2018年4月5日
(前回の続き)
――プノンペンのマンションの過剰供給が指摘されていますが、どうお考えでしょうか
ロス・ウィーブル(以下、ウィーブル) 過剰供給が指摘されているのはハイエンド部門のみです。主に住宅市場において、プノンペンには多くの外国からの投資が行われており、ディベロッパーたちはハイエンド部門をターゲットにしています。時に、価格は1平方メートル当たり3,500ドルにもなります。この価格は、イギリス出身の自分にとってもかなり高いものです。またそれと同時に、5万ドル以下の価格で販売されているユニットの売れ行きも好調です。その多くはカンボジアのバイヤー向けです。ハイエンドのコンドミニアムは外国人投資家を対象としていますが、約3万ドル〜4万ドルの単価のコンドミニアムを提供すれば、カンボジア人向けとしても売ることが可能でしょう。したがって、供給過剰があるのはハイエンド部門だけです。ディベロッパーたちも認識し始めており、開発の方向を変え始めました。特にローカルのディベロッパーたちはより手頃な価格のマンションを提供しています。次の5年間で市場に出てくるユニットの総数は、およそ3万棟のマンションだと言われています。しかし、プノンペンの人口は230万人ですから、人口の規模に比べてマンションの数はかなり少ないことがわかるはずです。
――投資家にとって、どのような不動産が投資家に魅力的なのでしょうか
ウィーブル カンボジアでは、外国人は土地を所有することができません。地所持ちの住宅は依然としてカンボジア人のバイヤーに好まれています。市場が持続可能な状態にあるためには、主に国内市場からの需要が必要です。売却されている不動産は5万ドル以下のマンションです。仮に私が投資家としてマンションを購入するならば、それは手頃な価格のユニットの1つでしょう。第2のマーケットが存在するため、誰かが新しいユニットを購入し、それを売りたい場合、もしハイエンドユニットを購入したならば、その不動産をすぐに売ることは困難でしょう。しかし、手頃な価格のユニットならば、地元の人々からの需要があります。
――マレーシア、タイ、ベトナムのような周辺の東南アジア諸国と比較すると、カンボジアの違いは何ですか
ウィーブル 最も優れている点は投資が容易であるということです。カンボジアでは外国人投資家は土地を所有できないため、1階を所有することはできませんが、1階以上の自由保有不動産を所有することができます。タイやベトナムでは賃貸物件を所有することしかできないため、マンションを所有することができるというのは、大きな利点となるでしょう。
また、カンボジアはドル化された経済です。多くの人々は、米ドルに対し大きな信頼を持っています。また、カンボジアから資金を引き出すという面でも制限がありません。一部の国では、その国から利益を得ることがより難しくなる可能性がありますが、ここでは税制もまた非常に緩やかなものです。他国では、キャピタルゲインへの税金があるかもしれません。カンボジアでも将来導入する可能性はありますが、現在周辺国と比較すると規制がありません。
マレーシアでは不動産に対し、最低でも100万MYR(25万ドル)の金額を支出しなければなりませんが、カンボジアでは望むだけの投資をすることができます。
懸念点を挙げるとするならば、政治状況が不利になる可能性があるということ、そしてもう一つは透明性が欠けているということです。来年に控えている国政選挙が影響を与える可能性があります。これは、2013年9月の選挙の直後にカンボジアに到着した私にとって、最初のサイクルになります。私は、多くの裕福なカンボジア人たちが不確実性に不安を抱き、来るべき選挙の前にカンボジアから資金を取り出すのを見ました。
もう一つの懸念事項は、プノンペンの計画策定の面において、マスタープランがないということです。誰かがビルを建てたとしても、1メートル以内に何かを建設することが可能です。何かを建設しても、しばらくの間は素敵な景色を楽しむことができるかもしれませんが、隣の誰かが他の誰か建設してしまうかもしれません。先進的都市においては、マスタープランや構造プランがあります。これは異なる不動産に対し、異なるゾーンを設定するものですが、ここにはそういったプランがありません。誰もあなたの目の前に建物を建てることができないように、川の上に不動産を買うべきかもしれません。
――カンボジアの不動産の見通しを教えてください
ウィーブル 私自身がカンボジアの不動産に対し、見通しを持っているため、カンボジアにおいて長期的な取り組みを続けてきました。来年は選挙が予定されているので、市場は少し減速するでしょう。しかし、カンボジアの経済的な基礎を見ると、カンボジアの不動産は長年にわたって成長し続けると予想されます。
成長率と土地価格の上昇に関しては、選挙のために予測するのが難しいですが、プノンペンでは年率約10%、他の地域では10%よりもはるかに高い可能性があります。シアヌークビルでは、一部の地域で土地の価格が1年でおよそ2倍に上昇し、これは100%の増加です。不動産投資にとっては、場所が何より重要であると言われています。そのため、もしあなたが主要な地域に投資している場合は、もし市場で大きなトラブルがあったとしても、需要は常に高いことが予想されており、安全な投資になると考えられます。
1950年代から60年代にかけてあらゆるセクターにおいて、日本がカンボジアに長期間投資してきたことを知っています。日本の初めての投資は、1960年代の日本―カンボジア友好橋ですね。インフラには多くの機会があります。例えば、発電所や、熱費を削減するためのダムをはじめとし、産業と農業の分野、不動産業界全体でも多くの機会があります。
私は、世界的な調査会社であるエコノミスト・インテリジェンス・ユニットによって書かれた報告書を読んでいますが、その報告書によると、プノンペンの毎月の可処分所得は、2030年までにバンコクよりも高くなるとのことです。プノンペンは2030年までにバンコクを抜き、東南アジアの主要都市にまで成長すると予測されています。
――読者に対してコメントをいただけますか
ウィーブル カンボジアで事業を行う場合、それは投資家にとって投資しやすいかもしれませんが、時に困難もあるでしょう。私たちはここに設立して約10年が経ち、すべてうまくいってきたわけではありませんが、最終的には多くの機会を得てきました。会社として、そして私自身もカンボジアに可能性を見出してきたからこそ、長期的に関わってきました。ナイトフランクは今後も、カンボジアを正しい方向へと援助し、不動産市場そして国の発展へと貢献しつづけていきたいと考えています。