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業界別インタビュー

2015年7月10日

若い欧米人の移住が多いが待遇に問題あり[人材]オーモリー・デ・セイント・ブランカット (2/2)

人材・コンサル

セイント・ブランカット&アソシエイツ Saint Blanquat & Associates
シニアパートナー: オーモリー・デ・セイント・ブランカット
2012年からエグゼクティブ人材を中心に紹介しているフランス系人材紹介会社、セントブランカット。自社開発の求人サイトを持ち、フリーマガジンの参入も。シニア・パートナーであるオーモリー・デ・セイント・ブランカットに、カンボジアでのビジネスやASEAN経済統合などについて話を伺った。
若い欧米人の移住が多いが待遇に問題あり

(前編からの続き)
――欧米企業はカンボジア経済やカンボジア人スタッフをどのように見ているんでしょうか

オーモリー・デ・セイント・ブランカット(以下、ブランカット) カンボジアは失業者が少ないfull employmentマーケットです。このような場所では雇用される側が主導で何もかも進みます。欧米系はこの点を理解していないので、文句も多いですし腹を立てる人もいます。しかし考え方を変える必要があるのです。有資格者は少ないかもしれませんが、待遇を良くすれば必ず見つかります。良い人材が欲しければ給料や福利厚生を真剣に考える必要がありますね。最近は給料の上昇よりも保険や休日、ボーナスの支給有無を就職時の判断材料にする人が増えてきました。

――日系企業の状況と似ていますね。ところで、欧米人人材についてはどうでしょうか。

ブランカット カンボジア人だけでなく比較的若い欧米人の移住も多いですよ。彼らは出身国の失業率の高さからアジアに流れることが多いのですが、資格や経験を持った豊富な人材もまぎれていると考えられます。一つ問題なのは、こちらに参入する多くの企業が自国で当たり前に求められるであろう待遇で人を雇用しようとしないところです。カンボジアを簡単に見ているのか、福利厚生などの待遇が全くなしで募集をかけることがありますが、欧米ではそれは考えられないはずです。良い人材が欲しければ投資をしなければいけない、という助言を顧客に対してよくしますよ。

ASEAN経済統合の影響

――ASEAN経済統合の影響について、どう思われますか

ブランカット 個人的には2015年はかなり変革の年になるのではないかと思います。家賃の急上昇、人件費の上昇、納税の電子化開始などで経費も増えてくるのではないでしょうか。今まで薄利多売で切り抜けてきたような業界は厳しくなるでしょうね。手法を変えるか撤退か決断を迫られるのではないかと思います。
 ASEAN統合についてですが、厳しいものになると予想しています。今まではカンボジアはビジネス進出にとても門戸の広い場所でした。統合後は野放しになっていたルールの適用が厳しくなるでしょうし、納税の義務や各種コンプライアンスの順守も必要になると思います。ワイルドなところからルールの順守を重要視するお国柄に変化するのかどうか。ASEAN経済統合はそういう意味で良いことだとは思いますが、もしかしたらそのことが引き金となって、ただでさえ少ない良い人材のASEAN他国への流出に拍車がかかる可能性はあります。
 カンボジアで事業を営む企業にとっても急激な変化は出てくると思いますが、それよりも政府がこの急激な変化に適応できるのかが気になりますね。ワークパーミットの混乱を見てもそう思います。

2年後の選挙までは大きな投資は控える

――人材業界の展望や今後の抱負は

ブランカット 最近シェムリアップに支店を出しました。国内の他の都市にも興味はありますし、ミャンマーやラオスも興味はあるのですが投資が大きいのでじっくり固めて時間をかけて進めようと思っています。
HR業界は今後も成長すると思いますが、2年後の選挙とその後の体制がはっきりするまでは注意が必要です。個人的にはそれまで大きな投資は控えようと思っています。カンボジアは何が起こるかわかりませんから念のためですね。(取材日2015年3月)


セイント・ブランカット&アソシエイツ Saint Blanquat & Associates
事業内容:人材紹介、HRコンサルティング、ビジネスコンサル、市場調査、求人サイトの運営、雑誌の発行
URL: http://www.saintblanquat.com

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