2017年9月25日
――目まぐるしく変わるカンボジアの税制ですが、税務関連で最近変わった点があれば教えてください
菊島陽子(以下、菊島) 税務に関する最近の変更点として、税務期限の変更、給与税の規定変更が挙げられます。
まず、月次税務申告納税期限が変わりました。従前においては月次納税期限は毎月翌15日でしたが、2017年1月より翌20日に変更されました。申告書の提出期限についても、従前は実務上月末までに申告書を税務局に提出することで特に問題はありませんでしたが、申告書提出も翌20日に変更となりました。納税が5日延長になったにも関わらず、申告書作成・提出も同時期に終わらせなければならなくなり、税務手続き全体としてスケジュールがタイトになったと言えるでしょう。
また、2017年1月より給与税にかかる規定が改正されました。従前は800,000リエル(約200USD)以下は0%の累進課税率が適用されていましたが、規定改正後は1,000,000リエル(約250USD)に対して0%が適用されるようになりました。
また、扶養控除額が75,000リエル(約18.75USD)から150,000(37.50)に引き上げられました。この改正により、若干ではありますが、給与税負担が減ることになります。
――税務に関する新たな規定はありますか
菊島 中小企業に対する規定が公布されました。税務登録を行っていない中小企業が2018年末までに自主的に税務登録を行った場合、2年間法人税を免税にするSub-Decree(サブディクリー)と呼ばれるものです。これは一向に進まない税務登録を推進するための策ではありますが、免税期間中は、法人税に加え前払法人税も免税対象となります。
またInvoice(インボイス)にかかるガイダンスが、2016年12月にいくつか公布されました。具体的には、インボイス番号の付け方に関する規制(年度毎で通し番号や支店がある場合に、支店毎にインボイス番号を分けて付すことが可能。製品毎、顧客毎、地域毎等でインボイス番号を分けることは不可能等)や、税務情報更新手続きを行っていない税務登録企業等から発行されたインボイスのVAT取扱などに関する規定です。
――カンボジアにおいて政府側の税務調査体制にも改善の余地が見られますが、最近の税務体制をどうお考えですか
菊島 2016年、税務総局は民間の会計事務所や監査法人に勤務経験がある人材を大量に雇用したと聞いています。従前は税務調査等で実務とかけ離れた論点による指摘も多々ありましたが、これによって実務を熟知している税務担当官が増加し、法令・実務両方の観点による税務調査の実施が予想されます。これまで以上に当地で経験のある税務専門家のサポートが重要になると考えます。
――カンボジアの税制における変化の中で、今後日本企業が留意すべき点とはなんですか
菊島 最近ではアジア周辺国において、関連者間取引における移転価格が厳しくなってきています。しかし、今回カンボジアの法人税年次申告書において関連者間取引にかかる報告が追加されました。追加されたのは、取引内容、関連者である取引相手の名前、取引額ですが、申告書提出の際には関連者間取引に関して税務局員から簡単なヒアリングが行われた例もいくつか見受けられました。
カンボジアでは関連者間取引については、税法において関連者間の定義が簡単に明記されている程度であり詳細なガイダンスは無く、現在は実態把握の段階かとは想像します。しかし、近い将来移転価格制度が導入されることを想定しながら、関連者間取引価格を検討することが望ましいといえると思います。