私達はドイツ系企業ではなくローカル的な企業であると言えるでしょう。もちろん、ある部分では外資企業なのですが、完璧な外資というわけではありません。ロジスティックの事業は、30年という長い年月をかけてやってきましたのでとても得意としていますが、お客様の要求に応じて業態を変えていく必要がありましたので、ロジスティック以外にも、サプライチェーン、貸倉庫、不動産、コンサルティングなども事業として行っています。また、カンボジアからドイツ、若しくは他の国へ貨物を単に運ぶだけでなく、より複雑な業務も行っています。
カンボジアではコンテナやトラック、ローカルの顧客の意識そのものも含め、あらゆるものに関する標準化・規格化が不十分な状態です。これらに起因するトラブルが発生した場合には、お客様にその理由をご理解いただくことは難しいことですので、他国と比較しながらカンボジアの現状をお伝えするようにも務めています。他国では貨物を運ぶために必要な環境が比較的整備されていますので、貨物を運ぶことは自体は難しくありませんが、カンボジアの場合はまだまだそのような状況ではないですね。私達の特長は、ローカルや外資企業に関係なく、全てをお客様の要望にお応え出来る点だと思います。
また、お客様からは、物流、倉庫、関税関連、投資関連のご相談を受けることが多いです。時には工場の設立のお手伝いから操業までをフォローすることもしています。そういう意味では起業からのサポートをさせていただく仕事も多いですね。
1番の違いは二重性の問題、具体的に言うとカムコントロールと関税の問題でしょうか。これらの問題はカンボジア特有のもので他国にはありません。関税は経済財政省が管理している一方で、カムコントロールは商業省が管理しています。このような二重の管理があらゆるものに適用されていることでコストもかさみますし、カンボジアにとってもメリットがないと思います。ヨーロッパやアメリカなどに商品を輸出している工場にとってもデメリットになっています。カンボジアの市場では、近い将来のうちに、税関事務所による輸出関税の一括取扱いを期待する声が高まっています。
もう1つの大きな違いは、ドライポートです。輸出や国内輸送を行っているいくつかの企業がドライポートのライセンスを所有しています。基本的にドライポートには、広大な土地、倉庫、税関機能があります。これはカンボジア特有なものだと思います。他の国であれば、どの土地にも倉庫を建てられますし、そこからの輸出も可能です。しかしカンボジアはこの限りではなく、輸出をするためには2つの手段しかありません。
1つ目は関税手続きを工場で行うこと、二つ目はドライポートで行うことです。だから、ヨーロッパなどで一般的に言われるドライポートとカンボジアのドライポートでは考え方が違いますね。カンボジアにいる多くの人も、この勘違いをしています。カンボジアのドライポートは、輸出に関する一連の業務が可能な場所というような意味しかないのです。これがユニークなのは、5、6社のドライポート管理会社にその独占権があるという点です。つまり、すべての工場は製品を輸出するためには、どこかのドライポートを使うしかないんです。もちろん管理会社いとってはいいですが、競合を育てるという面では良くない点ですよね。これらの二点が他国と比べたカンボジアの大きな違いだと思います。
これまでカンボジアに進出してきた日系企業をいくつか見てきましたが、彼らはカンボジア独自のルールを理解しようとしていないように感じられます。カンボジアを中国と同じようなものだと考えている傾向があります。すべてが中国と同じで、ただ物価が安いというぐらいの認識です。これは完全に間違いです。このような考え方では、失敗して撤退の憂き目を見るでしょう。
けれども、どんな産業やどんな業界でも同様のことをしています。「自分たちは以前成功した。トラブルに対する対処の仕方も知っている」と高をくくってしまうのだと思います。日本人の悪いところですが、頑固で人の話を聞こうとしないんですよね。それで失敗を犯してしまうんです。もちろん、しっかりと話を聞いて、理解し、適切な調査を行って、市場を知った上で参入してくる方たちもいらっしゃいます。そういう方々は成功しますね。
ただ、すべての投資家や起業家はカンボジアが中国とは違うということ、中国と同じようなオペレーションでは立ちいかないということをしっかり理解する必要があります。これが日本の投資家が理解すべき大きな問題だと思います。中国とは違う国、違う精神性、違う文化であることは、この国で長年働いていて実感することです。私はどんな形であれ、特に日本からの投資家であれば歓迎します。日本政府とカンボジア政府は友好な関係を築いていますし、2015年のAEC(ASEAN 経済共同体)実現によって隣国間での物流がより整いますから良い時期だと思います。(取材日/2014年1月)