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業界別インタビュー

2017年2月17日

建設現場でのカンボジアと日本の違いを間近で見てわかったこと[建設・内装] 谷俊二(2/2)

建築・内装

タニチュウ・アセットメント Tanichu Assetment
CEO: 谷俊二 Tani Shunji
阪神淡路大震災をきっかけに飛び込んでから、建設業界で20年。先日、建設していたコンドミニアム「Jタワー」をボンケンコン地区に完成させたタニチュウ・アセットメントの谷俊二CEOに、建設工程からカンボジア人の仕事にいたるまで、詳しくお話していただいた。谷氏のようにあらゆる場面で相手の立場を想像することが、カンボジアでも日本レベルの快適な住環境を提供できる鍵かもしれない。(取材日/2016年9月)
日本との違いに、工夫の日々

前回の続き
―――建材で困ることはありませんか

谷 俊二(以下、谷) 毎日です。日本の場合、住居の床はフローリングやクッションカーペットが多いですよね。タイル工事はほとんど無いです。僕もかれこれタイルのデザインと工事を20年ぶりにやりました。ですので、どういうデザインが良いとか、サイズすらわからなかったです。ましてや日本でしたら安全のために面が取る(角をとる)処理がされているでしょうけど、こっちでは全く無かったので、そこをどうするのかとか。毎日が工夫の連続でしたね。どう処理すれば良いのかを僕が考えている間、工事が遅れることもありました。日本ではこんな格好悪い仕上げはしないとか、どこまで許容できるのかとか。

 また、欲しい建材が手に入らないこともあります。入手方法を最初はいろいろ考えていたんですが、現地で調達できるもので対応することを基本にしました。逆転の発想でそこが見えてもおかしくないようにするとか、見せ方を工夫することを考えました。いずれにせよ、お客様が裸足になったときに怪我しないように仕上げるというのが、最も大事です。

労働者・入居者への安全配慮

―――働く人達の安全に対する意識とか、使う側で気をつけているところはございますか

 現場の足場は、この3年で急激に進歩していますね。3年前の現場は踏み板と呼ばれる歩く台が無かったんです。パイプの上を歩いていましたから。2000年初頭も中国なんかは高層ビルの足場も竹でしたよね。僕がカンボジアの現場で一番危ないと思ったのは、ヘルメットを被ってない、安全帯も無いということです。なので、うちの現場では絶対にやめようと。どこの現場でも1件2件の落下事故はありますが、うちは1件もありません。ヘルメット、安全帯は絶対義務です。「ヘルメット被ってなかったらぶっ飛ばすぞ」と言って、きちんとやらせています。

 逆に日本のように安全靴まではお金が回らないし、草履で普段生活している人、地面をつかむように歩いている人に靴を履かせたら余計に危ないと思って、安全靴は支給していません。このように、どこまでを許容できるか、取捨選択するかが難しいです。日本基準を全てに適用することはできません。日本のやり方というのは、できる範囲まで入れていくことが大事だと思います。そこがワンステップです。


―――働く人の安全面という点ではかなり気を使われていることはわかりました。では、住まわれる方に対しての安全面はいかがでしょうか

 カンボジアも構造計算は基本的にはありますが、地震の無い国ですから、日本の昭和50年代の鉄筋量しかないですよね。日本のRC工事からいうと、60%の鉄筋量しか入っていません。地震が無いという前提で考えたら、そこを追求する必要はありません。むしろ問題は火災に対しての備えが全然ないということです。消火栓を設置や消化訓練も必要ですが、まず火災が発生した時に一番の気をつけなければならないことは、煙にまかれて亡くなるケースが多いことです。

 しかし、既存の高層の建物は防火ドアが無いため階段が煙突のような状態になってしまいます。日常の階段が非常階段として使えないんです。Jタワーの場合は日本の文化シャッターを採用して玄関ドアを防火ドアで設置しました。火災に対して最大の注意を払っています。もちろん、Jシティに設置しています。この扉を付けるか付けないかの違いは大きいです。はしご車が無いカンボジアでは、逃げるときは階段しか無いですから。

カンボジアならではの住環境の課題

―――快適な住環境をカンボジアで提供する上で、日本と同じようにしようとすると大変でしょうか

 そうですね。シャワーの高さをどのくらいに設置するかは、意外に難しかったです。カンボジアはフランス人が多いですよね。身長が2メートルくらいの人もいます。故障がしやすいので、手元と最上部に蛇口があるシャワーを採用しませんでしたが、欧米人など身長が高い人にとっては不便だったと後で気がつきました。僕らには想像がつきませんでした(笑)。


―――カンボジアは排水が流れにくいなどの問題がありますが、そのあたりいかがでしょう

 僕らの場合、横引きの距離は短くしています。トラップという水のたまりを作る部分がありますが、水でフタをすることで排水の臭いが逆流することを防いでいます。日本の場合はトラップの深さがコップくらいあるのですが、カンボジアですと醤油のたまりくらいしかありません。ですから、すぐ溜まっている水が無くなって排水の匂いが逆流してしまうんです。

 日本の場合、例えばユニットバスでも隙間を作る構造になっていますが、カンボジアはタイル仕上げが多いので、底から50ミリほどしかありません。物理的にトラップはコンクリートの中に収まる大きさしか作れないので、排水のトラップがどうしても小さくなってしまうんでしょうね。建設中のJタワーでは何とか考慮していきたいと思っていますが、カンボジアの建物の構造的な問題なので、今後の課題だと思います。一方で、洗濯トラップに関しては、逆流しないようにしました。


―――換気についてはいかがでしょうか

 換気は大事なのですが、カンボジア人の方はあまり気にされていません。コンドミニアムをカンボジア人が建てても、自分の家がそうなっていないから想像ができないですよね。僕らにとっては40年前の日本に戻って考えれば良いですが、彼らにとっては検討がつかない。キッチンのダクトは天井に埋め込むのに、キッチンの上につけて宇宙船のようになっていました。

 また、コンセントの位置の高さも寝室では中腰の場所に設置するんです。本来なら床から30センチの高さが使いやすいはずですなんですが。冷蔵庫ならコンセントの位置が真裏になってしまい不便です。冷蔵庫設置の場合なら上方につけるべきですが、そもそも冷蔵庫を持っていない人が設置しているのでしょうね。

良い物を作らないとお客様に怒られるのはカンボジアも同じ

―――谷さんが日本で日本人を使って建てること、カンボジアでカンボジア人を使って建てることの共通する部分と違う部分はどういうところでしょうか

 一緒なのは良い物を作らないとお客様に怒られること。当たり前ですね。Jシティはサービスアパートメント、お客様に借りて住んでいただく物件です。違う部分は、やっぱりこっちの子の方が若くて素直です。一方で日本人の労働者はわがままですね。それと次代を担う若い子たちが少ないが私の感想です。


―――ワーカーさんはお金が欲しくて働くわけだと思いますが、「指示がうるさ過ぎる」と仕事を放棄したりしませんか

 あり得ないですね。ムスッとしてクチを利かなくなっても、一日経てば元に戻ります。僕は憎くて言っているのではなく、仕事のクオリティが悪いから、納期を守らないから怒っていることを、本人も分っています。だけど僕らの現場で働けばお金はもらえるから、ここでやっていこうと思い直すのです。(取材日/2016年9月)


タニチュウ・アセットメント Tanichu Assetment
事業内容:不動産開発・仲介
URL: http://www.tanichuassetment.com
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