カンボジアに進出する日系企業のための
B2Bガイドブック WEB版

STAFF VOICE

(2017/05発刊6号より)

みんなで作り上げた製品に対して強い誇りを持っています
age30
協和製函
ホート・アムセイン
1987年生まれ。高校時代に、熊本県の高校に交換留学したことがきっかけで日本の魅力に惹かれ、その後日本の大学に入学。2012年から協和製函の社員として働き、現在は生産管理マネージャーを務める。
同じく日本企業で働く奥さん、2歳4か月と取材時には生後4日に満たない子供たちに囲まれ、順風満帆な私生活を送っている。

高校時代から日本への留学経験を持つアムセインさん。
様々な化粧箱作りを行う協和製函で活躍するアムセインさんが、どんな想いで働いているのか伺った。

手でものを作り上げるという日本の文化に興味を惹かれ、入社を決めた

 コンポンチャム州で11人兄弟の大家族で育ったアムセインさんが日本との繋がりを持つことになったきっかけは、熊本の高校への交換留学。

 優秀だったアムセインさんは学校から推薦を受け、日本の文部科学省の奨学金プログラムにより熊本県の高校に1年間交換留学をした。

 「留学したお陰で日本のことが大好きになりました。また日本人の勉強に対する熱心さを感じ、私も必ず日本の大学に行きたいと夢を抱くようになりました」。

 その夢を叶えるため、帰国後は様々な日本語教育機関で勉学に励み、見事、2008年に国士舘大学に入学した。

 日本で学んだこと、経験したことを社会に活かしたいという想いで、卒業後は日本企業への就職を希望していた。そんな中、カンボジアに進出する日本企業数社がカンボジア人の人材を募集していた。アムセインさんは現在働く協和製函への入社を決めた理由をこう語る。

 「カンボジアでは箱と言えばカートンのイメージで、本社が生産しているような高級な箱の概念はありませんでした。そして、手でものを作り上げるという日本ならではの文化に興味を惹かれ、この会社に入りたいと感じました」。

カンボジアで日本の品質を作り出す

 入社決定後、大学生活を送りながら本社でインターンシップを受けた。ものづくりの基本から勉強し、図面から箱を作るという一工程のスキルを得たアムセインさん。その後1年間、本社の生産部で働き、翌年にカンボジア工場に異動。現在、入社から4年が経ち、生産管理マネージャーに昇格した。

 生産管理部としての主な仕事は、新規案件の見積もりから作業予定表の組み立て、材料要求納期、出荷までの生産管理にわたる。最初は仕事をこなすのに精一杯だったが、日本人工場長による指導のおかげで成長できたと振り返る。

 その他にもスタッフの仕事管理や商品の品質チェックなども行っており、作業日報も担当。日本人とカンボジア人の双方の考え方や文化を理解しているアムセインさんは、仕事場でカンボジア人と日本人を繋ぐキーパーソンとなっている。

 「お客様は日本国内からなので、当然日本の品質が求められます。少しのキズや欠損だけで不良品扱いになりますが、カンボジア人にはなかなか理解できない部分です。日本人とは感覚が異なるので、私が教えなければなりません。なぜ不良品となってしまうのか、カンボジア人スタッフに理解させるには非常に苦労します。また、日本人スタッフの言葉をそのまま伝えるとカンボジア人の機嫌も悪くなるため、カンボジア人に合わせた言い方に変えて伝えるようにしています」。

 質が高く高級な協和製函の製品を社外のカンボジア人が目にした時、自分たちと同じカンボジア人が作ったものだと思われないのだという。アムセインさんは、みんなで作り上げた製品に対して強い誇りを持っている。

カンボジア人を理解してくれる日本人スタッフに感謝

 
 職場の雰囲気は良いと話すアムセインさん。それは社長を含め日本人スタッフが、カンボジア人の文化や考え方を非常に理解してくれているからだ。カンボジア人も次第に、日本人の考え方を理解するようになってきており、両者の相互理解が会社のチームワークを強めている。

 「日本企業の中には、カンボジア人の考え方を知らない、理解しないという企業があると聞きます。カンボジアでビジネスをする上ではカンボジア人の考え方を理解してほしいです」と語った。

期待以上の成果を出す

 仕事で万が一、客先に不良品が発生した場合には、現場リーダーであるアムセインさんが責任を取らなければならない。かつては、スタッフたちを怒ることもあったが、今では同じ失敗を2度と起こさないようにスタッフみんなで考え、改善しているようだ。責任感を持ってスタッフの管理を行うようになり、リーダーとして少しずつ成長できている。

 また、昨年までいた工場長が務めていた仕事も任されるようになった。任されることで信頼されていると感じ、より責任感を持って仕事に取り組めている。その中で、給料以上、会社からの期待以上の成果を出す必要性を学んだ。

 「私はこの会社を自分自身の会社のように、スタッフを自分の家族のように感じています。仕事は給料のためではなく、心から取り組むものなのだと思うようになりました」。

 仕事をする上で大切にしていることについて、「多くのカンボジア人は給料分の仕事だけすればいいと考えますが、私はそうは思いません。私自身は生産管理担当ですが、総務、物流、材料管理など他分野も理解できればなお良いと思っています。仕事は1人だけでなく、みんなでチームとしてやらなければならない。だからこそ仲間を助けることを大切にしています」と熱く話してくれた。

メイド・イン・カンボジアを強めていきたい

 アムセインさんの夢は経営者になること。

 「当社の商品はカンボジア向けに生産されていませんが、カンボジア人が作っているこの箱を誇りに思うからこそ、より多くのカンボジア人に伝えたい、現在の品質のままカンボジア国内に提供したいと思っています。メイドインカンボジアを強めていきたいです。

 また、カンボジアの若者の中にはタイや韓国など海外に働きに出る人もいますが、カンボジア国内で働いてメイドインカンボジアを強めていくこと、世界に広めていくことが大切だと思っています」。

 今では仕事以外の時間を使いCJCCやマネージメントコースで勉強し、自分の知識を更に高めている。カンボジアの発展とともに、自分自身を高めていくことが必要だと話す。

一緒に働く日本人のコメント
Comment by a Japanese Colleague
社長
堤 哲哉
Tsutsumi Tetsuya
アムセインの場合は日本での暮らしが長かったこともあり、日本語ができるということに加え日本の文化背景を知っている、日本人の行間を読んでくれるという強みがあります。空気で読み取ってくれるので、日本人スタッフとのコミュニケーションに大きく貢献しています。ただ、日本人とカンボジア人との間に立つ立場として苦労も多々あると思います。我々には感じ取ることのできない部分なので、なるべく前面に出してもらうようにしています。また、カンボジア人スタッフを雇用する上での事業の目標や基準設定においても、彼が現場で感じていることを発信してくれることで、見えやすく、考えやすくなっています。無くてはならない存在ですね。今後もリーダーシップを発揮し、主力幹部として益々頑張ってもらいたいと非常に期待しています。

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