2018年4月5日
――ご自身の自己紹介をお願いいたします
ロス・ウィーブル(以下、ウィーブル) 出身はイギリスで、カンボジアで働き始めて4年になります。イギリスにおいて不動産評価の学位と修士号を獲得し、専門は不動産分野です。2010年から3年間マレーシアで働き、4年前にカンボジアに移ってきました。現在7年間アジアにいることになります。私がここに来た4年のうちに、カンボジアは驚くべき速いペースで発展しました。
私自身は不動産の専門家であり、英国の不動産管理機関である英国王立チャータード・サーベイヤーズのメンバーです。同機関は現在120カ国以上で事業を展開しており、不動産業界のゴールドスタンダードと知られています。私の専門的な資格は不動産鑑定で、ここカンボジアでも多くの鑑定作業を行っています。
――ナイトフランクについて、詳しく教えてください
ウィーブル ナイトフランクは120年以上の歴史を持つイギリスの会社で、本社はロンドンにあります。現在60カ国以上にわたり、500以上の支社を持つ国際的な企業であり、世界中で1万3000人以上の従業員を雇用しています。我々は2008年にカンボジアに進出してきましたが、当時は世界的な金融危機のため、非常に苦労しました。それと比較すると、私が来た3年間は、はるかに優れた業績を収めています。
カンボジアに来る投資家たちにとっては、国際的な基準を遵守するために、我々のような国際的かつ大規模な会社を利用することで、安心していただくことができると思います。我々の国際的なプロフェッショナリズムとリスク管理の経験に関して言えば、私たちは非常に透明性のある企業であり、プロとしての水準と倫理に従います。カンボジアのような市場において、透明性のある企業を探すことは時に困難なことであり、ナイトフランクのような会社を使うことは信頼に足るといえるでしょう。
我々はここで多くの評価報告をしており、当社の報告書は世界中の多くの国々、そして大手銀行によっても認められています。通常、大手銀行や国際的な投資会社は、我々のような国際企業によって行われた評価報告を要求します。つまり、プロフェッショナリズム、そして専門性が私たちの主なメリットといえます。
――カンボジアの不動産業界の現状について教えてください
ウィーブル これは、私が出会う数多くの投資家やディベロッパーたちから頻繁に聞かれる質問です。不動産部門は速いスピードで成長していますが、それぞれの分野によって業績が異なっています。私がカンボジアに来て以来、過去4年間で多くの変化がありました。カンボジアには外国からの投資がたくさんあるのは、タイやベトナムなどの周辺国に比べて、投資家にとって投資しやすい国のひとつだからです。
小売り業界は今や最も流動的な分野の一つであり、我々は新しい小売業者、グローバルブランド、小売形態を市場に見ることができます。具体的には、イオンモール、タイのオペレーター、いくつかの建設中の国際モールなどです。また、オフィス部門では、ホンコンランドは有力なディベロッパーであり、カンボジアにある2棟のグレードAオフィスビルの一つ、「ザ・エクスチェンジ・スクエア」を完成させました。
カンボジアの不動産市場はまだ始まったばかりで非常に新しい市場です。コンドミニアムは2007年、2008年までカンボジアに導入されていませんでしたが、これはこの市場がいかに未成熟であるかを示しています。また、インフラストラクチャーには多くの開発が行われており、インフラが向上するにつれ、産業部門への投資が行われます。日本からの投資の多くは、PPSEZにおける産業部門となっています。また、今まではプノンペンに集中していた投資が、現在はシアヌークビルへと移っているようにも思われます。
ここ3、4年の間、主にアジア地域からの投資が行われてきました。しかし今や、アジア以外の国々から、大きな投資が見られています。これは、カンボジアを投資の目的地として多くの人々が認識しはじめたことを示しており、市場にとって良い兆候です。業界は今、急成長を遂げており、経済を推進する主な分野の1つは、さまざまな分野で多くのプロジェクトの建設が進行中となっています。
――地価が現在上昇している地域とプノンペンで建設需要が増えている地域について教えてください
ウィーブル 最も高価な土地の価格は、依然として市内の中心部です。住宅部門には多くの投資が行われています。駐在員の中で最も人気があるのはボンケンコン1とトンレ・バサックです。土地の価格は過去4〜5年で毎年15〜20%上昇していますが、今では人気になっている新しいエリアがたくさんあります。
都市はどの方向に向かって発展しているのでしょうかという質問も頻繁に聞かれるのですが、都市はあらゆる方向に成長しています。第2のイオンモールを建設しているセン・ソックは急速に発展しています。また、この地域では道路混雑の改善に多くの投資が集中しており、過去3年間で土地価格はほぼ100%上昇しました。
インフラ建設は不動産投資を推進します。チュルイ・チョンバーはシェムリアップ州へと続く国道6号線に沿った地域で、特に第2橋の完成と国道6号線の整備後に価格が上昇し、現在ではでさらなる発展がみられています。また、他の開発地は空港の近くです。日本のディベロッパー、「クリード」やマレーシアのディベロッパー、「ライオン」が手掛ける開発もあり、大規模なショッピングモールが建設されています。ここの地価も同様に上昇しています。
――シアヌークビルを次の開発地だと挙げられていましたが、その理由を教えてください
ウィーブル シェムリアップは観光都市で、アンコールワット遺跡をはじめとした寺院がありますが、そこには経済を動かすものは何もなく、農業や他の産業もありません。一方、シアヌークビルはカンボジアにとって経済的な地域です。そこにはカンボジア唯一の深海港があり、工業地帯があり、また沿岸地域であるため観光地でもあります。インフラが投資を推進していると考えると、人々がシアヌークビルへの投資を始めるのに時間がかかっている理由は、まだアクセスがそれほど容易ではないためです。空港には国際線はありませんでした。高速道路はそれほど優れておらず、プノンペンからですと4~5時間かかります。
最近、2020年までにプノンペンとシハヌークビルの間の新しい高速道路の建設が発表されました。これにより、アクセスにかかる時間の大幅な短縮が予想され、現在、空港も拡張され多くの国際線の直行便が発着しています。こういったすべてが投資をもたらし、サービス業やカジノも豊富です。農業分野でも開発が盛んです。よって、シアヌークビルはシェムリアップに比べて魅力的だと考えられます。なぜなら、観光以上のことが起こっているからです。
――賃貸オフィス部門について、現在の状況について教えてください
ウィーブル プノンペンには4つの国際標準の高層オフィスビルがあります。オフィスの賃貸市場はかなり安定しています。2009年以降、市場に投入されるオフィスユニットの供給は需要に沿ったものとなっており、賃貸価格は安定しているからです。オフィスビルのグレードに応じて、グレードBの建物のうち2つは1ヶ月あたり約20ドル、2つのグレードAのオフィスビルは1ヶ月あたり約30ドルで借りることができます。国際標準のオフィスビルに関しては、供給はかなり少ないです。
以前は、専用のオフィスビルがなかったため、企業はヴィラを使用していました。オフィスビルを見るようになったのは2010年以降です。またここ4年から5年の間に完成すると言われているオフィスビルがかなりあります。ですから、賃貸をしている企業にとっては、家賃の競争力が高まるため、良い兆候であるかもれません。現在、プノンペンの家賃はマレーシアのクアラルンプールとほぼ同じで、バンコクともほぼ変わりません。
(次回に続く)