2016年4月1日
―――ここ一年でテレコミュニケーション業界はどのように変わりましたか
トーマス・ハント(以下、ハント) 私どもの業界は常に変化の中にあります。技術の発展途上にあり、他の業界に比べてもかなり回転の速い業界なのではないでしょうか。例えば建設業でしたら3-5年ベースですが通信業界はどんどん技術が導入され更新していく必要があります。スマートの場合ですがデータネットワークの投資に力を入れてきました。4Gの導入もしました、近年は通話やSMSよりもLINEやフェイスブック等データネットワークの需要がどんどん増えているので会社としては顧客の要求に応える必要があるのです。今のところカンボジアで4Gを導入しているのは当社のみです。
それ以外ではスマートミュージック等のエンターテインメントコンテンツや保険のサービスを開始しました。保険はこの1年で加入者が10万人となりました。基本的なテレコムサービス提供以外にコンテンツを増やす努力をしているところです。
―――1年前業界には5社の競合がいると仰っていましたが、何か変化はありますか
ハント 入れ替わりはありましたが、競合会社の数は変化ありません。現在メインプレイヤーはセルカード、メットフォン、スマートの3社です。現状の1500万人の人口ではこのくらいの業界規模でちょうどよいと思います。我々の業界は常に投資が必要で顧客の変わるニーズに対応する必要があります。最近は2Gだけの提供では生き残れませんし、4Gだけの提供でも生き残れません。幅広いサービス提供が必要ななか、その投資に耐えうるだけの資金源が重要になります。利益が出ないのなら投資もできません。カンボジアではこれ以上会社が増えますと、おそらく投資効果が薄れ生き延びることが難しくなるでしょう。市場規模が小さいからです。
例えばフランスは6000万、ドイツは8000万の人口があるわけですが長い年数の間に3社前後まで通信業界は絞り込まれてきました。ヨーロッパの3万~4万ドルクラスのGDPに比べるとカンボジアは1000ドル程度です。
この規模では共存しつつ生き残れるのは3社が限界だと思います。顧客の要求は天井がありませんし、世界的な流れとしては既に5Gの出現が間近です。2020年には日本や韓国では5Gが当たり前になっているかもしれません。ですから常に投資が必要であり、通信業界は利益を出せなければ撤退するか合併するかの選択を余儀なくされると思います。
―――テレコミュニケーション業界は今後どのようになっていくと思いますか
ハント 今後はデータ通信が更に重要な鍵になるかと思います。音声通信が完全に耐えることは無いでしょうが消費行動も変わっているのでどんどん縮小していくでしょう。データ提供とコンテンツ提供が鍵となるのではないでしょうか。無料で使えるコンテンツ、有料でなければ使えないコンテンツも出てきます。
良い事例としてはNETFLIXです。アメリカでは無料のTVサービスよりも、有料のネットフリックスを選択する人が増えています。それに伴いネットフリックスも自社独自の番組の製作や配信を始めています。カンボジアはまだ先かもしれませんが、近年はどこも動画ストリーミングが多く利用されるサービスです。我が社ではスマートミュージックというサービスを開始し、月額$1.20で音楽を聞き放題というものを開始しました。他にもマイクロインシュアランス(保険)の提供等、基本的には顧客の要望に応える形で様々なサービスを導入しているところです。
―――昨年から引き続きアワードを授与されているようですが
ハント そうですね、いつまでも受賞できるかと言えるかと言えば何とも言えませんが会社としては励みになります。働く社員にとってもモチベーションに繋がりますし、お客様にとっても信頼へつながるかと思います。今後も賞を頂けるような会社で居続けられるよう、お客様へのサービス提供をしていけたらと思います。
―――カンボジアでは通信会社を変えたら番号を維持できるサービスはありませんか
ハント 番号ポータビリティのサービスはカンボジアにはありません。できる限り近い番号でサービス乗り換えをお手伝いしています。将来的にもサービス提供できるかは今の段階では何とも言えません。このサービスは特定の国において、一社独裁型の業界において競争促進をするために導入されたものです。今のところカンボジアでは需要が無いのも現実です。
―――テレコミュニケーション会社で悩んでいる日本人、日系企業にアドバイスをお願いします
ハント スマートをご利用ください。ビジネスソリューションもありますし、個人向けのサービスの提供をしています。日系に向けて言えば、日本でのローミングサービスもありますしソフトバンクやドコモと提携し、$10で日本でのデータ使い放題というサービスもあります。これはASEAN地域内でもご利用いただけます。
近々iphone6Sの発売も控えていますし、ご要望を言っていただければお客様にぴったりのサービスを見つけられるかと思います。(取材日/2015年9月)