです。このような手法で土地を守ります」と語った。

※1 コミューンチーフ: カンボジアの地方行政には、州、郡、コミューンという三つの行政区分がある。コミューンは人口1万5千人から2万人の規模をもつ行政体で、コミューンの下には村がある。一つのコミューンにつき8~10の村がある。
※2 ノミニー: 合法的にプライバシーを保護することができる。法人登記時にオーナーの個人情報を使うことなく登記することが可能。
119 カンボジアの建築・内装①へ続く


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