2016年6月26日
(前回からの続き)
―――紙面とウェブの未来は、今後どうなっていくと思いますか?
ジュリアス・シーマン(以下、シーマン) 人口増加においてカンボジアはまだ揺籃期にあり、すべてのメディアに成長する余地がありますね。中でも物流・郵便サービスは発展中であり、現在田舎へ新聞を届けることは困難ですが、時間が経つにつれて解消するでしょう。その点では遠隔地での新聞部数の増加を意味し、世界的な動向には反しますが、カンボジアでは成長するチャンスがあるかもしれません。
一方デジタルメディアは、急速に拡大したインターネットによって、現在最も確かで高い読者到達率を誇り、同様に読者や広告主にとっては最も重要となります。 2012年5%だった普及率は2015年には既に約35%となり、デジタルやメディアの消費はインターネットの普及に直接反射されます。
postkhmer.comは2012年には毎月30万以下の閲覧者数だったにも関わらず、2015年には毎月150万にまでなりました。我々は、この傾向を今後も期待することができ、インターネットの浸透と相まって、デジタルメディアと組み合わせた成長は続きます。
―――地元の新聞との違いを教えて下さい。なぜプノンペンポストが選ばれるのでしょうか?
シーマン その理由は、商業部門とニュース編集とを厳密に分けているところにありますね。我々のジャーナリストは広告主に怒られてでも記事を書くことがあり、結果彼らに「悪評」を与え、広告収入を失ってしまうこともあります。しかし一方で、ニュース価値がなくても広告主のイベント等を掲載するなども行っていますよ。ニュース編集と商業部門間の利害関係がないことを前提に、弊社ではメディア運営と独立した報道を行っています。
カンボジアには、記者会見で重要な質問をしたり、マイナスなことを書くと、広告契約を打ち切られるなどメディアを尊重しない企業が多いですね。そのためカンボジアの報道機関の大半は、ニュース編集室と商業部門を離しておらず、商業的関心が報道範囲を決定します。
我々はその収入で暮らす必要があるため、もちろんそれは痛いですが、一方で、その評判と信頼性の高さが富裕層および教養を持っている方々を引き付け、当社の収益を助けているんですよ。
―――カンボジアでの報道規制について教えて下さい。
ジュリアス・シーマン(以下、シーマン) 少なくとも通常は、我々のような外国メディアにとっては非常に自由だと思いますよ。印刷する前に政府の承認を得る必要はありませんしね。しかしそれは、規制が存在しないという意味ではありません。Google検索を行うと、1992年以来、政治の汚職や犯罪を報道し、投獄されたり、亡くなった記者のほとんどはカンボジア人です。カンボジアの人達にとって、意見を発表し、真実を報道するのは外国人が行うよりはるかに危険でしょうね。(取材日/2016年4月)