2018年12月14日
――自己紹介をお願いします
2002年に旅行で初めてカンボジアを訪れ、2004年からカンボジアの孤児院で働き始めました。その後、現地の日系旅行会社に就職し、2013年までは旅行会社を行いながら、出版社、ゲストハウス、飲食店など、観光に関係する事業を主に行ってきました。その後、JICAシニアボランティアの募集でカンボジア観光省内での広報業務があり、2017年10月~2019年10月までの期限付きボランティア派遣として、観光省プロモーションマーケティング部で働くこととなりました。
――観光省の仕事について教えてください
観光省で業務を行っていますが、JICAからの派遣となりますので、主な仕事は配属先部署の人材育成や業務補助などとなります。また観光省からのリクエストは“アンコールワットがあるシェムリアップ以外のエリアに日本人観光客を増加させる”こととなっていますので、どうすれば日本人観光客を増やすことができるのかという視点で、日本人マーケットに向けた観光施策などを配属先の同僚たちと一緒に行っています。
マスタープランの中には様々な施策がありますが、中長期的な視点では、日本とカンボジアを繋ぐ直行便を増加させることが大きな鍵だと感じています。現状、成田‐プノンペン間に全日空が直行便を就航しておりますが、今後、両国の地方都市間の直行便などが就航すれば、さらなる日本人旅行者の増加が予測されます。その場合、日本から訪れる日本人観光客だけの利用だと搭乗率に不安があり、どこかで限界が訪れるため、カンボジア人が気軽に日本に訪れていただけれるようにすることが、新しい路線の就航に繋がると考えています。
事実、カンボジアもすでに中進国の一つとなっており、都市部だけを見るとカンボジア=貧しというイメージは一昔前のものとなりつつあります。一案としてですが、今までは日本の大学生がカンボジアにてスタディツアーを行っていましたが、今後はカンボジアの大学生が日本にてスタディツアーを行ってはどうかと、各大学等にも提唱し始めており、現在はトライアルツアーを準備しています。
また、その他の鍵となるのは、やはり日本人観光客に対してのビザ免除ですね。例えば今年10月からミャンマーでは日本人観光客に対してビザ取得が不要となりました。そのため、日本の旅行会社は、様々なツアーを企画、催行しています。国にとってビザによる歳入はなくなりますが、より多くの観光客が押し寄せ、結果、その国でお金を落とすようになるため、より多くの歳入へと繋がっていきます。とは言えビザに関しては観光省の管轄ではありませんので、関係省庁との連携が必要となってきますが、近い将来、そういう発表が観光省からできると良いよねと、同僚と話したりしています。
――今後のカンボジアの観光業について教えてください
現在バッタンバン州、ストゥントレン州、カンポット州に世界遺産都市計画が持ち上がっており、観光省として特に力を入れているのがバッタンバン州となります。今年は日カンボジア友好65周年記念、来年は日メコン交流年ということもあり、バッタンバン州に日本人を誘致するイベントがいくつか検討されています。また9月に東京で開催されたツーリズムEXPOジャパンには観光大臣も参加し、日本の旅行会社との会談では、より多くの日本人をバッタンバン州に呼び込みたいと伝えていました。実際、世界遺産とするには様々な規制問題や課題もありますが、カンボジア各地に世界遺産が分散されることで、旅行者の新たなデスティネーションとなれば、地方も活性化することになります。
また、忘れてはいけないのがカンボジア人による国内旅行の増加です。カンボジア人による国内旅行者数は毎年上昇しており、連休などのタイミングでは宿泊施設不足などの問題も起こっています。またローカル向けの新しいリゾート開発や観光地開発も増加しており、中には環境問題を引き起こしているケースやオーバーツーリズムとなっているケースも見受けられます。
自分がカンボジアに移住してきた頃は、お金やアクセス問題などで国内旅行を楽しむカンボジア人はほとんどいなかったのですが、今では多くのカンボジア人が気軽に国内、海外旅行を楽しめるようになっています。彼らの所得が上がることによって、カンボジア全体の観光業の流れが変わり、そのため、現在閉鎖されているカンボジア各地の空港も再稼働し、近い将来、気軽に地方都市に行き来できるようなインフラができてくると思います。
そういう意味でも、“カンボジア人が旅行を楽しめること”、それがカンボジアの観光産業を底上げし、日本人だけでなく、世界中からの旅行者増加に繋がっていくと考えています。