カンボジアに進出する日系企業のための
B2Bガイドブック WEB版

業界別インタビュー

2016/12/26

いい街を作っていくため、継続的なメンテナンスを最も大切にする[建設・内装] 永田哲司 (前編)

建築・内装

ソナトラグループ Sonatra Group
CEO: 永田哲司 Nagata Tetsuji
証券会社とブルームバーグを経て、カンボジア人パートナーと共に2012年にソナトラグループを立ち上げた永田哲司氏。マイクロファイナンス事業を中核にしているが、2017年4月からは不動産セクターへも参入する。ゲートタウン構想の具現化に邁進する永田氏に、カンボジアにおける住宅事情や都市構造などについて語っていただいた。(取材日/2016年9月)
来年4月から不動産セクターへ進出

―――ソナトラグループとして銀行をされていますが、来年4月から不動産販売を始められるそうですね。様々なタイプがあるかと思いますが、戸建てになるのですか

永田哲司(以下、永田) 戸建てで、基本100%ローカルの人向けの会社になります。リンクハウスもあればツインヴィラ、ヴィラもあります。土地は全部で50ヘクタール購入しましたが、第1弾として売り出すのは6.5ヘクタール、350戸くらいです。ニューワールドとか、オーキデとかペンフーなど我々より大きいですね。タウンハウスと似たフラットをやっている企業もありますが、私たちはフラットはやらず、タウンハウスをやります。


―――フラットとリンクハウスの違いは何でしょうか

永田 フラットは、グラウンドフロアの出入り口にはシャッターが設置されおり、またメザニン(中二階)がある昔ながらの伝統的な作りをしています。場所にもよりますが、グラウンドフロアとメザニンのみの一階建てで、最低価格が5万ドルから5万5000ドルです。また、2階建てなら7万7500ドルくらいです。従来型のフラット業者はただ建売して終わりですが、ペンフーやニューワールドや私たちは、ゲートシティにして、中には公園を整備します。なかには区画整理するだけで、メンテをあまり考えていない業者もありますね。

 リンクハウスは、中二階がなく各階が全て住居スペースです。住宅仕様になっています。私たちのコンセプトはゲートシティです。一番大事なのはゲートシティにしてセキュリティを保証し、かつメンテナンスをきちんと行うことができる街作りです。メンテナンスしないと公園は汚れ、道路も傷み、街自体の付加価値が下がりますから、最低でも5、600戸の規模がなければ維持できません。それらを考慮したプロジェクトにしています。作って転売して終わりだと、誰が敷地の管理をするのか、セキュリティを誰が配備するのか。良い街に継続して作るなら、メンテナンスが一番大事です。

メイドインジャパンで打ち出す

―――どのような形で販売展開していく予定でしょうか

永田 私たちはメイドインジャパンで打ち出します。サムスンホールディングスと日本企業との合弁会社で、プレキャストの供給会社を作りました。従来型のレンガ作りではなく、プレキャストによる施工です。また、地盤改良もします。従来型の杭打ちでなく、日本から新しい鉄鋼を調達して、より頑丈な住宅を作ります。

リンクハウスタイプは3階建てで8万5000~10万ドルです。ツインハウスは大体16万~17万ドル、ヴィラは28万~30万ドルくらいですね。


―――フラットのように、入って中二階があるタイプは、カンボジア人からみてポピュラーなら、フラットの方が求められるのではないですか

永田 もちろんカンボジアは、入って中二階がある、フラットが主流です。フラットはグランドフロアの天井が高いので、個人商店には向いています。これをショップハウスと呼んでいますが、私たちも一部やります。グラウンドフロアにメザリングを設けて、天井を高くし、ショップハウスとして売り出します。

 カンボジアでは、別にショップハウスとして使用しなくても、そういう作りのまま、住宅として使用しているわけです。しかし、私たちがそれをしない理由は、それをやると、自分達が買った後に、ちょっとした小店をやる人がでてきて、住宅街に、いきなりお店を出されると、街の美化が崩れます。

 また、富裕層のご子息は海外経験もあるので、マインドも変わっており、従来型より新しいデザインを好みます。このようなモデルで上手にやっているのが、ペンフー、チップモン、オーキデ、ニューワールド4社で、私たちの競合だと考えています。このようなコンセプトでやっているところは少ないですね。

カンボジア人の85%はボレイを好む

―――コンドミアムは供給過多が問題になっていますが、ボレイはどうでしょうか

永田 コンドミアムに比べると、ボレイ自体はまだ売れています。コンドミニアムはローカルの人は買いませんから、頼みの綱は外国人投資家です。しかし、ボレイは未だにローカルの人がすごく好きなマーケットなのです。以前、CBREに新規の住宅購入するカンボジア人の趣向を2年前に調査してもらいました。ボレイなどの土地付きの住宅がいいと答えた者が85%、コンドミアムでいいと答えた者は15%という結果でした。そのため、住宅が供給過多になっているとはいえ、ボレイはまだ売れる可能性が大きいです。

 私たちが今やっているボレイはプノンペンの南側です。現在、競合各社がボレイをやっていますが、そのほとんどは北側や西側。それからペイフーは東側です。南側はニューワールドがつい最近公表して、全部で600個売り出したのですが、すでに7割完売したようです。南側には需要がありますね。

 また、私たちの狙いは買い替え需要です。もともと自分たちが所有していた住居が結構高く売れます。プノンペンの南側郊外のタクマウでは、平米あたり1000ドルくらいの価格になっています。ヴィラを持っていれば3000万から4000万で売れます。そういうのを売って、我々の住宅に買い換えてもらうという需要を考えています。(取材日/2016年9月)
次回へ続く


ソナトラグループ Sonatra Group
事業内容:
URL: http://www.sonatra.com.kh/
関連記事
社会
プノンペンのボレイ・ピプープ・トメイ購入者、家の差し押さえは不当と主張、首相に解決を要求[社会]
(11月23日)
経済
住宅販売は減少する一方、ローンは増加の傾向に カンボジア[経済]
(08月10日)
経済
カンボジアで承認された建設プロジェクトが上半期に急増[経済]
(06月26日)
経済
コンドミニアム、賃料と販売価格がともに低下 カンボジア[経済]
(01月14日)
経済
第3四半期、住宅ローンの申請件数が50%増加 カンボジア[経済]
(11月19日)
経済
高需要を背景にボレイ(土地付き住居)の平均販売価格が上昇 カンボジア[経済]
(10月09日)
あわせて読みたい
特集
トップインタビュー イエローツリー・インテリア バーニー・ダーキン(1/3)
特集
まちづくりひとづくり スペシャル対談 Vol.4
特集
まちづくりひとづくり スペシャル対談 vol.3
特集
活況カンボジア不動産投資 リスクとリターンを見極めた先に映るその正体は? 2/2
業界
プノンペンの不動産は依然として健全[建設・内装] ミース・プロックサー

その他の「建築・内装」の業界インタビュー