2018年1月31日
(前回の続き)
――海外資本の投資により多くのプロジェクト建設が行われる中で、停止または延期しているプロジェクトも見られます。カンボジアで建設事業を行う海外企業が直面している問題や、建設事業を行う上で留意すべき点について教えてください。
ドム 2013年には、地元及び海外資本による多くの建設プロジェクトが停止、延期する事態となりましたが、これは総選挙の影響を受けてのことでした。消費者が抱く不安から、購買意欲は政治が安定するまで低下し続け、製品価格は30%、時には100%上昇する場合もありました。当時、弊社が担うプロジェクトも全体の80%が停止、または遅れるという事態を迎え、一部はプロジェクトそのものがキャンセルとなりました。
当時に比べ現在は、中止・延期される建設プロジェクトは圧倒的に少なくなりましたが、来年2018年に総選挙が実施されます。過去の経験から、弊社が関わるプロジェクトは選挙前の完成を目指しており、来年行われる総選挙に向け準備を整えています。そのため、カンボジアでビジネスを行う、または検討する海外のビジネスマンは、政治的安定性を考慮すべきと考えています。
また建設業界に進出する海外企業は、まずカンボジアに関する知識を身に着け、特に場所とデザインに関して学んでください。カンボジアにおける建設の場所やデザインに対する理解不足が原因で、海外のプロジェクターが失敗に陥っているのを目にしてきました。
更には、ビジネスに関連する環境についても深く知っておくべきです。たとえば、国道4号線に工場を建設する場合、水道、電気、労働者、輸送網に十分アクセスできるのでビジネス環境は完璧ですが、カンボジアではこれらの設備、機能が未整備となっている地域も多くあります。電気が十分に整備されていなければ、自分たちで電力施設、発電機を備える必要があります。水へのアクセスが無ければ水道システムを構築しなければならず、多くの費用を要します。
最後に、スタートアップビジネスを始めるあらゆるビジネスマンに対して呼び掛けたい留意点として、代理店選びは慎重に行ってください。私が出会った日本人投資家の中には、法的書類関係で通常より10倍高い金額を海外企業の代理店に支払った方もいました。
――カンボジアの建設業が発展するために、どういったことが求められると思いますか?
ドム 私は海外からの投資家の誘致、政治の安定、汚職の減少が求められると思っています。カンボジアでは依然として汚職がはびこっており、海外のビジネスマンがカンボジアビジネスを避ける要因となり得ると考えます。
――カンボジアの建設労働者は非熟練労働者が多いということも耳にしますが、御社はスキルの高いカンボジア人スタッフを雇っていますね?
ドム はい、弊社はデザインや建設において非常にスキルの高いスタッフを提供していますが、これは自社でスタッフを訓練しているためだと思っています。我々はスタッフのためにワークショップを行います。また、エンジニアリング労働者に対してはもちろん既に資格のある人々を募集することもありますが、"エンジニアリングセンター"と呼ばれる弊社のトレーニングセンターで訓練を行った人から、弊社に迎え入れる方法も取っています。私含め弊社スタッフが教育しています。
カンボジアでは技術者が足りず、業界に携わるスタッフのスキル育成が求められます。多くの企業ではスタッフが働くことで学びを得ようとしますが、弊社は初めにトレーニングを行います。その結果、我々はクライアントから評価を得ることができているのだと感じています。
カンボジアにおいて企業各社がスタッフに対する訓練を行うことで、海外の技術者と比較することもできるようになると感じています。
――最後に日系企業含め海外企業に対してメッセージをお願いします。
ドム カンボジア進出を検討する海外企業、ビジネスマンは、既にカンボジアで日本企業や海外企業により行われた建設事業を見て学ぶ必要があると思っています。私は日本のクライアントから多くのプロジェクトを一任され、今はその要件を理解し一致することができています。進出企業も、カンボジアの成功例を学ぶべきです。
また、外国人投資家は、カンボジアでどのような商品やサービスが販売されているのか、それらはカンボジア人向けか外国人向けか等、カンボジアのビジネスに関連したあらゆる状況を把握しておくべきです。消費者のニーズ、要求、行動を把握する必要があります。自国とカンボジアの間では相違点も多く、時にはカンボジア人の間でも異なる場合があります。
私自身、日系企業と関わることが多いですが、日本企業の多くは成功を収めようと急ぐあまり、失敗に陥ることがあると感じています。そのため、私は日本企業に対し、急がず、よく勉強するように伝えようと心がけています。それに加え、日本企業はよりフレキシブルになるべきと言いたいです。
カンボジアでは、クライアントが望む製品を手に入れることが難しい場合も多いにあります。日本では入手可能であっても、カンボジアでは異なります。しかし、日本人のクライアントの中には、 "この方法で“、”このようにしなければいけない"と日本の基準や固定観念に基づいていると思う人もいます。デザインにおいても同様です。ビジネス状況の変化に応じて自身も変わる必要があります。
そのため我々はカンボジアについて海外のクライアントに説明し、彼らの要求を聞き、解決策を見つけるため提案を行っています。建設事業を開始する前に、現場を理解する者と話し合わないことは非常に危険です。(取材日:2017年10月)