2014年12月20日
――NEAとは、どのような機関ですか。
コイッ・ソミエン(以下、コイッ) NEAには2つのミッションがあり、一つ目は、求職者と企業に対して就業支援を行うことで、教育機関などにも支援を行っています。二つ目は、カンボジア国内の職業や労働に関する情報システムを構築することです。ここでいう情報システムとは、カンボジアの労働市場や労働者の現状、または過去の様々なデータを管理するシステムのことです。労働力の供給側、需要側双方のデータを扱います。例えば、カンボジアの労働人口や、そのスキルレベルなどの傾向、企業数や労働者数、現在有効中の求人情報などが該当します。2012年には、企業側に対して大々的に調査を実施しましたが、この調査は、2年毎の実施を計画しており、次回の調査は2014年8月に実施される予定です。サンプル数は約700社です。
先程述べたとおり、組織的にはNEAはNTBの下部組織です。ただし、予算は労働訓練省に組み込まれています。つまり、NEAの活動費や職員の給料等は労働訓練省から支出されているんです。また、労働訓練省はNTBの主要組織でもあり、NTBの副代表は労働訓練省からの出向者です。
事務所は全国で7箇所あります。プノンペン、シェムリアップ、バッタンバン、コンポンチャム、スバイリエン、カンポット、タケオです。各事務所でも、登録の他に、キャリアガイダンス、カウンセリング、図書閲覧など、プノンペンと同様のサービスを提供しています。基本的にはデータベースを使用しますが、インターネットが使用できない地域ではどうしても紙ベースになってしまうのです。そのような地域では現在タブレットを併用する方法を検討中で、今後は紙をタブレットに変えることで農村などでもデータベースに登録できるようにしていきたいと考えています。
――求職者の利用人数はどれくらいでしょうか。また、失業率とその変化はいかがでしょうか。
コイッ NEAへの登録者は、就職支援を始めた2010年末頃から13年の終わりにかけて、合計で約3万5,000人ほどです。但し、この数字はNEAのデータベースに登録されている人数であり、データベースに登録されない方もいらっしゃいます。というのも、NEAでは地方でも就職支援を行っていますが、村を訪れる時には紙ベースでの登録作業になってしまうからです。この支援をはじめてから4年ほどが経ちますが、紙ベースで登録した方はエクセルで管理しているため、データベースとは別になります。
National Institution of Statistics(NIS)による調査を元にした数字になりますが、カンボジアの失業率は極めて低いです。だいたい0.5%前後だったと把握しています。この数値は安定的で、大きく変動したことはこれまでありません。しっかりとした数字は覚えていませんが、人口の70%が労働人口だったと把握しています。詳しくはNISのデータを参照してください。
――労働力の面で、周辺国と比べてどのような特徴がありますか。
コイッ まず、労働力が安価であることと、投資に対して制限が厳しくないことがだと考えています。欠点としては、インフラが未整備であることと、労働者の教育レベルが低いことです。
――タイに出稼ぎに出ていたワーカーが大量に戻ってきましたが、どのような影響があると思いますか。
コイッ NEAに登録されている求人者と求職者のデータから見ると、市場でミスマッチが起こっているということが確認できます。というのも、求人では工場労働者などの低スキルワーカーなどの需要が大きいのに対して、求職ではオフィスワークなどの供給が大きくなっているからです。ここに需要と供給のミスマッチが見て取れます。この点から見ると、タイからの労働者の帰国は現在の需要を満たす良い機会になると言えます。また、私達のデータによれば帰国した方々の60%以上が短期労働者です。彼らは3ヶ月から6ヶ月の短い間、タイに出稼ぎにいくだけで、カンボジアでは自分の仕事をもっていることがほとんどです。ですから、タイから多くの方が戻られたからといって大きな問題になるとは考えていません。
――イベントなども行っているのですか。
コイッ 毎年「キャリアフォーラム」という合同就職面接会を開催しています。約70社の企業を招き、プノンペンの東側に位置するダイアモンドアイランドという場所で開催しています。今年も行いますが、現時点で既に40社ほどの企業がエントリーしています。2012年から過去2回開催しています。広報についてはコミュニケーションプランを策定し、力を入れています。例えば、NEAにはTVチームがあり、毎週一回放送のテレビ番組を作成しています。チラシの作成や、求人などに関する冊子の発刊も行っています。内容は、就職活動の仕方や、職業毎に必要なスキルの説明などです。また、ラジオ番組を作成したり、高校や大学でのセミナーの開催も行っています。プノンペンにあるほとんどの大学で、既にセミナーを開催していますし、高校生に対しては、セミナーに加えて、適切な仕事を見つけれられうようにペーパーテストなども行っています。
もし、雇用のことで問題があったら是非NEAに御連絡くだされば、お手伝いいたします。(取材日/2014年7月)