カンボジアに進出する日系企業のための
B2Bガイドブック WEB版

業界別インタビュー

2017年7月26日

私の仕事はマネジメントをすることではありません[観光・飲食] ノエル・フーラー (1/2)

飲食・観光

サン&ムーンホテル Sun & Moon Hotel
ゼネラルマネージャー General Manager: ノエル・フーラー Noel Furrer
経済成長著しい中で、GDPの12%を観光業が占めるカンボジア。中でもホテル業界は近年、日系ホテルや大手インターナショナルブランドの進出が話題になっている。今回は名だたる高級ホテルの立上げや勤務経験を持ち、ホスピタリティ業に精通しているサン&ムーンホテルのゼネラルマネジャー、ノエル・フーラー氏に話を伺った。(取材日:2016年10月)
シェフから、錚々たるホテルの立ち上げへ

――これまでのキャリアを含めて、自己紹介をお願いします

ノエル・フーラー(以下、フーラー) 私はスイス生まれです。もともとシェフで、スイスの伝統的な5つ星ホテルでシェフをしていました。その後スイスの最大手のホテルでサービスやシェフをした後、ロンドンに行き、ダイアナ妃や世界のセレブが集うようなホテルでセレブリティシェフに従事しました。それまで私は常にキッチン=バックにおり、当時働いていたシェフたちはそれを好んでいましたが、私はそうではありませんでした。満足できなかったのです。そこで、お客様の声や評価を直接聞けるフロントの仕事を希望し、私はロンドンを離れ、スイスのホテルマネジメント学校で2年間ホテル経営を学びました。学校は、ホスピタリティ業界の経験者がいく学校で、スイスには他にもローザンヌなど素晴らしい学校はたくさんありますが、4~5年など時間がかかります。働くことが好きでしたし、そんなにお金もかけられなかったですしね。

 その後は、イベントビジネスをしようと自分でお店をオープンしました。イベントはミュージカルのようなものです。ショーへの出演はしませんでしたが、チケット販売、バー、飲食、イベントなどショー周りの全てをやりました。これまでお話した私のキャリアには統一性が無いように思われるかもしれませんが、全てのキャリアに関係したのが、飲食とホスピタリティです。

 しかし29歳の時、「スイスが今後50年成長するか」を考え、本当にこのままスイスにいいのだろうかと思っていたところ、親友が香港に来なよと言ってくれました。そこで、ビリオネアたちが集まるような香港の伝統的なクラブから仕事のオファーがあり、「今香港に行かないと二度とチャンスは掴めないかもしれない。まだ30歳前だし、腰を落ち着けたくない」と思い、香港にいった。ただスイスを離れるとき、「1年で戻ってくるからね」という気持ちでしたが、今ではもうアジアにきて13年。まだアジアにいます。もちろん家族に会いになどは帰りますけどね。

 香港にいって、セレブリティやアーティストとのネットワークができ、VIPをお客様としたスカンジナビアレストランを香港で開きました。当時は、金融危機の前だったので良く働き良く遊ぶのがファッショナブルでした。その後、香港のランドマークとなるグランドハイアット香港からオファーが来たときには喜びましたよ。そこで2年間勤めた後、ミュージックバーの立て直しや、香港でも有数のVIPに依頼された8店舗の飲食店のマーケティング&PRダイレクター職、マカオで2500部屋のホテルの立ち上げなどを行いました。


お客様はゲストのゲスト

――その後、再度ご自身で会社を立ち上げられたとのことですが、どのようなモチベーションで行われたのでしょうか

フーラー その後スタートしたビジネスは、どうやって人とコミュニケーションをするか、どうやって仕事へのモチベーションを高めるかをコンサルティングするコミュニケーション会社です。例えば、今の時代誰もが携帯電話を持っていますよね。人々と繋がり、予定を管理し、思い出を残すことができる。私はそれになりたいんです。それをするべきだと押し付けるのではなく、なぜその人がそれを欲しいのかに焦点を当てたいと思っています。

 サンアンドムーンには商品がありません。何を売っているか言わないのです。なぜならば、サービスは経験するもので、作り上げるものだからです。ビジネスをする上でコミュニケーションは非常に重要です。良いコミュニケーションがスタッフのモチベーションを上げ、信頼を生む、人々の関係性を維持できる。私に連絡をしてくる人は何かしらコミュニケーションにおける問題を持っています。

 フィリピンとインドネシアでホテルの立ち上げをした際、アジアにはたくさんのホテルがありますが、オーナーはホテル好きな人が多く、ホテルの経営を知っている人はいませんでした。そこで私の出番なのですが、私は決してマネジメントをするわけではありません。するのはチームを作り、働くスタッフのモチベーションを上げることです。もし、力を行使してスタッフを動かせば、スタッフはミスを恐れ自分で働かなくなります。アイデアを出しても貰えるお給料は一緒ですからね。しかし、自分の仕事の役割を知り、自分の仕事を好きになるとスタッフは自然にお客様のために動きます。

 また、もしチームが嫌いで上司が怒ってばかりいれば、スタッフは仕事をするのが嫌になります。そのためサン&ムーンでは、職場環境を、安全で楽しく、働きやすい環境に保っています。我々は自分のチームのこともゲストだと思って接する哲学があります。そして、本当のお客様は、ゲストのゲストです。同僚のゲストならどうして欲しいか。より丁重に接するようになりますよね。


――他のホテルと比べて、サン&ムーンホテルの魅力を教えて下さい

フーラー スタッフの教育レベル、ホスピタリティレベルの高さはカンボジアでは最高だと思います。

 ハード面では、レストランやバーはもちろん、ジムも完備、スカイデッキからは360°プノンペンの景色が見渡せ、屋上にはインフィニティプールもあります。また、DJが使えるイベントスペースもあり、最近では週末のイベントなども有名になってきました。

 主なお客様は、個人の方やカップル、少人数のグループ、シニアエグゼクティブの方々も増えています。10~12人で利用できる会議室もあるからですね。価格帯は、時期にもよりますが80-120ドルです。
 
 特徴的なデザインはフランス人デザイナーによって行われ、何がカンボジアに足りないかをマーケティングした結果、モダンなものがいいという結論になりました。証明にはLEDを使ったり、ロビーの香りや制服選びなど、1つ1つにも、こだわって選んでいます。オーナーはDr.オクニャチアラタナですね。

お客様との経験が、コンピューターに代わることは絶対にない

――カンボジアの観光産業について教えて下さい

フーラー 都市でも地方でも、観光業は今とても良い傾向にあります。特にビジネスでの来訪が多く、ビジネスが成長するとホテル業界も自動的に成長します。国際的なホテルチェーンも6社か7社プノンペン参入を表明したことから分かるようにプノンペンが成長している間は、観光業界にとっては魅力的でしょう。政府も観光業の需要に気付き、インフラ整備を始めています。また、ホテル&レストラン協会なども充実しており、これは、インフラの変化や、政府の改正など、必要な情報を知るのに非常に良い役割です。我々も良い関係性を維持していますよ。


――カンボジアの観光産業に必要なものはなんでしょうか

フーラー ホスピタリティ産業においては、教育面の投資が増えることを期待しています。仕事は、人々に自信をもたらし、献身的な人柄にします。学校や教育への投資は、人の心を開くことが出来る。これはカンボジアだけではありません。

 現在、我々のホテルには130人の従業員がいますが、その内の半分は教育を受けていません。赤ワインも白ワインも分からない。その点で、ホテル業界は難しいですね。ホテルのお客様は、以前アメリカやシンガポール、フランスなどを訪れた経験がある人が多くイスタンダードを知っています。しかし、働く当人達はホテルに泊まった経験がなく、ホテルのコンセプトを知りません。これは大きな挑戦ですね。従業員は、素敵に振舞いたいけど分からないのです。そのため、ホテルについてはもちろん、心構えや話し方、ボディランゲージなど本当に多くを教える必要がありますし、これを国際的なレベルまで引き上げるのは難しいです。その意味で、時間、情熱、教育などホテルには多額の投資が必要ですね。
また今後は協会主導で、人事育成やホスピタリティの基本知識を持った人材を市場に出すサポートをするべきですし、我々もその手伝いをしたいですね。なぜかですか?好きだからです。我々のビジネスは人です。お客様との経験はコンピューターにとって代わることは絶対にないですから。
次回へ続く


サン&ムーンホテル Sun & Moon Hotel
事業内容:ホテル事業
URL: http://www.sunandmoonhotel.com/

その他の「飲食・観光」の業界インタビュー