2018年2月2日
――日本人求職者、求人企業の特徴があれば教えてください。
CDLキャリアコンサルタント(以下、CDL) 現地採用の日本人求職者の特徴として、かつて旅行で訪れた、学生時代にボランティア活動をしていた等、カンボジアという土地に思い入れがありカンボジアでの就職を希望される方も多く見られます。また、アジアで既に働いている方がアジア地域内での転職を考える際、ビザが取りやすいという理由からカンボジア就職を検討される場合が、特にここ最近で多くなっていると感じています。
また日系の求人企業はスタートアップ企業が多いですね。新事業立ち上げや業務拡大に関して日本人を雇いたいという声を多く聞きます。そのため、即戦力となって働ける人材が求められます。大企業の場合は駐在員で事足りるため、大企業、大人数の中で働きたいという要望を持っている方にとっては、希望の就職先を見つけにくい環境であると思います。
そのため、自分で事業を展開・拡大できるひと、マネージャー直下で活発に動ける人、また同時にまだ色が染まっていないバイタリティーに溢れる若い方も企業の求める人物像の特徴として挙げられます。
――カンボジア人求職者の特徴はいかがでしょうか?
CDL カンボジア人求職者の場合、何度か転職を重ねており人材紹介を使って仕事の見つけ方を分かっている方、または現職から給料を挙げたいという方が弊社の利用客として多くみられます。年代でいうと、20代、30代が多いですね。
しかし、カンボジアにおいてHR事業の認知度、定着度は未だに低いと感じています。プノンペンのような中心部では浸透してきていますが、特に地方に関しては皆無と言えるのではないでしょうか。地方は未だに知り合いベース・ファミリービジネスで職に就かれていると思います。
――求職者と求人企業を繋げる際に一番重要視している点は何でしょうか?また、求職者と求人企業の間で生じるカンボジアならではの問題について教えてください。
CDL 日本人求職者の場合、日本での就職経験はありながらもカンボジアに来たことが無いままカンボジア就職を希望される方もいるため、後悔を生まないように情報共有に重きを置いていますね。特に求職者が知りたがっている給料、保険、手当といった情報は細かく共有するようにしています。
また、日系の求人企業の多くはスタートアップ企業であることから、少人数で働くというケースも多いにあります。そのため職場の人との人間関係は、働き続ける上でより重要な要素となり得ます。弊社としてはスカイプ等を通して価値観が合うか合わないか、企業の色を把握しているか等のチェックを行い、入社後の相互のギャップをなるべく少なく出来るように努力しています。
一方、カンボジア人求職者と日系企業の場合、元々の環境や文化が異なるため働き方に対する価値観にズレが生じます。特にカンボジア人は何か不安・不満を感じていても、言わないことが多いです。そのため弊社は就職後も定期的にフォローアップをし些細な理由での退職を食い止めるように就職者が抱える問題や現状を把握し、企業と就職者の仲介としてフォローに入るようにしています。
しかし、カンボジア人が辞めたいと考える理由は、些細なことである場合が多いです。例えば、一時的に数日残業が重なってしまった場合、今後も長期間のオーバータイムを課されると捉えてしまい辞めようと思ってしまうケースも多々あります。その場合、「残業はここ数日だけでその後は通常の労働時間に戻るから大丈夫」というフォローを入れるだけで、大きく変わります。
日本人にとっては聞けば済むことだと思いますが、なかなか聞かない、聞けないのがカンボジア人就職者の特徴です。彼らが抱える不安が積み重なり、気づけば辞めていたという事態に至ってしまう場合が多いです。
――人材紹介会社で働く中で感じる、カンボジアの人材の問題点があれば教えてください。
CDL 全体的に、学習基礎能力が低いように感じます。何か問題があった際も、自分なりに改善策を考えるところまで思考が及びません。何が問題なのかは考えますが、その後の解決手段を考える発想に至らないようです。これはカンボジアの教育や、離職率の高さに伴う経験不足が要因だと考えられます。
――そういったカンボジアが抱える人材問題の解決、人材の向上のためには、どんなことが求められると考えますか?
CDL カンボジアでは企業が求める人物像と、実際にカンボジア人が持つスキルに大きなギャップがあるように感じます。そのため、企業としてカンボジア人が持つスキルを把握して、求人の条件を考え直すことも必要だと思います。
また、日系企業の場合は語学力を先行条件とすることも多いですが、語学が堪能であっても他のスキルが不足していることも多くあります。就職後のことを考え、語学力以外の全体的な能力を図ることも重要になるでしょう。
また、長期間で働くメリットを知らせることも必要です。そのためには大学等でキャリア教育を実施することも求められると思います。しかし、すぐ解決できるものではなく、着実に改善していける問題だと思っています。
――企業が出来る取組みとして、何があるでしょうか?
CDL 根底から言えば、人材の向上には教育が重要になると思います。そのため企業として人材を育てることも求められると思いますが、長く働いてくれるという前提が無ければ、コストも時間もかかるため厳しいのが現状です。
そのため、就職者が気軽に相談できる環境を整えることが必要だと思っています。先ほども述べましたが、カンボジア人は不満や不安を抱えていても、直接経営者には言わない場合が多いです。カンボジア人が離職してしまう理由には、その就職者だけではなくその会社にも問題が少なからずあると感じています。会社が社員にとって魅力的になることも必要だと考えますね。
そのため、いくら見当違いと思われることであっても否定せずに聞き入れる。仕事がし易い環境を整える。そういった部分を改善するだけで、意外に長く働き続けてくれることもあります。
職場の環境づくりが長期間の労働に繋がり、カンボジア人の基礎能力の向上につながると考えます。時期を見て仕事を一任するなど、段階的な取組みが必要です。
(次回へ続く)