2020年4月15日
――カンボジアにおける食品卸業界、外食産業を取り巻く環境について教えてください。
小池 全体の経済成長に牽引されて外食産業、食品卸業における景気は上向きです。国内の日本食に関連するレストランの数は210件を超え、急激ではないものの引き続き増加傾向が見られます。
日本食は継続的にカンボジアの富裕層から愛されており、「オマカセ」の認知など特に寿司のブランド価値が高まっているようです。日系のみならず、現地系、中華系、台湾系オーナーの寿司レストランも以前より多く見られるようになりました。寿司は日本文化発信の中心であるAEONモールでも販売数が増加するなど、富裕層のみならず、中~低所得層の皆様にもますます身近なものとなっています。
レストランや日本食取り扱いスーパーやショッピングモールの充実と多様化もまた、高所得者以外の方々への日本食文化浸透の大きな手助けとなっています。もっともっと多くのカンボジアの方々にとって日本食が身しいものになって欲しいと、私達も日本をテーマにした各種イベントへの参加や、SNSを用いた宣伝、新しい商材のマーケティングなど積極的に行っています。
加えて中華系の資本・人口が多く流入している事も、私達のビジネス環境に大きな影響を与えています。中国人による消費は今後も増加傾向にあると予想され、私たち食品卸売業者にとって彼らの趣向を考慮して展開してゆくことが重要です。
プノンペン市内にチャイナタウンと呼ばれるエリアも出現し、賑わいを見せています。そういったエリアに日本製品を投下してゆくことも狙ってゆきたいと模索しています。
――そうした業界の状況の中で、貴社を含めたプレイヤーにおいてどのような影響を与えていますか。また課題がありますか。
小池 日本食ブームは始まっています。①レストランの多様化に対して、適切で質の高い商品の提供。②高所得者以外の方々に手にとって頂ける小売り用商品の開発。③本格化する日本食、文化の浸透に備えて皆に認知される商品ブランド戦略。この3点が肝要だと考え、取り組んでいます。
①②について、私達プレイヤーは輸入・仕入れの点でいち早く効率化を図り、多様な商品展開と輸送コストの軽減による価格の維持に注力することが重要です。安価な価格設定は重要ですが、国の発展に伴って輸出入に関わる法制税制が整ってきているため、違法で安価に輸入を行うような企業は存続が不可能になります。正規の方法で確かな商品をお届けし、安心して手に取っていただくことは確実に行いながら、効率の良い仕入れと輸送によって価格の安定化を図る必要があります。私達は本年より、陸続きのタイにも目を向け、バンコクでの買い付け強化体制に取り組んでいます。より効率の良い輸入方法を探したり、新しい商品を展開できるよう頑張っています。
③については、各メーカー様との連携が欠かせません。伸長傾向とはいえ、まだまだ成長過程であるカンボジアの日本食市場です。中長期的な視点をメーカー様、商社様と共有しながら、商品とブランドの浸透に努めています。販売代理店として取り扱わせていただいているサッポロビールは継続的な販売、レストランをお借りしての試飲イベントやスーパーでプロモーション展開、各種イベントでの露出などを積極的に行った効果が現れ、毎年70%以上の販売伸長を達成しています。一定の期間を要しますが、アクションした事が確実に販売数に反映しています。
――また、様々なプレイヤーがいる中で、貴社のポジションについて伺えますか。
小池 「商品を仕入れて売る」だけではない集団でありたいというメッセージを、社員ひとりひとりが持って行動している点が挙げられます。
レストラン様に対しては、食材提供以外の事もなんでもご相談いただける体制を作っています。市場リサーチと物件探し、簡易的なレシピ提案とメニュー作成、オープン後の宣伝のお手伝いなど、運営にまつわるあらゆる部分でお手伝いさせていただきます。出店して終わりではなく、沢山の良いお店が長く続いてゆくことが私達にとっての喜びや売上の増加に繋がりますので、目指す方向はお客様と同じWIN-WINのお付き合いを望んでいます。お客様と末永い視点で、一緒にカンボジア日本食を盛り上げてゆく事が私達の理想です。
各食品メーカー様や商社との強い連携も私達が注力していることの一つです。
日本や他国で蓄積された成功事例などを共有いただきながら、これからの市場であるカンボジアにマッチした商品・宣伝戦略を選んで投下し、目標設定を行います。カンボジア常駐の私達メンバーが、現場で日々活動、フォローし、状況を共有しながら進める形をとっています。
――今後、外食産業で進出する日本企業に対して、留意しておくべき点などアドバイスをください。
小池 日本食産業は右肩上がりに伸長しています。しかし、とにかく出店すれば成功するという訳では勿論ありません。
アドバイスをさせていただける立場ではありませんが、カンボジアの市場、文化、生活の事などお伝えし、戦略の材料にしていただける事は大いにあると思います。また、ご希望に沿った特別な商品の供給なども勿論承ります。
ぜひとも気軽にお声掛けいただければと考えています。