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  • 政治
  • 2025年5月5日
  • カンボジアニュース

「報道の自由」か「監視強化」か──フン・マネット首相、記者に対し批判報道を奨励[政治]

カンボジアのフン・マネット首相は、政府高官の問題点を報道で積極的に指摘するよう報道関係者に呼びかけるとともに、フェイクニュース対策への協力を要請した。発言は、5月3日の世界報道自由デーに際して開催された報道関係者との会合でなされたものである。

首相は「報道の力を活用し、行政機関の不正を可視化することで、政府の問題解決を迅速化できる」と述べ、メディアによる行政監視機能の強化を期待した。一方で「誤った情報を正さないのは誠実さに欠け、法的責任を問われるべきだ」と警告し、報道の正確性と責任を強く求めた。

報道の自由を保障する憲法および報道法の存在を確認しながらも、首相は「独立報道の名のもとに偏向した情報を流してはならない」と強調した。だが、政権に批判的な報道と誤報の境界が不明確であり、政府にとって不都合な報道が「フェイクニュース」として処罰対象となる懸念も残る。

政府は現在、報道法の見直しや視聴覚メディア法の策定、メディア人材の育成方針を進めており、フェイクニュース対策の法制度構築も推進している。2024年には「プロフェッショナル・ジャーナリズム憲章」やQRコードを用いた情報確認システム(verify.gov.kh)を導入し、メディアの信頼性向上を図っている。

報道の現状に関する情報省の調査では、81.4%が「報道自由の状況は非常に良好」と回答したとされるが、調査方法や質問設計の妥当性については詳細な説明がなく、自己評価としての限界がある。

また、政府は国際NGO「国境なき記者団」による報道自由度ランキングの10ランク低下について、「偏った団体からの情報に基づいたもので、実態を反映していない」と反発している。しかし、ランキングへの反証となる客観的データや国際的な比較情報は提示されておらず、国際評価に対する強い拒否反応が目立つ。

フン・マネット首相は改めて「記者は真実に基づいた責任ある報道を通じて社会の信頼を得なければならない」と述べ、メディア関係者に対し、専門性と倫理観の継続的な向上を促した。報道の自由推進を掲げる一方で、表現の自由と規制の線引きが曖昧なまま制度設計が進められている現状には、慎重な監視と議論が求められる。

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