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2018年6月25日
カンボジア進出ガイド

【人材・コンサル】

243 カンボジアのHR・コンサル②(2018年5月発刊 ISSUE08より)

カンボジア人の日本語人材と英語人材 Cambodian Japanese-speaking and English-speaking workers

 2016年の日本語人材の給与相場(最終月給)は、日常会話レベルで367.2ドル、ビジネス会話レベルで762.6ドルだ。対前年度伸び率は日常会話レベルで2.2%、ビジネス会話レベルで7.7%と、これまでより伸び率は鈍化したものの、依然として日本語人材の給与は高い。



 技能実習生としてカンボジア人が注目されており、首都プノンペンには日本語学校が増えていることから、カンボジア国内では日本語教師としての需要が、また日本側では通訳者としての需要がある。こうしたカンボジア内外からの日本語人材の需要は高止まりを続けている。JICAの協力により設立され、民間セクター開発を促進するための人材育成とネットワーキングの拠点となっている施設、CJCCの大西氏は、「カンボジア国内から見れば日本語教育が活性化しています。日本文化はカンボジア国内で依然として人気なものの、他の文化や言語の存在感が高まりつつあります。建設現場やレストランなどでは、中国語が多く見られます」と話す。




 日本語人材はその供給不足から、英語人材と比較して賃金に倍の開きがあるといわれているとおり、双方のビジネス会話レベルの人材の平均希望月給には大きな開きがある。一方で、双方の日常会話レベルの人材では、顕著な違いは見受けられなかった。なお、年齢(横軸)によっては客体数が少ないことによって不適正な曲線が一部見られるが、年齢を社会経験年数と捉えた場合、年数が多いほど希望月給額は高くなる。
また、この数値は日本語と英語以外の言語が話せる客体は除外しているため、中国語やタイ語などの第三言語の能力を有する人材であれば、さらに高額になることが予想される。

現地採用外国人 Foreigner Local Employees

 カンボジア人のマネージャー職や技術職の月給相場が高止まりする中、費用対効果の点で注目されるのが現地採用外国人の存在だ。外国人にとっての生活環境も急速に向上するなか、彼らは自らカンボジアに身を投じて働くことを希望し、想い入れも強い。また、一方でスタートアップ企業の場合、事業立ち上げにおける初期段階において外国人を雇いたいという声がある。

 現地採用の外国人求職者の特徴として、かつて旅行で訪れた、学生時代にボランティア活動をしていた等、カンボジアという土地に思い入れがありカンボジアでの就職を希望するケースが多く見られる。また、アジアで既に働いている方がアジア地域内での転職を考える際、ビザが取りやすいという理由からカンボジア就職を検討する場合が、特にここ最近で多くなっている。

人材育成と定着促進 Human resources development

 カンボジアでは企業が求める人物像と、実際のカンボジア人が持つスキルに大きなギャップがある。企業としてカンボジア人が持つスキルを把握し、求人の条件を考え直すことも必要だ。IT業界は高度なIT技術者の不足からビジネスコストが上昇しており、業界の発展が停滞している。カンボジア資本のオンラインコンサル会社の報告書によると、21のIT関連ビジネスの技術者63名に対し調査したところ、75%が初級レベルで、競争力のあるIT人材として雇用可能なレベルに達していなかった。IT技術者が不足しているため、企業はハードスキルよりもソフトスキルを重視して採用を行っており、就職後の訓練でようやく業務に必要なレベルに達するという。そうした初級技術者の採用に多くの企業が膨大な資金を訓練費用に投じている。カンボジアの上級IT技術者は希少なため、経験豊かなインド人やフィリピン人のIT技術者よりも給与が高く(年間で1万3000ドル~1万9500ドル程度)、技術者同士の間で賃金格差が発生している。また、訓練で技術を身に着けても、高い給与を求めてすぐに転職してしまうため、企業にとっては財政的な損失を生んでいる。



 IT業界に限らず、ほとんどの業界で同様のことがあるため、熟練労働者が育たない。一方で、技術のスペシャリストになるチャンスを逃し、浅い経験と未熟なスキルを積み上げた労働者が行き着く先は、転職のスペシャリストだ。HRインクのダミーコ氏は、「カンボジア人は学ぶことに貪欲ですし、特に言語に関しては吸収スピードが速いです。人は失敗から学びます。失敗した際もサポートし、なぜ失敗を起こしたかという理由を考え、学べる環境を作り上げることが出来るはずです。特に人生における学びのほとんどのことは、仕事で得られます。教育だけでなく、仕事においても人々には成長する機会があるはずです」と語る。

 人材の向上には教育が重要だが、その担い手は教育機関よりも企業に求められているといえるだろう。しかし、長期間働いてくれるという前提が無ければ、企業は人材育成にコストを割き難い。それゆえ、定着促進が企業にとって大きなカギとなる。


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