2018年2月12日
――カンボジアにおける病気や怪我の特徴について教えてください。
荒木 良守(以下、荒木) カンボジアで多い病気は、気候や風土に特有するもの、生活習慣に特有するものに大別されます。
気候や風土が原因で発生する病気は、デング熱といった感染症、伝染性の疾患、麻疹・風疹、肝炎などが一般的です。伝染病は日本よりも分かりやすい症状が現れます。
生活習慣は日本で成人病として馴染みの深い、糖尿病、高尿酸血症、高血圧が、先進国では無いカンボジアでも多く見られます。日本よりも多いかもしれません。
これらの症状はカンボジアに住むカンボジア人及び日本人に現れる特徴として考えられます。特に、味の濃い食事を好み、頻繁に外食をするカンボジア人は、高尿酸血症、高脂血症、高カリウム血症が非常に多いです。濃度の濃い食事を摂っているためですね。肥満の方も増えており、生活習慣病は今後一層増えていくと思います。日本以上に深刻な問題になり得ます。
――生活習慣に関する知識は、カンボジアでは浸透していないのでしょうか?
荒木 そうですね、カンボジアではそういった知識はなかなか定着していません。
肥満が原因で腰痛、膝痛に悩むカンボジア人も多く当クリニックに訪れます。ですが、おおらかな国民性という観点からみても、カンボジア人は体が健康で動くうち気にしないという考え方を持っている方も多いように思います。
今は若い世代が多いカンボジアですが、今後20~30年後は日本のように高齢化すると考えられます。その為、高齢化社会が進む日本で実施している、変形性膝関節症、腰痛症、骨粗鬆症、脊柱管狭窄症への治療が益々増えていくと思います。
――荒木先生の専門であるアンチエイジングはカンボジアでも発展しているのでしょうか?
荒木 はい、発展しています。特に美白治療に関しては、ニーズが高いですね。東南アジアでは、色白に対して異常に憧れを抱いている女性が多く、費用を費やしてでも通い詰める方が多くいます。その為、レーザー治療、IPLのような光治療の導入は非常に喜ばれると思っています。
一方で、形成外科、耳鼻科、皮膚科、泌尿器科といったマイナーな分野は、カンボジアではスペシャリストが少なく、あまり発展していないのが現状です。
――カンボジアの医療レベルや医療技術、医療制度の現状について、どうお考えですか。
荒木 医療に関する医師の知識は日本の医師と特に変わりはありません。基本的知識は、カンボジアの医師の皆さんも持っています。
しかし、医療機器及び設備は恵まれておらず、実際に患者に運用するという場合になると、不慣れな部分、欠点が見られます。その場合には、当クリニックのような病院、医師が指導に当たり、医療レベルの貢献に寄与出来ればと思っています。
カンボジアでは大学で医療の知識を得ますが、日本のような研修制度は無く、大学病院も付属病院が機能しているわけではありません。そのため大学で学んだ知識、または本やネットから得た知識しか無いため、多くが大学卒業後にタイやシンガポールで研修を受けるようです。
――カンボジアの医療業界の発展のためには、何が必要と考えますか?
荒木 皆保険、公的保険が無いと、医療レベルの発展は望めないと思います。
カンボジアでは民間保険しか無いため、医療施設を利用出来る人が限られてしまいます。国民全体の医療レベルを上げるためには、多くの人が医療機関を利用し、患者側及び医療機関が共にレベルアップしていく事が必要になります。
しかし現状では、政府の財政問題が関連するため、難しいとは思います。日本政府も公的医療保険の手助けに積極的な意思を示しており、そういった取り組みが上手く行けば尚更良いと思っています。
どの国においても、医療業界の発展には、公的保険がキーポイントとなります。
(次回へ続く)