2018年1月17日
――前回のインタビュー(2015年3月)以降、カンボジアにおける建築・デザイン業界に関して、またカンボジア人の趣向に変化は見られますか?
河内 前回インタビューを受けた当時(2015年3月)は、ブラウンコーヒーなどがトレンドとして誕生した時期でしたが、現在は当時のトレンドが既に定着しているように思います。プノンペンはおしゃれな店舗が充実してきており、イオンモール付近はエンターテインメント施設が充実してきているといったように、デザイン・ライフスタイルも多様化しています。これは、ここ2~3年での変化ではないでしょうか。
カンボジア人は元々装飾をする文化であるように、日本のようなシンプルなデザインは定着、浸透していないのが現状です。そのため、弊社は日本ならではのデザインを施しながらも、現地のデザインを取り入れることを心がけています。
――様々な建築プロジェクトを手掛ける御社ですが、カンボジアでまちづくりを行う際に、重要視していることはなんでしょうか?
河内 カンボジアで事業をするためにはローカライズしていかないといけないため、Newクメールスタイルを常に考えます。
現在、緑化をコンセプトにした工場の設計・工事監理をしています。工場でワーカーがすぐにやめてしまうという現状があり、どの工場も頭を悩ませている大きな問題となっています。そのため、いかにワーカーが働きやすい環境を作るかがテーマになっています。
良い環境を作れば生産性も上がると考え、弊社としても、ココチイイ気持ちで働けるような良い労働環境を作ることをクライアントに提案し、クライアントからも理解を得ています。そのためには、経済特区などでの問題調査など必要なリサーチを行い、細目に情報を仕入れています。
また、工場のみならず、商業施設であれば買い物客、住宅であれば住民がココチよく感じられる設計を心がけています。カンボジアには弊社のような設計のみの会社は少ないため、設計の部分でいかに他社と差別化するかということを考えていますね。
――カンボジアのみならず、ラオスや台湾でも建築事業を行う御社ですが、事業を行う上で他国とカンボジアでどんな違いが見られるでしょうか?
河内 途上国と先進国では、そもそもバックボーンが違います。カンボジアやラオスのような途上国は、建築材料が充実していないので輸入に頼らざるを得ないといった現状があります。その国にどのような建築資材があり、どういう建築様式が取られるのかといった、その国ならではの建築事業を知らないとデザインもできません。
そのためよく日本企業に起こりがちなのが、日本で設計したものの、いざ現地に行ってみたら資材が無い、予想していた施工技術が無いといった事態です。
ここ数年間、カンボジア国内で入手可能な資材は多少増えたものの、あまり変わらないのが現状です。
――資材の自国生産に関して、今後変わる可能性はありますか?
河内 カンボジアのような電力事情が発展していない国で、軽工業・重工業が盛んになることは非常に難しいことです。この問題は産業構造と連動しているため、今後輸入が増える可能性はあるものの、鉄などの資材を自国で生産できるようになるまでには時間がかかると考えます。状況はそこまでよくなっていないですね。
(次回に続く)