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2017年12月8日
カンボジア進出ガイド

【人材・コンサル】

215 カンボジアのHR・コンサル③(2017年11月発刊 ISSUE07より)

人材育成と定着促進 Human resources development

 カンボジアでは企業が求める人物像と、実際のカンボジア人が持つスキルに大きなギャップがある。企業としてカンボジア人が持つスキルを把握し、求人の条件を考え直すことも必要だ。

 IT業界は高度なIT技術者の不足からビジネスコストが上昇しており、業界の発展が停滞している。カンボジア資本のオンラインコンサル会社の報告書によると、21のIT関連ビジネスの技術者63名に対し調査したところ、75%が初級レベルで、競争力のあるIT人材として雇用可能なレベルに達していなかった。IT技術者が不足しているため、企業はハードスキルよりもソフトスキルを重視して採用を行っており、就職後の訓練でようやく業務に必要なレベルに達するという。そうした初級技術者の採用に多くの企業が膨大な資金を訓練費用に投じている。カンボジアの上級IT技術者は希少なため、経験豊かなインド人やフィリピン人のIT技術者よりも給与が高く(年間で1万3000ドル~1万9500ドル程度)、技術者同士の間で賃金格差が発生している。また、訓練で技術を身に着けても、高い給与を求めてすぐに転職してしまうため、企業にとっては財政的な損失を生んでいる。

 IT業界に限らず、ほとんどの業界で同様のことがあるため、熟練労働者が育たない。一方で、技術のスペシャリストになるチャンスを逃し、浅い経験と未熟なスキルを積み上げた労働者が行き着く先は、転職のスペシャリストだ。

 CDLの小柳氏は、「会社が社員にとって魅力的になることも必要だと考えます。気軽に相談できる環境を整える。見当違いと思っても否定せずに聞き入れる。仕事がし易い環境を整える。そういった部分を改善するだけで、意外に長く働き続けてくれることもあります。職場の環境づくりが長期間の労働に繋がり、カンボジア人の基礎能力の向上につながると考えます」と語る。



 また、HRインクのダミーコ氏は、「カンボジア人は学ぶことに貪欲ですし、特に言語に関しては吸収スピードが速いです。人は失敗から学びます。失敗した際もサポートし、なぜ失敗を起こしたかという理由を考え、学べる環境を作り上げることが出来るはずです。特に人生における学びのほとんどのことは、仕事で得られます。教育だけでなく、仕事においても人々には成長する機会があるはずです」と語る。
 
 人材の向上には教育が重要だが、その担い手は教育機関よりも企業に求められているといえるだろう。しかし、長期間働いてくれるという前提が無ければ、企業は人材育成にコストを割き難い。それゆえ、定着促進が企業にとって大きなカギとなる。


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