2017年7月18日
――自己紹介と会社紹介をお願いします
塩入伸雄(以下、塩入) LOKA Food & Beverage 営業&マーケティングディレクターの塩入です。弊社は日系商社S.E.A.T.S Inc.の食品輸入卸事業として2014年より事業を開始しており、今年で4期目となります。
事業としては、タイ、日本、ベトナム等のアジア周辺国を主な仕入れ先として、カンボジア国内の飲食店、ホテル、カフェ、スーパーマーケット等へ商品を卸しております。取扱製品は生鮮、精肉、調味料、酒類、その他多数取り揃えており、容器や調理器具など、お客様が必要とされるものであれば食材に限らずお取扱いします。お蔭様でこれまでにカンボジア国内の200社以上のお客様とお取引をさせていただいており、日本食に限らずフレンチやクメール系のお客様からのお引き合いも増えております。
――この度、事業名とロゴのリニューアルがあったとお伺いしましたが、どういった背景でしょうか
塩入 弊社の食品輸入卸事業は、これまで日系商社S.E.A.T.S Inc.のメイン事業という位置づけで運営しており、お客様へも同社名で認知いただいておりました。今後も同事業としての認知度をより高めていく狙いで、内容がすぐに判断できるよう「LOKA Food & Beverage」という名称を新たに採用しました。
「LOKA」というのは「世界」を意味する クメール語で、国籍を問わず多くのお客様に弊社のサービスをご利用いただきたいという想いを込めております。2017年4月以降は、「LOKA」の名称でもご記憶いただけたら嬉しく思います。尚、S.E.A.T.S Inc.としてはカンポット州に自社で用地を確保し、胡椒や生姜といった農作物の生産事業にも着手しております。
――自社の強みは何ですか
塩入 各種鮮魚のラインアップを充実させており、冷凍マグロやハマチ、ウニなどはお客様のジャンル問わず人気です。
とりわけ生鮮鮮魚については、日本から航空貨物便を用いた生鮮鮮魚の輸入を昨年10月より開始しており、取扱量が拡大しております。現在は週に1便のペースですが、今後は週に2便を安定して供給できる体制を整える計画です。
――将来の展望について教えて下さい
塩入 「魚と肉」をより強化していきます。既に注力している生鮮鮮魚を引き続き強化していくことはもとより、精肉面でもタイや日本、オーストラリアなど仕入れ元を拡大していく計画です。それに伴い設備面でも超低温冷凍庫や高機能保冷材の導入等により、品質面でも日本と同水準の製品を提供できるよう体制を整えていきます。
また、弊社はタイの老舗調味料メーカーとパートナーシップを結んでおり、確かな品質で安価なオリジナルの調味料、ドレッシングや各種スープを「LOKA」ブランドで展開していきます。今後は多店舗展開の業態も増えることが予想されますので、お客様のご要望に合わせた調味料、スープの開発というのも積極的に行っていきます。
――カンボジアの飲食店・食品流通業界の現状を教えて下さい
塩入 依然として飲食店やホテルの出店数が増加の傾向にあると思います。数年前と比べて混雑している飲食店が増えた実感があり、特に客単価$10~20程度の飲食店で消費をするアッパーミドル層の外食が増えているように思います。
日系飲食店については、2015年頃のようなハイペースではないものの新規出店は安定してあります。既存店で集客できているお店が定着してきた一方で、オープン後半年~1年程度で見切りをつけてクローズするお店も一定数あり、総数としては横ばいか緩やかに増加しているという認識です。
また、食品流通業界については、大手の二三社と中堅サプライヤ十数社で多くの需要を満たしている中で、業界の参入障壁の低さから、カンボジア人の個人やファミリービジネスでの参入も増えている状況です。レストランの増加に伴い短期的な投資回収、収益化を見込んで新規参入するケースが大半ですが、競争も激化しており計画していた収益が見込めず1年程度で撤退するサプライヤも複数見られます。価格だけではない強みと付加価値を備えた、お客様のあらゆる調達を支えるパートナーになる、というレベルの関係性をお客様と築いていくことが重要だと考えています。
――今後どのように変化していくと思われますか
塩入 プノンペンや各地方都市の発展は目ざましいものがあり、店舗の数は増加の一途を辿っているので、市場規模は安定して拡大すると考えています。サプライヤに関しては、様々なジャンルの製品を一定数揃えていることが必要とされていた時期から、各社で専門性を高めていく時期に来ているでしょうね。
専門性の一つに、独自の仕入れ・販売ルートを持つことが挙がりますが、サプライヤ各社がより専門性を磨くことで、"外国ではよく見るけれどカンボジアにはなかった"という製品を消費者が目にする機会が益々増えることでしょう。
――カンボジアの飲食店・食品流通業界の問題点を教えて下さい
塩入 カンボジア人オーナーの日系飲食店ではFCでの進出が増えていますが、現時点では積極的な多店舗出店ができるまでには至っていないようです。ブランドに固執して日本のモデルをそのまま再現しようとすることが一つの原因でしょう。たとえFCではあっても、メニューや店舗設計などは現地の趣向にも十分配慮し、ある程度現地化してからスタートできると立ち上がり方が異なるのではと思います。また、流行ったコンテンツをコピーして出店するもブームが去ったら直ぐに撤退するなど、安易な出店も多いことは否めません。衛生面では、日本のように保健所の立ち入り検査などが実施されていないため、衛生基準が低いのは以前からの問題点です。(取材日:2017年4月)