2017年8月19日
――会社紹介をお願いします。
エン・スロン(以下、エン) 名前はスタンダードコンストラクション&エンジニアリング、略称はSCEです。SCEと言えば誰もが分かるんじゃないでしょうか。総合建設業を行っており、橋や道路、浄水場、低高層ビルなどに携わっています。カンボジアの経済成長が始まったくらい、2007年に設立したため、今年で10年ですね。
初めは韓国向けの小さな建設会社として設立しました。当時は韓国と日本からの投資がほとんどでしたからね。我々は韓国企業の元、プノンペンタワーやゴールドタワー、カムコシティなどに携わりました。
今携わっているプロジェクトは、政府関係と民間企業が半々くらいですね。現在も案件数は増えており、ゆくゆくはカンボジアにおいて建設業のリーディングカンパニーになるかと思います。当初の売上げは1億ドルだったのが、今では年間70億ドルを超えています。会社規模でいうと、現在でもカンボジアでトップ10ですが、売上はその中でも1位ですね。
私のことを話すと、会社は3人のシェアホルダーがいますが、私が筆頭株主で70%の株式を持っています。今50歳で、大学はカンボジアで、建築ではなく財務・経営を学びました。しかし、建設には20年以上関わっています。私が若いときは学べる場所がほとんどなく、すべて独学で行う必要がありましたね。当時は他国の経済など全く入ってこない状況で、まるで小さな空の下にいるようでした。先生がいなかったため、英語ですら自分で勉強していました。
――なぜ建設業の会社設立を選んだのですか
エン 当時、国内の開発がスタートしたばかりで、インフラや建物の建設需要が増えると思ったからです。マーケットの規模も大きいと思いました。また、私自身前田建設で働いていた経験があり、スキルを持った日本人を多く知っていました。我々は、日本品質や日本式マネジメント、日本のスタイルを学んでいたため、高いスタンダードで勝負できると思いました。
――SCEの強みを教えて下さい
エン 我々が選ばれる理由は、技術の強み、人材の強み、安定した財政、各機関との強いネットワークが関係しています。特に今は副社長が日本人のため、日本人のお客様との関係性を強めていますね。加えて、香港、台湾、韓国、インドネシアなどなど。現地企業からの投資は少ないため、外国資本および政府関係の仕事が多いです。
――なぜ政府からの仕事を受けられるのですか
エン 政府関係者との強い結びつきがあるからです。今政府とウォーターポンププロジェクトを進めており、規模は50億ドル、かなり大きいですね。政府関係者にとって、プロジェクトを完遂できる熟練技術者を見つけることは容易ではありません。我々の技術面には定評があり、それが選ばれる要因だと思っています。
――カンボジアにおける建設業の展望を教えて下さい
エン カンボジアにとって、海外の投資家抜きでの建設業界の成長は難しいでしょう。地元の人はお金を持っていませんから。そのため政府の政策や指針として、投資家の誘致が必要です。どうすれば投資家の方々がカンボジアに投資をしてくれるのか、これを考えないと建設業界は生き残れないでしょう。
また、我々にはまだ仕事がありますが、さらに小さな会社は仕事が減ると生き残りは難しいでしょうね。現在はカンボジア、そして他国に対しても投資家の動きは静かで、建設業の動きも鈍っています。我々の会社でも、以前は2000人の作業員を抱えていましたが、今は高い技術を持つ人が重用され、それ以外の人々はカンボジアにはチャンスが無いとタイに出稼ぎに行っています。
今後の動きは政治に依存するでしょう。政治が安定していれば、投資家の方々は安心してカンボジアを訪れ、投資をすることができます。しかし、そうでなければ建設業は衰退するでしょうね。
――建設業の問題点を教えて下さい
エン 現在、カンボジアの建設業は投資家からの投資が減少し、ただでさえ縮小しています。そんな中、作業員もタイへ出稼ぎに行くため、熟練技術者を見つけるのは容易ではありません。加えて、仕事が減ることにより建設業も淘汰が始まるでしょう。事実、他社の人員が減っている中、我々の会社のスタッフは増えています。現在は120人ですね。(取材日:2017年2月)
(次回へ続く)