2016年5月31日
―――初めにレオニーさんの子供の頃の話を聞かせてください
レオニー・レスブリッジ(以下、レスブリッジ) オーストラリアのメルボルンのあるビクトリア州で生まれ、シドニーとメルボルンで教育を受けました。大学はシドニーのニューサウス・ウェールズ大学とメルボルン大学で学士を取り、ロイヤル・メルボルン工科大学院(RMIT)で修士課程を経て、スインバン大学院で博士課程を卒業しました。以前からアジアに興味があり機会を見つけて旅行に行っていました。アジアに興味を持ったのは、アジアの雰囲気が好きだからです。人々はエネルギーに溢れ、生活のペースはゆったりとしている。そして、どんどん経済発展が進んでいて、チャンスに満ち溢れています。ANZでアジアに関わることが多かったのも、私自身がアジアに強い興味を抱いていたことが一因だと思います。
―――学校を卒業してからの経歴を教えてください
レスブリッジ ANZには14年間勤めていますが、それまでは大学院を卒業してからマネジメントやコンサルティングに関わる仕事をして、たくさんの経験を得ることができました。金融機関や電気通信企業、メーカーのお客様へのコンサルタントを経験し、その後、オーストラリアでANZに入行しました。
―――上海とインドネシアを経て、カンボジアに来られましたね。カンボジアに関してはどのように感じていますか
レスブリッジ カンボジアの人々はとてもエネルギーに溢れています。まだ若者が多い民主主義国家です。経済発展しようという強いモチベーションと、他のASEAN国家に負けまいとするハングリー精神によって急速に発展しています。大いなる可能性を持つ国だと感じています。
―――中国とインドネシアで働いていた上で良い経験になったことは何ですか
レスブリッジ 両国の経済動向やどのように周辺国とネットワークを築いてきたのかを理解し、リスクマネジメントも経験しました。両国がマーケットの発展に合わせて銀行のあり方が変わり、政策の作り方が変わっていったことを知ることができたことも良い経験でした。その経験を元にモデルケースとしてカンボジアに置き換えることができることは強みに繋がっていると思っています。カンボジアが今どのような状況であるのか、周辺国や中国、インドネシア、日本などと比較し最良の策を取ることができます。オーストラリアでの経験も併せて、今後カンボジアで起こり得る事象について自身の経験に基づいて対策を練ることができます。
―――リエルの流通量はどれくらいでしょうか
レスブリッジ リエルの流通量は増加傾向にありますが、未だ取引量の80%以上がドルベースで預金量の90%以上がドルです。中央銀行にとっては、現地通貨の普及は安定した経済を保つ為の金融手段になります。ただその為には市場の理解と多大な協力が不可欠です。
―――米ドルの使用について問題はないでしょうか
レスブリッジ 政府が安定した経済を実現していく上でのポイントは、貨幣量と対外投資などの資本収支のコントロールです。これらをどう調整するかが、カンボジアが今後どうなるかを分けることになるでしょう。しかしドル化経済では、政府が経済をコントロールする力が十分に発揮されません。ですので、自国通貨のリエルをどう位置付けていくかを考える必要があると思います。確かに経済は強いモチベーションに支えられ、急速に成長していますが、中央銀行を元にリエルを基軸通貨とした場合、経済活動がどのような姿になるか理解しなくてはなりませんし、また投資家や市場からの理解を得る必要があります。
――― ドル化経済の及ぼす今後の影響はどうでしょう
レスブリッジ 政府がドルを元に経済を管理するドル化経済では、短期的にはドルの信頼性に支えられ、外国投資家を誘致しやすい状況であると思います。今後、自国通貨で経済を進めて行くとしたら、先述の様に市場の理解を得る必要があります。(取材日/2016年4月)
(次回へ続く)