カンボジアに進出する日系企業のための
B2Bガイドブック WEB版

PAN Sorasakカンボジア商業相 インタビュー
(2019/6発刊10号より)

パン・ソラサック商業大臣写真

パン・ソラサック商業大臣が語る

商業部門の未来と
日本への期待

農業部門は安定した需要

―――カンボジアの第1次産業について教えてください。

 まずは、カンボジアビジネスパートナーズの雑誌に取り上げて頂き、ありがとうございます。

 カンボジアの人口は約1600万人ですが、そのうち農林水産業の従事者は約500万人を占めており、またGDPに占める割合が30%と、依然として重要な産業です。国土面積の約3割が農用地で占め、そのうち約8割が水田で占めます。主な農産物は、コメ、キャッサバ、とうもろこし、天然ゴム等ですが、これらの作物は商取引の状況がとてもよく、特に中国はコメの主要な輸出国として我々のことを見てくれるだろうと思います。

 この30%という数値は、非常に重要な意味をもっています。仮に我が国の第2次、第3次産業が低迷しても、時間はかかりますが、持ち堪え再度復興することができるのが30%なのです。

 1990年代後半にタイは通貨危機により経済が混乱しましたが、仮にカンボジアで通貨危機のような問題が起きても、農作物の価格は金融市場に大きく左右されないため、やはり持ち堪えます。

免税の効果強し第2次産業強化の鍵は自転車にあり

―――第2次産業について、はいかがでしょうか。

他の産業も同様ですが、発展の一途を遂げています。カンボジアは貧しい国の一つですね。しかし、他の国と協力関係にあることで、発展を続けることができています。EU諸国に輸出する際に、関税がかかりません。これは非常に大きな優位点です。これにより国内企業はどんどんEUに輸出することができますので、年間で衣料品の輸出だけで500万ドルの利益を上げています。

 さらに、我々はEUだけでなく米国に自転車を輸出しています。カンボジアは今、有数の自転車輸出国なんです。カンボジアの自転車輸出に関しては、組立てた製品を輸出するだけでなく、部品を自国で生産し、輸出する業界に移行しています。現在では、EBA(Every thing But Arms)優遇制度により、EU諸国に対し自転車を免税品として輸出できるようになりました。自転車輸出国としてEU最大の輸出国になることは、国内の雇用を増やすことにつながります。

 そこで、メイドインジャパンに大変期待しています。近年、自転車輸出においてほとんどが外資系企業で自転車製造の合弁事業を行なっています。しかし、現段階では、自転車の組み立て工場は多くありますが、部品工場が少ないため、産業の活性化に向けて部品製造から輸出までを現地で一貫して手掛けられるような工場を求めています。ぜひ、日本にその主導権を握ってほしい。日本の求める製品の品質は世界最高クラスです。また、企業文化などもカンボジア人にぜひ浸透させて欲しいです。期待しています。

観光部門の発展無くして第3次産業の発展無し

―――第3次産業について、現状と今後について詳しく教えてください。

 2018年の経済成長率が7.5%、2019年には7.1%と減調傾向が予測されていますが、いずれにせよ現在カンボジアは高度経済成長の真っ只中です。高度経済成長中でありながらも私たちは低位中所得国にいます。より国民に還元できるようにならなければいけません。

 一方、2030年や2050年には高所得国になるという予想もあります。産業構造も着実に第3次産業を中心に変動していますが、その中でも、中国の存在は無視できません。中国企業による不動産開発やインフラ建設、さらには、中国人観光客の増加による観光産業の活況など、経済面での中国の影響力は絶大です。沿岸都市であるシアヌークビルは、中国系企業が大変多く進出していますね。中国元で買い物ができてしまうくらい進出しています。中国企業が進出することは大変歓迎ですが、一方で中国経済の影響をまともに受けかねません。

 米国と中国の国交関係は世界の産業の行く末を担っていると言っても過言ではありません。双方は切っても切れない手綱の関係です。アメリカと中国の経済不振は、カンボジア経済にとって大きな影響を与えることが考えられます。

 また、世界遺産であるアンコールワットを訪問するためにシェムリアップを訪れる観光客は毎年増加しています。さらに、アンコールワットに加えて、プレアヴィヒア寺院、サンボールプレイクック遺跡の2カ所が世界遺産に新たに登録されたことで、観光セクターは順調な成長を遂げています。

 私たちはさらなる観光セクターを必要としています。アンコールワットのような世界遺産以外にも目を向けて消費してもらわなければ、第3次産業は成長しません。必要なことは人々を魅了する観光地の開発です。日本はカンボジアに多くの投資を行っていますが、観光部門への投資は非常に少ないです。ショッピングモールなど旅行者が好む観光商品の開発を行い、観光地の幅を広げることが大切です。

 また、カンボジア国内からオリジナルブランドがもっと発信されてほしいですね。現在、観光地には多くの小売店がありますが、外国ブランドも多く立ち並びます。オールドマーケットに代わるカンボジア発信ブランドを求めています。

 そして、観光部門への投資を続けることは、3つ目の空港の建設を意味します。新たな観光地が増えていくことで、そこへ便利なアクセスを求める外国人が増えるからです。3つ目の空港を建設した際の経済効果は計り知れません。

第4次産業はフィンテックが担うか

―――電子商取引部門について、現状と今後について詳しく教えてください。

 フィンテックは大変成長しています。私たちのポリシーは、ICTや次世代通信規格5Gの開発を含む産業革命4.0に向かっています。将来的に、カンボジアの産業革命は電子商取引の分野を中心に移行すると思います。私たちは多くの外国企業の参入により、Eコマース、Eペイメント、フィンテックの技術が自国にあります。要するに私たちは中国のアリペイやウィチャットペイのような技術を国内に持っているんです。現在は、米ドルでの支払いが中心ですが、いずれはリエルでの支払いに移行していきたいです。また、一方で韓国企業が5Gの開発を急いでいます。5Gの通信サービスが展開されるとカンボジアのIT業界はより強化されるでしょう。Eコマースはより強化され、外に出るのに現金を持たなくてもよくなるかもしれません。

 ところで、私たちは会議や商取引を現在、プノンペンの中心街で行っていますが、人口が過密しています。プノンペンの夕方5時頃を車で走ったことはありますか?あまりの交通渋滞で、移動による時間が大変惜しいです。私は職場まで行き帰りが2時間ですが、この2時間が1時間になると経済効果は計り知れないです。200万人の1時間を経済行動に充てることは、国内経済市場において大変意義があります。

 そこで私が現在、進めているのはサイバースペースの普及です。国内のあらゆる場所を職場にすることです。情報のスピードはとてつもなく早いです。カンボジア中に情報網を張り巡らせ、自宅などを職場にすることで、通勤通学に充てる時間を大幅に短縮し、また、家族との時間を増やすことができます。

 さらに、このサイバースペースの長所は場所を必要としないということです。プノンペン以外の場所でもインターネットさえあれば、起業が可能ですし、海外でも国内ビジネスを行うことができます。大学すら自宅で受講ができるので、地方の教育格差の是正に大きく貢献します。サイバースペースを利用する若い起業家に期待しています。

 プノンペン以外に経済拠点を移すことで、他の街の発展にも影響を与えて、どんどんインフラは整備されていきます。現状では、プノンペン以外で経済活動を行うことは厳しいですが、5Gが開発されることにより急速にサイバースペースが発展すると信じています。

カンボジアの情勢を知り、日本、カンボジア両国の経済を盛り上げてほしい

―――最後に、読者へメッセージをお願いします。

 カンボジアと日本は非常に良好な関係です。日本の投資家を大歓迎します。特に日本企業を中心に、今後の事業拡大を推進したいです。カンボジアには若い労働力が豊富にあります。1600万人のうち、約60%近くが若者に当たります。今後においても、非常に重要な労働力になります。

 私がぜひお願いしたいのが、カンボジアを生産拠点の一部として使って欲しいことです。日本からベトナムやタイに生産品を輸出するとき、多くの関税がかかりますが、カンボジアは両国と免税関係にあるため、カンボジアに生産拠点を置き、その後、ベトナムとタイに輸出してください。

 現在もなお、タイ・プラスワン、ベトナム・プラスワンとして多くの企業が生産拠点を移しに来ています。また、カンボジアは外資100%で進出できますので、大変進出が容易です。為替のリスクもないので、ぜひカンボジアに進出してください。

 例えば、日本の自動車産業はまさにそれをうまく利用しています。彼らはベトナムとタイに多くの生産拠点を有しますが、カンボジアに徐々に拠点を移してきています。今後は他の企業も多く入ってきて欲しいです。本当に日本には感謝しています。ありがとう。


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