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業界別インタビュー

2015年6月10日

中小企業がカンボジアの発展のために何をすべきかを考えていてやっていきたい[金融]永田哲司 (1/2)

金融・保険

ソナトラグループ 
CEO: 永田 哲司 Nagata Tetsuji
証券会社がブルームバーグで長年培った金融知識を武器にベトナムで起業するも、発展途上国でのビジネスならではの手厳しい洗礼を受けた、永田哲司氏。カンボジア人パートナーとの運命的な出会いから、カンボジアでソナトラグループを2012年設立し、現在ではマイクロファイナンス業や建設業など様々な分野で活躍している。永田氏のこれまでの実体験と基幹ビジネスであるマイクロファイナンス業界について伺った。
ブルームバーグから一念発起し、39歳で独立

――まずは自己紹介と会社紹介をお願いします。

永田 哲司(以下、永田) もともと私は大学卒業後、東京に本社のある三洋証券という証券会社で7年ほど働きました。その間、社費でアメリカに留学しMBAを取得しました。三洋証券が倒産する1年くらい前に、たまたまブルームバーグにヘッドハンティングされて、そこで10年ほど務めました。セールスアナリティクス部長という役職だった時、過去の例を見ると45歳ほどで退職を勧奨されるのが外資系企業ですので、自分もそこまで務めるきるかどうかを考えた結果、40代に入る前に独立してみようと思い、39歳で独立しました。

 私は今年で50歳になりますから、創業して約10年経つことになります。それまで培った金融関係の知識を活かそう考えましたが、私のような小さな企業家が戦っていくのに、当時ブームが到来していた中国で勝負しても勝てないと思い、東南アジアを考えました。タイやインドネシア、香港やシンガポールも行きましたが、そこでも戦えないと考え、消去法でベトナムを選んだのです。

 まず、私はプライベートエクイティファンドを組成して、約10億円の資金調達をし、ベトナム企業の5社に約2億円ずつ投資をしました。大和や野村証券が組成する大手のファンドに勝つためには、特色を出さなければならないと思っていましたので、ターゲットファンドといって、ある特定の会社に集中的に投資し、日本の大手企業との合弁や、企業提携をさせる事により、その会社の企業価値を上げるという手法を選択しました。今では当時の2倍の規模である、約20億円規模の資金運用を行って居ります。

 私たちは、ローカルの上場予備軍の会社を投資対象にしましたので、投資先企業の業績はある程度経営も安定しています。私達がベトナム現地企業に投資をし、その後、私達の仲介のもと合弁事業迄、結びつけた実際の代表例は関西ペイントとアルファナム社の合弁になります。今年も社名は言えませんが大手2社と話し合いをもって居り、年前半には決まる事になるでしょう。

ベトナムでの失敗により学んだ新興国ビジネスでの教訓

――投資家から資金を調達したら、失敗はできませんね。

永田 失敗もあります。あまり記事には書いてほしくないですが(笑)。二重帳簿も結構あるし、ベトナムに限らないと思いますが、オーナー企業の場合は色々な形で利益を個人に還元させている事も多々あります。ベトナムで失敗したときは国営企業でした。日本では考えられないようなことが起こります。過半のターゲットファンドのパフォーマンスが良くても、2ターゲットファンドの運用パフォーマンスの悪化を招いてしまいましたので、投資家には迷惑をかけてしまいました。この時、途上国の投資は信用できる人と組まなければだめだということを痛感しました。

 よって、カンボジアでは、JETRO視察ツアーで知り合ったソクナ氏と、1年以上かけて親交を深め、2010年に一緒に合弁事業を始めました。それくらい慎重になりました。やはり、一番大事なのは人です。外国人投資家から言えば、会社の業績よりは、組む相手やオーナーの力量、本当に真面目で他人を騙さない人とか、そういうのを見極めなければなりません。私はベトナムで鍛えらましたし、当然損失も出しました。投資する時はだいたい私個人の資金も入れますので、投資家の方々もそれを知って居り信用して頂けます。パフォーマンス悪化の際は、勿論、自分の資金も損失を被りました。

 具体例を出しますと、米を輸出している既得権益を持ったある国営企業です。社長を始めマネジメントティームが全て役所からの天下りで、米の輸出ができる国営企業としてはハノイ、ダナンとホーチミンの3国営企業しか無いのですが、そのうちのダナンの会社が小さく、一番最初に民営化するということで、我々が株式の約10%を引き受けたのです。規模も大きく売り上げが日本円で約200億円はありましたが、利益が年間で約2000万円程度しかなく、投資効率が悪い会社でした。

 いろんな会計資料を調べた結果、コスト削減できると踏んだので投資をし、自分自身も社外役員になったのですが、売り上げが毎年10%強上がるのに、翌年になっても翌々年になっても利益は2000万円のまま。怪しいと思い調べましたら、社長以下マネジメントチームが背任行為をしていたのです。農家に肥料を売る際に中国から輸入するのですが、そこと結託して高い値段で買いバックマージンを受け取っていたのです。みんなでやれば怖くないという感覚で、全員が会社を食い物にしていたことがわかりました。

 改善するよう、一緒に投資したベトナム人のオーナーと共に訴えましたが、向こうは警察もグルになり、結局もみ消されてしまいました。これが正に、新興国への投資リスクだと痛感しました。いくら儲かったとしても、彼らの背任行為を野放しにしている状況のままでは株主にとって意味はありませんので、購入した金額の半値で株を売却することになりました。

 やはり、うまい話ほど裏があります。おかしい所がないかを何度も確認しながら投資する。人もすぐに信用せず、いろんな裏をとってやるようになりました。損失を出した事はとても辛い思いとなりましたが、この経験により、同じ過ちを犯さないよう十二分に注意を払い投資を行うようになり、その分運用パフォーマンスの向上につなげる事が出来ました。

カンボジア人のビジネスパートナーとの出会い

――そのご経験をカンボジアでのビジネスに生かしているんですね。

永田 カンボジアのビジネスパートナーはソクナ氏です。もう長い付き合いです。基本的には信頼できる人に相談して、やるやらないを決めています。パートナーを決めたら、結婚と一緒で浮気をしない。一生一緒にやっていこうという気持ちなので、カンボジアで私と組みたいと言う人が居たとしてもやりません。私の場合、運よくカンボジアで良い人と巡り合うことができました。ソクナ氏と2010年から始めて5年ほど経ちますが、お陰様でビジネスは順調です。

 ソナトラグループは、マイクロファイナンスを基幹事業として2010年から始めています。グループと言っても実は、持ち株会社を作って居りませんが、お客様にブランドイメージを持って頂きたいと思い、会社を束ねグループとして活動を行って居ります。グループのメインは8社あり、基本的にはソクナ氏と私がメインの株主で、その他、様々な方々と組み、各々の会社を作っています。

――ソナトラの名前の由来は。

永田 ソクナ氏がソキメックスというガソリンスタンドを辞め、新しいグループを作ろうとした時に、ソクナトレーディングという名前を思いついたようです。それを縮めてソナトラとなりました。2010年にソナトラグループを立ち上げるとき、私に声がかかりました。当初はマイノリティシェアで始めるという話でしたが、ソクナ氏は金融関係の経験が少なかったので、私も深く関わることを依頼され、結果、現在はどっぷり浸かっています(笑)(後編へ続く)(取材日/2015年2月)


ソナトラグループ 
事業内容:マイクロファイナンス機関
URL: http://www.sonatra.com.kh
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