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2018年12月17日
カンボジア進出ガイド

【医療・医薬】

280 カンボジアの医療・医薬①(2018年11月発刊 ISSUE09より)

カンボジアの医療事情 Medical Care in Cambodia

 外国人がより安心して生活できる医療環境が整いつつある。プノンペンを中心に外国人医師・歯科医師が診療にあたる医療機関が複数存在し、様々な専門科の医師が診療を行なう。一方、カンボジア人医師の水準に関しては、2012年にようやく国家試験が一部導入され、医師の水準も低い。病院を選ぶ際は、外国人専門医師や、海外で訓練を受けたか、外国の医師免許を持っているカンボジア人医師を有し、国際標準医療を導入している医療機関を選ぶことが望ましい。

 救急医療については、国内で救急治療を受けられる病院もあるが、質にはばらつきがあり、2次又は3次救急では、国外の医療適格地へ搬送される場合もある。また、高額な治療費がかかり、輸血用血液は不足しているなど懸念も多い。政府によると2017年のカンボジアにおける交通事故死者数は1780人。死亡記録がない日はわずか3日間だった。万が一に備え、カンボジアの救急搬送手段をあらかじめ理解・確保したい。

 カンボジアはインドから医薬品や医療機器を多く輸入しているが、国営銀行のインド輸出入銀行は、専門医療サービスの需要が高まっているカンボジアにおいて、インドのヘルスケア事業者や教育機関が進出するための資金や投資家の確保に既に重きを置いている。インドのスレシュ・プラブ商工大臣は、「インドは、ASEAN諸国との関係を強化する一環として、カンボジアに病院と医科大学を設立する」とインドのメディアに語っており、インドのヘルスケア業界は先進的であり、プロジェクトの実現と医療分野における人材育成支援が期待される。



 サンインターナショナルクリニック(以下、SIC)の留守卓也医師は、「プノンペンは都市化が進んでいるので、病気の質が変わってきています。途上国特有の感染症としてマラリアやデング熱という病気は、都市部では改善されている一方で、それに変わって、先進国でもかかるアレルギー性疾患や慢性的な病気が増えています。両方に対応するたけの医療のパワーが無いというか、プノンペンでは先進国でしか見られない病気にかかる患者もいるので、幅が広すぎて追いついていません。外国人の患者もたくさんいらっしゃいますが、このクリニックに来る方の病気は、日本でも普通にみられる病気です。よく言われているのですが、衛生状態がよくなると今度はアレルギー疾患が増えます。私がカンボジアと関わってからの四年間の間に病気の質が変わっています。外国から来た医師、医療関係者、もちろん国内の医療関係者もそうですが、それを理解する必要があります」と語る。

カンボジアの衛生管理 hygiene management in Cambodia

 保健省によると、過去3年間の食中毒の発生件数は、2015年33件から2017年9件と減少しており、以前よりもカンボジア人の衛生への理解は高まっている。外国人は、母国とは違う環境であることを踏まえた健康管理が必要となり、衛生環境への配慮は欠かせない。

 保健省は2018年11月、カンボジアの2000軒以上のレストランや食堂のオーナーが、食品安全に関する訓練を受けるための登録を同省にしていないと発表した。同省によると、すべてのレストランオーナーと調理業者に対し、衛生的な方法で食品を調達するための訓練を受け、店舗が省の基準に適合していることを証明するよう求めている。

 SICの野々村秀明医師によると、「日本人旅行者や在住者の診察をしていると、急性上気道炎・気管支炎などの呼吸器疾患と急性胃腸炎・下痢症などの消化器疾患が7割以上を占めています。これらを見ると、やはり生活環境の違いから体調を崩される方が多いようです。また、カンボジア在住歴の短い人ほど、大気汚染による咽頭痛や不衛生な飲食による下痢症などを患う傾向にあります。特に若い人は自分の健康を過信せず、現地の生活に慣れるまでは少々コスト高でも安全で清潔な生活環境を整えることが大切です」と話した。

 また、職場環境においては、カンボジアの労働法では従業員が50人以上いる企業は、緊急事態の対応のため少なくとも1人の看護師がいなければならないが、工場全体の88%が医務室の設置を完了または設置中だ。労働職業訓練省イット・ソムヘーン大臣は、縫製工場労働者の業務中の失神を防ぐために、従業員を治療するための医療施設を持たない工場に罰金を科すことを発表した。同省の報告によれば、食堂を設置している工場は33%、授乳室を持つ工場は21%、託児所を要している工場はわずか28%と発表された。同省が設定したガイドラインによると、全ての工場には、騒音、ごみ、ほこり、煙、悪臭から離れることができる医療施設が必要であるとされている。

カンボジアでかかりやすい病気と健康管理 Staying Healthy in Cambodia

 保健省は、H1N1型とB型インフルエンザを雨季に流行する季節性インフルエンザと指定している。また、熱帯モンスーン気候に属し、年間を通して高温多湿のため、デング熱・マラリアといった感染症に注意が必要だ。

 保健省によると、デング熱が5~6年周期で急増するデータがあることから、2018年にデング熱が急増する可能性を警告している。政府は2018年7月、2018年上半期のデング熱症例数が昨年の同じ期間に比べて2倍以上増加していると発表した。2018年のカンボジアのデング熱の感染症数は、年1万4500人の平均症例数に対し、1万7000人程度と予測されている。保健省の寄生虫・昆虫・マラリア対策センター(CNM)は、2018年1月から6月にかけてデング熱が3284件発生し、そのうち7件が死亡例だったと発表した。前年同期はわずか1580件の発症例と1件の死亡例のみだった。

 CNMの責任者は、「6月から8月にかけてデング熱の症例数は増加する可能性がある。2018年は熱帯地域に雨が多く、他国でも症例が増えている。同省は、毎年処方箋を準備しており、約300トンの薬と専門医療スタッフが対応している」と述べた。

 SICの野々村医師によると、「デング熱の症状は、突然の高熱・頭痛・関節痛・筋肉痛・倦怠感などで、解熱時には全身に発疹が現れることもあります。一般的な風邪症状と似ているものの、喉の痛みや咳といった呼吸器症状はあまりないようです。時には症状がほとんど出ず、かかったことに気づかないケースもある」と、外国人にも充分な警戒が求められるという。ワクチン接種は実施されておらず、デング熱対策としては、蚊に刺されない対策が重要だ。



  ケン・クリニックの奥澤医師は、「カンボジアで体重が増加したという外国人を多く見ますが、その原因は主に食生活にあります。カンボジア人の食生活は、おかずを少なく白米を多く摂取する傾向があります。肥満、糖尿病、高血圧の主な原因は白米などの炭水化物であり、カンボジア人同様の食生活を送るとこういった病気にかかりやすくなります」と警告している。

 しかし、プノンペンの在住外国人の多くはビジネスパーソンであり、忙しさゆえに不摂生に陥ることも多いだろう。SICの野々村医師は生活習慣病について、「カンボジアの在留邦人の年齢層は比較的若いため、慢性疾患の有病率は低いかもしれませんが、長期滞在する外国人には呼吸器疾患や消化器疾患、感染症など急性疾患が多いです」と語る。日々の自己管理のほか、体調に異変を感じた場合は早急に医療機関を受診することが大切だ。

  ケン・クリニックの奥澤医師は、「病気だけでなく、バイク乗車中に発生する事故によるケガも多いです。車や他のバイクとの接触、スリップ、ひったくりに遭って引きずられるといったケースです。ひったくりに遭った場合、最悪肩鎖関節脱臼という鎖骨と肩甲骨の靭帯が完全に切れて深刻化する方もいます」と語る。


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