2018年1月29日
(前回の続き)
――カンボジアの小売産業、ものづくり産業の問題点を教えてください。
温井 和佳奈(以下、温井) 弊社のミッションである「カンボジアを誇りに世界へ」は、アメージングカンボジアに一歩入った瞬間、こんなに素晴らしい商品がつくれるのだと訪れたこの国、カンボジアを誇りに思い、そして世界で活躍していけるカンボジア人や企業が増えることです。その中で難しいなと感じていることは、流通の問題や質を一定にするためのオペレーション技術をはじめ様々ありますが、私が思う一番の問題は、カンボジアの原価の高さです。カンボジアは市場規模が小さいため、カンボジアの外にも市場を広げる必要があると思っています。しかし国際競争力という観点で見ると、このままの原価では、売価の下げようがなく、他国の同じような商品と並んだ時に非常に不利です。なので今、必要なのは、原価を抑えて売価を上げずに、商品を販売できる経営の技術ではないかと思います。
――カンボジアでものづくり企業と取引する際に、重視している点は何でしょうか。
温井 二つあります。一つめは、店舗で食品系のお土産がよく売れていますので衛生管理です。そこで、取引する際には、ファクトリーを必ず自分達で見に行くのですが、最初はとても驚きました。例えば、食品を管理している場所で犬が普通に出入りしていたり(笑)、どんなに遠くても取引前には自分達の目で確認するようにしています。でも、人生という視点で見れば、犬が出入りしている方が豊かな生活かもしれないなど、なかなか考えさせられます。
またある時は、気軽に片道車で8時間かかる場所に「行きます」と回答して、道中、道が舗装されてないのだと気がついた時には、窓を閉めていても細かい砂埃が隙間から車内に入ってきて咳が止まらなくなったり、デコボコ道の揺れで身体中が痛くなり眠れない夜を過ごしたり、改めて日本の当たり前の生活の 便利さとありがたみを認識しつつも、やっぱりカンボジアは面白いと。
そして二つ目は、クオリティ管理を重視しています。途上国でクオリティ管理をお行うのは、想定以上に大変でした。自社商品だけでなく、私たちのお店で扱っている商品は全て一度、スタッフがチェックをしてから店頭に並べています。
ローカル生産者の多くは、生産プロセスを我流で行っている場合が多く、製品化した商品を同じクオリティで生産できるオペレーション構築に苦労しているように思います。
弊社では、良い商品を提供してくださるサプライヤーさんとともに成長できる環境をつくるために、日本人スタッフに対して月に2回、カンボジア人スタッフに対して月に1回トレーニングを行っています。その結果、ビジョンの共有を始め、サプライヤーさんとのやりとり、店舗のオペレーション、収支簿の作成などは、カンボジア人スタッフにある程度、委任することができてきました。トレーニングしてきた結果、まだまだ問題もありますが、みんな今は頼もしくなり、仕事の幅は確実に増えています。
――御社の事業を通して感じる、カンボジアの観光産業の変化があれば教えてください。
温井 カンボジアにおける国別観光客数としては、数年前までは実はベトナム人が最も多く、ラオスも第3位にランクインしていました。カンボジアの観光省は2016年は海外からの観光客は500万人を超えたと発表。中国からの目標観光客数を100万人としていましたが、結果は90万人だったようです。2020年までに700万人、中国人だけで200万人を目指すとのこと。実際に中国人観光客数は伸びていると肌で感じますし、弊社としても中国人市場は意識しています。
プノンペンとシェムリアップの違いは、観光業の中で大きな幅を占めていると感じるのがビジネス視察です。2009年の段階で中国企業がすでに5000社以上進出しているといわれている頃、日本企業の進出は30社にも満たない状況でした。最近は日本企業の視察が大幅に増えてきたと思います。
外人だけでなくカンボジア人の購買力も、確実に上がってきています。3年前と比較すると、カンボジア人の購買単価は20%以上上昇していることから急速に豊かになってきていますが、その分、格差も広がっているような気がします。プノンペンの特徴かもしれませんが、 お土産という業態のお店でも、客さまの数が最も多いのはカンボジア人で、その次に日本人、続いて西洋人、中国人、韓国人は、ほぼ同じ割合となっています。
――御社が取り扱う商品のうち、人気商品を教えてください。
温井 人気商品は、ココナッツオイルバーム、最近発売した弊社のオリジナルクッキーです。ココナッツオイルバームは、パッケージのデザインはコンテストで受賞したカンボジア女性がアンコールワット壁面の柄をモチーフにしたデザインを採用しています。またオリジナルクッキーは保存料や着色料などを使わず、自然の体に良いココナッツオイルや蓮の実などを厳選して作ったので、子供からお年寄りまで安心して味わってもらえます。
(次回へ続く)